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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
怒涛の十日間

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2/27

第2話 お嬢様の死神

 毎日見ている絵が話しかけてくる違和感ってのは、日常じゃ味わえないもの。

 彼女から良い香りもしてくるから、不思議な感覚になる。

 ゲームじゃ、人の匂いってのは分からないからね。

 うん。だから何だかこの悪態も許してしまいそうになるから困る。

 

 「わたくしのお爺様とあなたのお爺様がした約束なんて、わたくしたちには関係ない。祖父同士の古い縁なんて最初からなかったに等しいのですわ。貧乏で貧しいあなたとの結婚なんてお断りよ」


 悪役令嬢ロッティが新入生代表の挨拶をする前にブラインを登壇させる所から始まるのがリミットタウンの冒頭部分。

 主人公の物語が、悪役からの呼び出し・叱責から始まる。

 そんなのは、よそのゲームでは中々味わえない縁起の悪いスタートだろう。

 

 これから超大作のゲームをするぞ! 

 よっしゃって思った人の心を折る形だ。

 

 こんな始まりじゃ、気合いが入らないよね。

 あそこの会社の人たちって、頭がおかしい人が多いんだろうね。

 頭のネジが数本いかれているのかもしれない。

 もしかして、変態集団なのかも・・・。



 ここで、今のオレが置かれている状況を軽く説明しておこう。

 新入生500名の中で、ブラインだけを呼び出した悪女ロリヴァルド・フィアンナ・エステリーゼ・ルーフォンは、現在愉悦の中にいる。

 通称『ロッティ』

 性格最悪。容姿端麗。馬鹿頭脳。豊満女性。

 悪役令嬢の要素を詰め放題にした人物だ。

 普通にゲームを進めていったら、到底人気が出るとは思えないキャラなんだけど、リミットタウンのやり込みゲーマーたちの間では人気が高い。

 とにかく外見が好ましいようで、あまりにも綺麗な彼女は裏ヒロインという立ち位置を得ている。

 それに立ち絵で売り上げナンバーワンにもなったらしいんだ。

 色々と主人公らに嫌がらせをしてくる子なんだけど、なんだかんだで憎めないんだと、男ゲーマーたちが許してしまうらしい。

 ちなみに俺は推しじゃない。お姉さん系が大好きなんで、ドS系は勘弁してほしい。

 オレはおっとりお姉さんが良いです。

 でも残念ながら、このゲームにはそんな人が存在しない。

 本当に残念だ。

 なんでいないんだ! 素敵お姉さんがいてもいいじゃんか。

 見ていてゆったりできる心持ちにしてくれる女性がいてもいいじゃんか。

 なんでだよ。変態ゲーム会社!!!


 「ブライン、あなたの町・・・違いますわね。町とは言えないくらいに壊滅したのですものね。何もない更地でしたわ。おほほほほ。失礼、わたくし。領土と更地を間違えてしまいましたわ」


 ブラインの実家は弱小貴族で辺境領主。

 入学前に謎の襲撃に遭ってしまって故郷がほぼ壊滅した。

 住民たちの生き残りも少なくて、建物のほとんどが破壊されてしまっている。

 領地には本当に何もない。

 焼野原に近いのがブラインの領土の状況だ。

 この地獄のような環境から、町を立て直す事が、このゲームでブラインが生き残る以外の最大の目的である。

 

 「あんな領地では、あなたは領主と名乗れない」


 そこはオレも同意する。素直に拍手します。

 マジで! マジで何もないの。

 更地となってるからね。

 ゲームだから立て直そうと思うんだけど、実際であれば無理だと感じる。

 それくらいにリミットタウンは何もない。


 「それなのに、偉大で、優雅で、煌びやかな都市を持つわたくしと、つりあうとお思いで?」


 オレは思いませんので、こうして面と向かって会うのをやめてください。

 話しかけないでください。お願いします。

 オレは、死にたくないのでお願いします。

 あなたはブラインにとって死神なんで離れてください。


 「わたくしの財産目当ての結婚なんて、男としてあまりにもみっともない。今後が立ち行かないから婿に来ようとするのは、人として恥ではありませんか。ブライン・レッドピック!」


 神ゲーORクソゲー。

 ゲーマーの間でも好き嫌いがくっきりはっきり分かれているゲーム『リミットタウン』

 主人公『ブライン・レッドピック』

 彼は、ゲーム開始以前から可哀想な人生で、この他にもたくさんの不幸な事が起きている。

 生まれてすぐに母が死亡。五歳の時に兄が流行り病で死亡し、そして襲撃に遭った時に父が死亡。

 世界から呪われてるんじゃないのかってくらいに、ブラインは不幸祭りだ。

 こんなんなら自分も殺してくれと言いたい所を、このブラインは前向きに人生を切り開いていく。

 過酷で悲惨な現状を明るく前を向いて乗り越える。

 そこが魅力の主人公だ。

 家族の全員が死亡しているという嫌な方向性の奇跡に見舞われても、頑張る姿が胸を打つゲーム。

 それがリミットタウンの軸だとオレは思っている。

 だから、何度バッドエンドを見ようとも、彼の本当の幸せを探そうとオレは真エンドを目指していたはずなんだけど。

 その彼にどうしてなっているんだ?

 

 これって転生なのか? 

 さっきの前・・・そうそう登壇する前だよ。

 そこからの記憶があっても、それ以前の記憶がないぞ。

 ん? オレ死んだの? 

 あれ学校に行ってたっけ? 

 オレってゲームをしていたような気もするけど?

 あれ。なんだかブラインの状況が分かっても、オレの状況がよく分からないぞ。

 さっきまで何をしていたんだ?

 


 「わたくし、貧しくて卑しくて、甲斐性のない殿方とは一緒になりたくないの。婚約は破棄よ。破棄!」


 黒のドレス。胸に赤いバラ。荷物などいれるスペースなどない服装なのに、ロッティはどこから取り出して来たんだと思うくらいの馬鹿デカい扇子で自分の顔を半分隠した。


 「ブライン。春が始まったばかりの学生ですが、あなただけはもう冬。おしまいなの。こちらからお金の援助はもうしませんからね。なので学費も払えないのですから、退学した方が身のためでしょう」


 ブラインの祖父は、ロッティの祖父とかなり親しかったらしく、ブラインが生まれる前から援助してくれていたらしい。

 今の彼女のセリフは、その事と繋がっている。


 っとここまでの事を振り返ると、オレ自身もまずい状況である事が分かる。

 彼女がオレに話しかけてくるんだから、ブラインになっている事は明確。そうだとすると、オレの運命は死あるのみ。

 これを回避するには、原作にはないルートを開拓しないといけない。

 

 オレもね。あらゆる方法で真エンドにいこうとしたんだ。でも駄目だった。

 だから、今まで取った事のない手段を使って、この現実を乗り越えないといけない気がするんだよね。

 

 

 ◇


 ここで思い出す。

 彼女の話すターンが終わるとブラインに用意されているセリフは三つあった。

 ユーザーが選択する会話文はこれだ。


 『そ、そんなぁ。待ってくれロッティ』


 情けない男スタートのセリフで、これは聖女ルートの第一段階のフラグ。


 『そうか。わかった』


 現状に納得するセリフで、姫様ルートの第一段階のフラグ。

 

 『いいだろう』


 堂々とする選択肢は、騎士ルートの第一段階のフラグだ。


 ゲームの展開であればだけど、この三つの選択肢からルートが派生していって、更にここからも派生していく形となる。

 分岐ルートがやたらと多いゲームだから、やり込んだオレでも正確なルート数が分からない。

 この選択肢以外にも、行動でも分岐するようだから、ルートは無限にも感じている。

 しかし、どれを選んでも・・・ブラインは死ぬ運命だ。


 ならば!

 ここは!

 自分の考えでいくしかない。

 生き延びる方法はこれだけだ。


 「お言葉、ありがとうございます! お嬢様」

 「へ?」

 「自分がご迷惑をおかけしたようで、大変申し訳ありません」

 「ふえ?!」

 「ですので!」

 「はえ~?」


 相手が満足げな顔をしてたから、ちょっと腹が立っていた。

 ここで相手の裏をかいてやる。

 展開を急展開に持っていくことに決めた。


 「申し訳ありませんがこちらからお願いがあります。お嬢様。どうか、これからも、先程の御意見のように、自分とあなたは赤の他人でお願いします。こちらからは自分の顔を絶対に見せません。なので、そちらからもそのニヤついた顔を絶対に見せないでください。今後ともよろしくお願いします」


 彼女の顔が、明らかに変わる。

 眉間にしわが出来て、顔が歪むくらいに動いた。

 怒りが表情に出ているから、オレの作戦は成功した。


 ロッティも含めて、この場が凍り付く。

 静まり返った会場の中で、下を向いて頭を下げまくっているオレだけがほくそ笑んだ。



 新生ブラインは、新たな選択肢で人生を始めないといけない。

 だって・・・ゲーム通りに動くと死ぬんだからね。

 誰も到達した事のないエンドまで、何が何でも突破してみせる。

 

 リミットタウンのジャンルはごちゃごちゃです。

 個人と集団戦闘が、MMORPG風。

 町運営が、ライフシム系で防衛のためにやりくりをします。

 町防衛が、RTSで町に配属させた人々で戦わせて、主人公も配置できます。

 学園生活が、学生生活体験シミュレーション&人脈開拓ターンとなってます。


 ブラインは、学園生活に失敗しても死。

 町運営や町防衛に失敗しても死。

 戦いに敗れても死


 とありとあらゆるところが死と直結している。

 死にたがり野郎・・・。

 というのは冗談で、綱渡りの人生を歩みます。

 なので、彼になってしまった主人公の塔馬彰彦は、頑張ってそのフラグをへし折り続けます。

 

 どれが正解となるかは今の彼でも分からない。

 でもその分からない中に進まなければ、死のルートを辿ると思い。

 最初の選択から、彼は別の道を選びました。


 ただし、所々ではどれが不正解であるかが分かります。

 彼は重度のリミットタウンのゲーマーですので、攻略の知識がありますからね

 原作知識をフル活用して、工夫して生きていく男の人生を、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しいです。


 それでは、こちらの小説を気に入りましたら登録と評価をお願いします。

 その都度、密かに喜んで、モチベーションを上げて頑張っていきます。


 以上、作者からでした。


 また次のお話で~。

 

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