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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
怒涛の十日間

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3/29

第3話 初期値

 壇上から降りるため。

 後ろを振り返ると、慌ててる声が聞こえた。


 「ブライン、お待ちなさい。ちょ、ちょっと、お待ちなさい!」


 オレの返事が想定外だったらしいロッティは、優位だったから余裕をぶっこいていたらしい。

 このお待ちなさいには、『なに私の考えとは違う事をしているのよ。あなたは黙って私の下僕になりなさい』の意味が含まれていると思う。


 原作でセリフ1を選択すると、聖女ルート以外にも下僕ルートに進む可能性もあって、ブラインがロッティの忠実な犬になる事から始まる話もある。

 その場合。ゲーム上でやるべきことが明確になり、目標ラインがわかりやすくなって、町の育成やブラインの成長も簡単になり、今後の方向性も固まっていきやすいので、ここがチュートリアルラインだと言われている。

 他ルートよりも進行が比較的に簡単なのは、彼女が物語を強引に進めてくれるからだ。

 生意気な悪役令嬢をチュートリアルラインに持ってくる開発会社は、やっぱり頭がおかしいのかもしれない。

 変態集団で確定だろうな。

 真エンドだって、発売から一年経っても見つけられないしね。

 


 しかしだ。

 そんな悪役令嬢との付き合いをしても、ブラインって結局死ぬんだから、オレはここのフラグもへし折るしかない。

 死の危険が漂うフラグは、全てへし折って進むんだ。

 他キャラとの好感度?

 関係あるかボケ。

 こちとら生き残るために必死なんじゃい!


 去り際に、一応挨拶をする。人としての礼儀だ。


 「どうも、ありがとうございました!」


 あなたの悪役としてのセリフは散々聞いている。

 聞きすぎて、耳にたこができるくらいだ。

 ここは感謝を述べてお暇をするに限るぜ。

 

 「ま、待ちなさいって。ちょっと、あなた!」


 壇上から降りて、元居た位置にまで歩いていく。

 

 「何を勝手に一人で満足して・・・」


 彼女がまだ怒っているが、正直どうでもいい。

 元の立ち位置にまで戻る。


 ◇


 新入生の位置に戻った後。

 今後やるべきことを考えようとした。でもその前に彼女の確認をしておく。


 ロッティは、学校の先生たちに羽交い絞めにあっていた。先生方も想定とは違う新入生挨拶に怒っていたのだろう。見るに見かねていたけど、大貴族の御令嬢に躊躇していたらしく、オレのあの馬鹿にした態度が引き金になって遠慮がなくなったみたいだ。

 ゲームではこういう細かい描写がないので、面白いっちゃ面白い状況だった。

 忍び寄る死の恐怖のせいで、オレの心にゆとりはないが、少しの間だけでもこの面白さを味わってもいいだろう。



 この状況を一通り楽しんだオレは自分のステータス画面を確認。

 オレがブラインじゃなかったら、この場の皆と同じように、ロッティの姿を心から楽しめたと思うが、それよりもこっちが重要の方がオレにとっては重要だ。

 とにかくだ。オレには時間がない。

 この後で、第一関門が10日後に訪れる。

 学園の試験戦闘だ。

 ゲーム仕様に言い換えると、チュートリアルバトルが込みのイベントバトルで、普通のゲームだと何の事もない話であるのだが、このゲームはここもおかしい。

 チュートリアルだとかほざいている癖に、今後の評価が決まる重要バトルとなっている。

 しかも、激ムズ。

 たしか、ゲーマーで、この戦闘に勝てた人数は、ゲーム購入者の1%にも満たないって聞いた気がした。

 勝てる見込みがないイベントバトルであるのに、ここで勝つと今後に有利になる物がもらえるんだ。

 チュートリアルでしかもイベントバトルって聞いたら、普通は勝ち負けなんて関係ないのに、それなのに、ここにも報酬や仕掛けが色々と用意されているという事は、リミットタウンがいかにユーザー目線にないゲームであることの証明だ。

 現代は、親切が売りのゲームが多いからね。チュートリアルバトルは絶対に勝てる仕組みになっている事が多い。

 もしくはバトルの仕様説明に使うのが基本で、負けてもいい仕様にするのが当たり前だろう。

 なのにこの会社は、基礎だけ説明して、応用は自分で見つけてくれのとんでもない会社なのだ。



 だから、オレは、そこまでに自分の指針を作っておかないといけない。

 このゲームを動かす際、基本この三種類とバランス型からなる行動指針を作らないと、今後のキャラ性能が迷路に迷いこむ事になる。

 タンク。アタッカー。ヒーラー。サポーター。

 魔法型。近距離型。遠距離型。バランス型。

 攻撃重視。防御重視。速度重視。スキル重視。

 これらを選んで進むか。それとも全体バランス型にするのか。

 様々な組み合わせを前もってよく考えておかないといけないんだ。



 ◇


 ゲームの頃と同じステータス画面を覗く。

 

――――――――――――――――――――――


 ブライン・レッドピック。男性15歳。職業なし。


 HP   121

 MP    14

 攻撃力   32

 防御力   21

 魔攻    32

 魔防    27

 速度    34

 精神力   88

 知力    99

 運     66

 スキル 0/10

 成長P  300


――――――――――――――――――――――



 今回のブラインの初期値は、初期値中の初期値だった。

 ゲーム時代だと、ここで多少の変動があるんだが、どうやらこれは普通の才のブラインらしい。

 実は初期値って完全ランダムで、たまに天才型が出てきたりする。

 ちなみに天才だと、数値の100越えが三つ以上あり、初期の成長ポイントも1000越えするんだ。

 それだけのポイントがあれば、割り振りもテキトーに考えて楽なスタートを切れる時もあったりするんだけど、どうやら今回は違うらしい。

 それと、強くてニューゲームもあるが、この場合は違う。

 強くてニューゲームだと成長ポイントに、前回の十分の一のポイントが入る仕様で、MAX値が1200で固定になっているけど、今は300程度で留まっているから、これはリスタートじゃなくて、初回スタートのステータスだ。


 さらにこれは、ジョブ選択もしていないぞ。

 スタートする前には、初期ジョブを選択するのが、このゲームの設定の始まりだから。

 この時点だとすでにジョブがあるはずなんだけど・・・。何もない。

 これは、後から自由に選んでも良いって事でいいんだよな。

 それくらいはおまけしてくれる現実世界って事でいいんだよな。



 ◇ 

 

 ステータスの最小値は1、最大値は1000。

 バトル画面で使用できるスキルの最大値が10個。

 これはパソコンで割り振る数字と同じ数だ。

 ということは、保有できるスキル数は無限だけど、戦闘で使用できる戦闘スキルには限りがある。ここはゲーム時代と同じで確定だ。

 覚えたものを取捨選択して、自分でセットする方式でいいはず。


 さてと、これだとオレはどうやって個人を成長させる?・・・難しいな。このゲームは成長をミスったら詰む。でもそれは画面上の話だ。今回のオレは生身だ。これを上手く利用すれば、多少はやりやすいかもしれない。必要最小限の能力値でスキルを使いこなせば・・・あ!? しまった。


 忘れていた事があった。

 戦闘ステータスとは違うもう一つの個人ステータスの事だ。

 戦闘ステータスは、成長ポイントで割り振っていく形を取るが、個人ステータスは違う。

 個人行動のターンで、行動で成長していく形を取っていて、この項目がコミュや交渉などの色んなものに影響していく。


 五芒星で表現されるのは。

 魅力。学力。度胸。器用。話術。

 この五つの項目だ。

 こちらが10段階評価で査定されるわけだが・・・・。


 魅力  2

 学力  9

 度胸  3

 器用  1

 話術  2


 この時点での初期値は全て1のはずなのに、すでに1以外の箇所がある。

 引き継ぎがない状態のブラインなのに、オレの学力にアドバンテージがあるのって、もしかしたら、オレのやり込みが影響しているのかもしれないぞ。この世界の真エンド以外は見てきたと思うから。

 トップクラスの学力を持っているって事でいいのかな?


 あとそれと悪役令嬢ロッティとの攻防。

 皆の前でやったもんだから、度胸が2も上がったのかな。

 なるほど。

 普通は何かのきっかけで1上昇だから、これは成長ってのは自由に進んでいくのかも知れないな。

 こうなると、戦闘ステータスの方も、成長限界なんてものはないのかもしれない。



 それじゃあ、まずはゲーム時代から考えよう。

 この世界は、1年を400日。

 1週が10日で、ゲーム時はそれを1ターンとしていた。

 なので1年が40ターンで、これを6年続けるので240ターンでゲームは進んでいく。

 前半の120ターンが、学生編。

 後半の120ターンが、開拓していったルートへと進む。

 1ターンの動きは、1日ごとの成長を予定に入れて、進行ボタンを押していくとそれぞれの予定した内容をこなしていく。

 このように、ゲームの基本進行はまとめて行動となっている。

 それでその中身にイベントがあると進行が止まって、その日の行動に画面が切り替わる。

 でも今回は生身だ。

 日々の暮らしを・・・一日一日を大切にして生きていくのがベストだと思う。

 だから無計画は駄目だ。しっかり考えて生きていかないと、死へとまっしぐらだからさ。

 生き延びるには、慎重に考えて、大胆に行動するべきだ。

 今までとは全く違うブラインにならないといけない気がする。

 

 それで、ゲーム時代から考えるとだ。

 この一年間でイベント以外で獲得できる成長ポイントが1500Pなはず。

 オレがゲームをやり込んで獲得できた限界の数値がそれだった。

 もしかしたらそれ以上があるのかもしれないが、オレはそれ以上に到達した事がないので、このポイント数で己を成長させないといけない。

 成長ポイントを1をステータス1に割り振る形で成長させるのが、このゲームの醍醐味であり、難しさだ。


 1500を基礎値に割り当てるか。

 それともスキルに当てるか。


 特化型もいいんだけど、個人でそれだと今後がやりにくくなる。

 それでも特化型はパーティーだったら何とかなる。でもだ。個人戦も重要視しないと、良いアイテムをもらえる武闘大会があったり、試験があったり、ダンジョン攻略があったりと、色んなことがあるから、それにも備えないと効率よく成長する事が出来ないから困る。

 それと成績が悪いと落第もあるし、しかも落第をすれば、リミットタウンの成長に限界が訪れる事になり今度こそ町が壊滅する。

 学校での生活が、町の成長力に繋がるのが、激ムズポイントの一つだ。

 このゲームは難しい点がありすぎて、この部分は簡単なんだよって言える範囲が少ない。コアゲーマーでさえ難しいから、ゲーム初心者ではここで投げ出したい気持ちになるはずだ。

 ああ、さっきからオレって難しいしか言っていないぞ。

 そうだ。あっちのステータスはどうなってるんだ。

 個人じゃなくてリミットタウンの方は・・・。


 ステータス画面をいじって探す。

 画面を動かすのは、視線らしい。

 次へボタンがないから、右に目を向ける。そして念じるとクリックしたのと同じになる。



――――――――――――――――――――――


 リミットタウン。町民31人。資産532G。壁なし。ボロの監視塔あり。


 戦闘力  42

 建物数   5

 幸福度   4/100

 評判値   9

 食料   12

 水    48

 資材    5

 

 従事者

 農業    8 うち魔法従事者2名

 工業    4 うち魔法従事者1名

 職人    2

 大工    2 魔法従事者2名

 商人    1

 医療    0

 生活    2 魔法従事者2名

 

――――――――――――――――――――――



 あ、ありえない・・・。

 ボロボロの数値過ぎる。

 オレ、持ってる金も少ねえし、それに町が残ったのも奇跡の数値だ。

 しかし・・・これは、初期値の中でもかなり悪いぞ。

 特に人数と戦闘力がヤバい。

 オレが経験した中でも、過去一で悪い状態だ。

 戦闘力42。

 この数値だと、ゴブリン5体と互角の状況となってしまう。

 もしこの世界がゲームと同じサイクルであったら、町の防衛が始まるのは、3ターン目だ。

 数字で言うと、30日後になる。


 そして対戦相手も原作通りであってくれれば、町の防衛開幕戦はオーク・ゴブリンの団体戦だ。

 その時までに戦闘力が、最低200はないとまともに戦えない。

 オーク1体で40。

 ゴブリン軍20体で160。

 これを退けるためには、前もってちゃんとした準備をしないといけないんだ。


 町を発展させて、町民を活かしつつ、それで町を守り抜いて、人を守り切る。

 そうしないと、このゲームはゲームオーバー。

 ブラインが死ぬだけじゃなくて、町が死んでも終わりだ。

 このゲームの難しさは、そこにある。

 個人だけじゃなく、集団も強くならねばならない事だ。

 個人戦やパーティー戦があるゲームなのに、その他の仲間管理が重要なゲームって、中々ないよな。 

 町の人々の管理までしなきゃいけないのは本当に珍しいし、そこが本当に難しいよ。

 MMO風味のRPG系のゲームの中に、誰がRTSの要素を想像できる?

 これって、誰が突破できるんだ?

 ジャンルが違い過ぎて、皆が困惑するのは絶対だよな。



 そして、何よりも気をつけないことがある。

 それは、町の中にお墓をたくさん建てちゃいけない事だ。

 ゲーム終盤。襲撃の戦いで死んでいった人たちのお墓がたくさんあると、とある事で厄介になる。

 だから、町の人をなるべくだけど、町の中で死なせずに、襲撃戦をクリアしていかないといけない。

 難易度が激ムズだと言っていたのは、この部分だ。

 町民たちを犠牲にして、死に物狂いで町を守り切る事は誰にでもできる。

 たぶんそこは初心者でも出来る。

 しかし、ゲームを上手くクリアするには、余裕を持って守り切らないといけない。

 それが高すぎるハードルとなっているんだ。

 このゲームのたくさんある難しさの中の一つだ。


 

 「オレは・・・どうすればいいのかな。あ・・・」


 気付いたら、学長の挨拶が終わり、入学式が終わっていた。

 これからが本格的な俺の人生のスタートだ。

 大変な三年が始まりそうだ。

 ってそんな先を心配するよりも、最初の難関へ向けて、頑張らないといけない。

 

 まずは、チュートリアルバトルに向けて頑張ろう!

 一個ずつ頑張ろう。

 生きるために、オレはここで踏ん張らないとな。

 頑張るぞ、おう!


 あ・・・・頑張るしか言ってないや・・・。




 リミットタウンのゲーム画面は基本が三人称です。

 神視点で進みます。

 特に町防衛の時は、引きの画面で全体を見渡した方が、全体のどこの箇所に攻撃が来たのかがわかりやすいです。

 町防衛は、RTSと同様。時間が止まりません。

 タイムして考える時間がありません。そこが難しい部分でもあります。しかし、スキルによって時間を遅くする事が可能です。

 最大で時間進行を10分の1に出来ます。

 1秒の動きを10秒まで伸ばすことが出来ます。

 それが思考加速と思考並列です。この力を得ていると、時間を延ばす事が出来ます。

 次々と変化する戦場に対処していって、そして先回りで行動を起こす事で防衛を繰り返します。

 主に守る事が主体になるのが、町の防衛時です。

 行動アクションは受けの姿勢になります。



 それに対して、ブライン個人の戦闘はMMORPGのような動きで進みます。

 通常攻撃と防御がオートバトルで、スキルがマニュアルです。

 ただ設定で全てをオートにすることも可能となっています。

 この仕様の延長上に団体戦があります。

 ダンジョンなどでは、レイドボスも登場するので、仲間たちと共にスキルやアイテムを駆使して倒していきます。 

 ここでもリアルタイムで動いていきますので、ターン制は採用されていません。

 刻一刻と変化する戦いの中で成長していかないと駄目です。

 どちらかというと、こちらは主に攻撃する事がメインとなります。

 行動アクションは攻めの姿勢になります。



 リミットタウンの一日は、シンプルに進みます。

 リアル時間とのシンクロはないので、そこは安心してください。

 リミットタウンのゲーム時間で、物語は進んでいきます。

 なので進めようと思えば、日数をどんどん進ませることが出来ますし、止まりたいと思えばじっくりその日を満喫できます。


 しかし、今回は現実的に進みます。

 一日一日を大切に生きる。

 それが今回の主人公の使命でもあります。

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