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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
まさかの災厄 非業のマシュー戦

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第3話 運で稼ぐ

 「いくらですか。その借金は?」

 「3500万G」


 馬鹿高けえ。どんだけ借金したんだこの人。 

 どうやれば個人でそんな金額になるんだ。

 小さい町なら、一年くらいの運営予算って言ってもいいだろ!?


 「すみません。それってどういった感じの返済なんです。例えば、一気に全額返済とかですか?」

 

 3500万を一気に返済は出来ないんだけど。契約はどうなってんの。

 分割じゃないと無理だぞ。


 「うん。とりあえず500万返せってなったぞ」

 「それもまた厳しいっすね」

 「そうなんだ。だから夜逃げを・・・」

 

 おい逃げんなよ。まず逃げる発想をやめろ。

 つうかどこから借金をしてんだ?


 「あの。その借金ってどこからです」

 「リファング商会」

 「あ・・だから、ガッチャン」


 オレがガラシア君を見ると、彼は頷いた。


 「あれに話しかけられたのって知り合いだったからなんだね」

 「うん。そうなんだ。親父がうだつがあがらない鍛冶師だからさ。事あるごとに馬鹿にしてくるんだよね」

 

 なるほどね。あの成金御曹司って以前からあんな感じだったのか。しつこいな。

 オレを使いつつ、ガルシア君にマウント取りに来たんだな。


 「500万をいつまでです?」

 「五日後」

 「思った以上に早いな」


 ガラシア君が諦めた表情をしていた。


 「ブライン君。もうしょうがないんだよ。おらも一緒に夜逃げすれば」

 

 んな事。絶対にさせるか。

 ガラシア君は超重要人物だぞ。

 今後のパーティー戦の時の切り札みたいな人だ。

 継戦可能になるキーマンだからな。


 「駄目だ。それはさせねえ」

 「え?!」

 「オレが借金をなんとかしよう。そのかわり、ガランドーさん」

 「ん?」

 「うちに来てもらえます?」

 「うち?」

 「リミットタウンの鍛冶師として雇います。まだ何もないけど、必ず工房を立ち上げますので、そこに来てもらえますか」

 「わいを町に呼ぶのか?」

 「ええ。あなたの腕前は尋常じゃない。怪物級の鍛冶師だ。その才能を借金で潰すのは惜しい。オレの町に来てください」

 「良い話だけんども・・・でも借金がな」

 「まかせてください。オレがなんとかしますんで」

 「・・・・ど。どうすっぺ」


 こっちが困惑しているから、今度はガラシア君を見る。


 「ガッチャン。信じてくれ。オレがなんとかする。君を退学になんかさせない。これからも一緒にここに通うんだ」

 「ブライン君・・・おらもそうしたいけど」

 

 ガラシア君も同じ才を持っている可能性があるんだぞ。

 ここで、退学になんかなったら才能なんて開花しない恐れがある。


 「いいんだ。引け目なんて感じなくていい。大丈夫。親父さんにはオレのリミットタウンで、馬車馬みたいに働いてもらうからね。借金分を超えるくらいにさ」

 「う・・・うん。それなら、お願いしようかな」


 これでガラシア君だって引け目を感じないでしょう。

 こっちとしては、本当に働いてもらうつもりだし。


 「よし。じゃあ、ガランドーさんはそのままここにいてください。お金を用意しますんで、逃げないでくださいよ。四日後にここに来てください」

 「・・・わ、わかった」


 この人が逃げたら終わりだ。釘を刺しておく。


 「それじゃあ、ガッチャン。親父さんを引き留めておいてね。それと三日は学校をお休みするって先生に言っておいて」

 「え。お休み?」

 「それじゃあ。頼むよ」

 「え。ま、待ってよ。ブライン君。え、ブライン君待って~」


 オレは寮に急いで走っていった。


 ◇


 部屋に戻って早々。リミットタウンに移動する。


 お屋敷もどきに到着して、バーランドさんがお迎えに来た。


 「あら。若様。どうしてこんなタイミングでお帰りに? 学校はよろしいのですか?」

 「ええ。ちょっとお金が必要になりました」

 「いくらです。お出ししましょうか」

 

 秘蔵の蔵からお金でも出そうかとしてくれたが。

 

 「500万」

 

 高すぎる金額に顎が外れている。


 「がーん! 出せません」


 やっぱり無理ですよね。

 

 「若様。申し訳ありません。お役に立てず、私の不徳の致すところ。そのような大金は・・・今はないのですよ。シクシク」

 「まあ泣かなくてもいいですよ。最初から知ってます。リミットタウンではポンと出せない数値なのはあきらかですから」


 そりゃそうだ。この都市の資産は建物除いて今1012Gだ。

 ・・・・・ヤバいです。

 貧乏まっしぐらだよ。


 「若様。お帰りになられていたのですね」


 マリンさんもお迎えに来てくれた。

 礼儀を欠かさずに、一礼してから近づいてくれる。


 「はい。マリンさん。ここでちょっと協力してくれませんか」

 「何をです?」

 「討伐したいモンスターがいます」 

 「モンスター?」

 「はい。それには、索敵が必要でしてあなたの力が必要です。それと交渉をしにいきたいのでマリンさんには随伴をお願いしたいです」

 「もちろん。それはついていきますが。何を倒す気なのでしょうか? 若様で倒せますか」

 「はい」


 意外とマリンさんって心配性だな。

 

 「それならば、わかりました」

 「よし。それじゃあさっそく移動します。ギランバニアの森に行きます」

 「え? それは、大変危険では?」

 「大丈夫です。エルフたちにはちゃんとお願いをしますので」

 「わかりました。ついていきます」

 

 こうしてオレはギランバニアの森に向かう事となった。


 ◇


 リミットタウンは、大陸南側ロア王国と大陸北側のダイナガルト王国の国境に存在している。

 そしてここより西側に進むとすぐにギランバニアの森がある。巨大な森林地帯で大陸の三分の一を占めている地帯だ。

 そこは、二か国が保有していない。空白地帯である。

 しかし空白と言っても、ここにはエルフらが住んでいるので、森の中は第三国のような形となっている。

 なので、二か国はここに干渉をしない事を決めているのだ。

 広い土地ではあるが、魔獣が住む地域なので、住める場所は意外にも少ない。


 「若様。エルフたちには連絡を入れているのですか」

 「いいえ。でもあそこにいけば、彼女がいますので。大丈夫でしょう」


 人を寄せ付けないエルフたちとの連絡手段は、大樹の中にあるベルを鳴らす事だ。

 エルフと人間はあまり接点がないので、友達になる人は少ない。

 たまにオレの町に来てくれる人や、学校に入学してくれる人がいるが、それでも数が少ない。

 友好的な人は少ないんだ。

 でもブラインは、ここの人たちと友達だ。

 ブラインの祖父が、族長と友人で、古くからの付き合いがある。

 だからブラインは族長の娘と友達だった。


 「来てくれるかな。リスベルだと面倒じゃなくなるからいいな」


 ベルを鳴らした。

 リーン。リーン。リーンと、森でベルの音がこだまする。


 ◇


 「キ――――――――ン! オ―――――――ン!」


 まだ声の主は見えない。

 でも、奥から彼女の声が聞こえてきた。


 「だ~~~~~れ~~~~~~な~~~~の~~~~」


 人間とエルフはそんなに親しくない。

 でも彼女は外の世界に興味があるタイプの人だ。

 物怖じしないで話す元気な子だ。


 「オレだ。ブラインだよ」


 オレが返事をすると。


 「え!? ブラインなの!!! 今行くよぉ~~~~」


 デカい返事が返ってくる。

 とりあえず彼女っぽいから聞いてみた。


 「リスベルだよね」

 「う~~~~~~ん。あたしだよ~~~~~」


 そうらしい。助かった。彼女であれば事は簡単に進みそうだ。


 「ブライン来たよ」

 「うん。久しぶりだ」


 ブライン的にはね。

 オレだと結構見かけてるから、そんなに久しぶりには感じない。


 「町の噂を、皆の噂で聞いたよ。大丈夫なの?」

 「ああ。大丈夫さ」

 「お父さんの話も聞いたよ。大変だったね」

 「まあ。そうだけどね」


 いまいちオレにはその大変さが分からない。

 実際は大変だよ。でもそれは前のブラインと言うか。設定と言うか。

 悲しみはあるけど、ブラインほどじゃないというか。


 「ブライン元気? あたしが遊んであげようか」

 「いらない」

 「お姉さんに任せなさい!」

 「お姉さんじゃないでしょ」

 「こういう時は乗ってよ。雰囲気が大事じゃん。も~~~う」


 リスベルは一個下の女の子。

 外の世界に興味がある子で、実は来年度に学校に入学する可能性がある子なんだ。

 ここで説明しておくと、可能性としているのは、ブラインが彼女の里に訪問する事が入学条件の一つとなっているからだ。

 夏休みに帰省する際に、こちらの森に訪問する事で、彼女が入学するかもしれない。

 それがきっかけで、体感50%の割合で入学するので、可能性と言えるのだ。


 「ねえねえ。何しに来たの? 久しぶりじゃない。あ、マリンさんもいるじゃん」

 「お久しぶりです。リスベル様」

 「うん。おひさ~」


 顔見知りであるマリンさんは一礼した。


 「あのさ。ちょっと森を探索してもいいかい。オレがここを歩く許可が欲しい。族長に話をしたいんだけど」

 「それは別に、ブラインならいいと思うけど・・・なんで?」

 「アルレシオの瞳を取りに来た」

 「え? 無理じゃない」

 「だから君の力も借りに来た。そもそも君に会おうと思ってたんだけど。来てくれたから助かったよ」

 「あたしに会いに来てくれたの! ありがとう」

 「だから」


 抱きつかれたので話が中断となる。

 正直時間がないので、話を先に進めたい。


 「あのね。とりあえず時間がないんだ。三日以内にアルレシオを見つけて、瞳を手に入れないとね」

 「ええ。無理だよ。アルレシオに会うのも難しいのに、その瞳をでしょ。無理無理ぃ」

 「うん」

 「だって、会った事があるエルフだって、瞳までは手に入れられないんだよ」 

 「それでも可能性はここしかないのさ」

 「なんでそんなに見つける気なの」

 「急遽お金が要りようでね」

 「ふ~ん。あれって高いの?」

 「高い。1000万はすると思う」

 「そうなんだ。そんなにするんだ。珍しいからかな」

 「うん」


 アルレシオ。

 出現率が低めのモンスター。

 見た目は、小さな鹿で、体長で言うと、大きめのネズミくらいの大きさだ。

 かなり小さいので見落としがちである。攻撃的な性格のモンスターじゃないから、こちらから攻撃しない限り立ち会えない。基本逃げ回る。


 そのモンスターが倒された際に激レアの確率で落とすのが、アルレシオの瞳。

 確率は0.2%だと、攻略サイトにはあった。

 だからオレの今の運値で出せる20倍の力だったら、理論上は倒したら4%の確率で出るはずなんだ。

 これなら三日で出る可能性は・・・なくはないと思う。

 まあ、確実に取得するとは言い難いけど。それでも、これに賭けるしかない。

 ガラシア君と一緒に学校に通うためにはね。


 「ブライン。闇雲に探し回るの?」


 それは正しい疑問だね。そう闇雲に探したって、あの出現率低めのモンスターは見かけない。

 

 「いいや。ホルエの泉と、界の深緑を行ったり来たりする」

 「ええ。そこはあぶないんじゃ」

 「大丈夫。界の深緑は手前だ。入口付近で折り返していくから、危険じゃない」


 ホルエの泉はここから北西。界の深緑の入り口はここから南西。

 エルフの里がその中間距離だから、行ったり来たりするのに、里を使えるから、便利だ。

 その二か所の出現率がまあまあ高い場所だ。

 たしか、10%まであった気がしたな。攻略サイトではさ。


 「わかった。でもまずは里だよね?」

 「そう。里に行こう。族長に挨拶するよ」

 「おっけ! レッツゴー!」


 こうして、元気一杯の彼女に里まで案内されたのである。

 


 

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