第10話 希望の光の決意は固まる
「ブライン。ブライン。起きなさい。起きれるか? どうなんだ。どうだろう、ふ、不安だな」
誰かに優しく揺すぶられた気がした。
「ハスィ。この子は大丈夫なんだよな」
「はい。長。ブラインは、お嬢とマリン殿と同様に気絶しているだけですよ。確認しましたから」
「そうか。それなら一安心だが・・・」
声がハッキリと聞こえてきたら理解できた。
オレのそばに、長とハスィさんがいてくれているんだ。
体を起こせそうになったので、ゆっくり上体を起こした。
「くっ。いってえ。体中ボロボロか・・・これはそうか。武闘神の反動・・・」
オレのステータスが悪いから、神の力に耐えられなかった分の反動だろう。
彼女の力は、憑依に近い力。
神を地上に降ろして、神の力を味方に授ける。
そのため、授け先の本人に実力が無ければ、大きな反動が生まれるらしいんだ。
ゲーム時代も反動なしで扱うには、最低でもゲーム中盤くらいの実力が無ければいけなかった。
今のオレはまだ序盤だ。
そりゃすげえ反動が来るよな。
「お。起きたか。ブライン・・・にしても武闘神とはなんだ?」
「ええ。長。リスベルは巫女になったようですよ」
「なに!? あ、あの巫女にか」
「ええ。なっちゃってますね」
踊り子になるエルフは、少ないけどいないわけじゃない。
ギランバニアの森のエルフの中にも、同時期に踊り子は三人くらいは存在している。
今はたしか、リスベルの他にもう一人いたはずだ。
しかし、その中で巫女に昇格した人は中々いないとされている。
ギランバニアの森のエルフたちの中では、過去一人だけいたって話だ。
その人は聖なる力を持って邪を払ったらしい。
森唯一のオアシス。ホルエの泉を守り抜いた人だと言われている。
「まさか、その武闘神は・・・あの神の舞で降りて来た神の事か」
「はい。リスベルは神の舞をしたっぽいですよ。オレの力が別物に変わりましたから」
「・・・・何と言う事だ。光を守るために、我らが力を出したという事か」
覚醒の事を言ってるな。
そうか。皆だと覚醒とは言わないのかもしれないな。
「あの、光ってなんですか。リスベルもそんな事を言っていた記憶があるんですけど」
「ん。娘も言っていた?」
「はい」
「ほう。珍しくも覚えていたか」
忘れっぽい子だからね。普段は親の言う事も覚えてないんだな。
「ブライン。君が生まれた時」
「は、はい」
説明に入ってくれたらしい。
急でビックリしてる。
「夜空を照らす光があった。あの星は、他とは一線を画す輝く光だった。あれは、クロノが誕生した時と同じ光だったのだ」
「はぁ。そうなんですか」
そういえば、そんな事を彼女も言っていたな。
「クロノが誕生した時。私の父は言った。あれは、世を照らす明星。暗闇に光を。光に希望を。明星は世に変革をもたらす者の誕生を祝うのだと」
明星・・・。
それって、ミルティアも言っていた事だな。
「だが私は、そんな事は迷信だと思っていた。お前の祖父に出会ってもそれを信じなかったな。だから最初の頃はあまり仲良くしなかったのだが・・・」
あ、そうなんだ。
最初は仲悪かったのか。
「お前の祖父は、エルフの里の窮地を救ってくれた。それはダイナガルトの侵攻作戦から我らを救ってくれたのだ。お前たちが大事にしていたリミットタウンの裏に出るために、奴らは森から進軍を開始したのだ」
それってたしか、夜霧の作戦の事かな?
一昔前のダイナガルトとロア王国の戦い。
膠着状態から、一気に相手を崩すために、ギランバニアの森を突っ切る作戦をダイナガルトが立てた。
リミットタウンがロア王国の守り手として優秀だったから、そこを無視して、裏に出て行く侵攻作戦を展開。
それを英雄クロノと英雄ジャンの二人が食い止めたって話だな。
ちなみにジャンは、ロッティの祖父だ。
「エルフだけでは、敵軍を抑える事は出来ない。だったら従属すべきかとなるが。我らは従う事も出来なかった。我らは両方に干渉しないと昔から決めていたからな。一つに属せなかったのだ」
エルフの立場上、道を明け渡すことも、抵抗する事も、協力する事も出来ないもんな。
苦しい場面だったはずだ。
「それを察してくれたのがクロノだ。当時、我らと彼の交流は軽くあった程度で、顔見知りくらいだったのだが、彼はエルフたちの為にリミットタウンから出撃してくれて、敵の一軍を撃滅した。ダイナガルトとロアの間で戦争を行ってくれたのだ。我らが、この大陸での生存をするためには、それしかなかった。だから我らにとって、その戦争は大きな意味があったのだ。今もこうして不干渉を貫けるのは、クロノのおかげなんだ」
それは、たしかに。エルフにとっては英雄だな。クロノは。
「だから私も信じてみた。世に変革をもたらす明星。希望の光となるのは、明星を持つ者だと」
なるほどな。それでクロノが・・・。
って事はオレもか。
オレもその輝く星が出ていた時に生まれたんだよな?
「そうだ。気付いたか。お前も同じなのだ。我らが生きていけるのはクロノのおかげ。そしてクロノと同じ星を持って生まれたのがお前なのだ。だから我らはお前を大事に思ってる。クロノがしてくれたことを返せる機会はクロノの死で消えた。ダグノスの死でも消えた。しかし、お前は生きている。だから我らはお前に返す。我らとお前との間の友好は、そこにあるのだ」
エルフからの絶対の信頼はそういう事か。
なるほど。明星か。
じゃあ、良い意味で、彼女も明星と呼んだのか?
ミルティアもオレの事を良い意味で・・・よく分からないな。
マリアさんとのつながりもあるだろうし、そこら辺を知っていてもおかしくないけど。
どうなんだ?
「だから、ブライン。我らはもしだ」
「は、はい」
真剣な顔がオレの目の前に来た。近すぎてちょっと怖い。
「リミットタウンに何かあった時には、今度は何があろうとも守る。我らは手伝う」
「え?」
「立場などはどうでもいい。それがたとえロア王国が敵となったとしても。我らは加勢する! ダイナガルトでも同じだ」
・・・・そうか。
だから物語の終盤で、この人たちはどんな時も駆けつけてくれるわけだ。
王位継承。内乱。三国。
どのルートになろうが、ブラインがピンチになれば、この人たちはリミットタウンに来てくれるわけだよ。
それに魔王のルートでも同じだった。
あんなにヤバい物量の襲撃にも、恐れずに来てくれるもんな。
強い信頼関係は、昔からだったって事だ。
クロノ。
あんたがいかに素晴らしい爺さんだったかを、今痛感したわ。
原作だとあんたがさ。話だけになるのって勿体ないだろ。
めっちゃくちゃ主人公じゃん。
「ありがとうございます。長」
「うむ。礼はいらぬ。これは当然なのだ。我らエルフが信頼する領主ブライン・レッドピックよ」
この信頼にオレは応えたい。
必ずこの人たちと共に、リミットタウンの住民と共に、この世界を生き残ってみせる。
この世界に来て、戸惑うばかりだったけど、オレのやる気は爆上がりになった。
絶対に全ルートを踏み潰す。握り潰す。
来い。オレを絶対に殺したい死神の野郎。
オレは全部の困難を乗り越えてやるからな。
お前の思惑には乗らねえぞ。
死の螺旋は必ず回避してやる。
絶対に真エンドにいってみせる!
皆が幸せになるルートが、真エンドなんだろ。
リミットタウンさんよ!!




