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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
怒涛の十日間

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第1話 ようこそリミットタウンへ

 リミットタウン。


 言わずと知れた国民的大ヒットゲーム。

 発売前、新作であったのにも関わらず、ゲーマーたちの関心を集め。

 スマッシュヒットを記録し、その後も継続的に売れていく事で大ヒットとなった。


 MMORPG風の個人・集団戦闘に加えて、都市防衛のRTS要素がありつつ、個人のライフシミュレーションの面まであり、様々なジャンルが詰め合わさった。

 天丼牛丼カツ丼てんこ盛りセットの超豪華ゲームだ。

 ゲーム雑誌から一般紙までが話題にした世間を巻き込んだ問題作でもある。

 現評価では否だらけの評価となってしまったが、それでも売れ続けているタイトルだ。


 ゲームをやり込んでいく内に、ユーザーたちから批判の嵐となり、SNSなどで一気に増していった。

 あそこが駄目だ。

 ここが駄目だ。

 新規に立ち上げたIPだから、荒さが目立って、これは売り物にならんと、散々の言われように変わっていった。

 最初はあれだけ褒めていたのに、否が盛んになっていくと、なんでも粗を探されて、とにかく隙あらばどんな事でもけなされていった。


 

 だから、オレは思う。人間って怖いね。負の感情ってのは、どんどん出てくるらしい。

 そんな減点方式のレビューが並ぶと、人は追随して減点していきたくなるんだとね。

 悪口って、重なっていくものなんだ。

 ああ、世の中の嫌な流れって奴だよね。

 やれやれだ。

 その作品を心底好きでいる人だっているんだよ。主にここに!

 ああ、オレの小さな声が、世界に届かないのも、悲しいな。

 ここが良かったんだよ。

 あそこが面白かったんだっていうさ。

 加点評価で、点数を付けられるのであれば、せめて賛否両論の半々くらいの評価を得られただろう。


 でも、それでも半々だと思うんだ。

 このゲームをやり込んでいるオレでも、賞賛ばかりの意見で溢れるとは思わない。

 それくらいこのゲームには、かなりの数の難点がある。

 ゲーム初心者のみならず、上級者であっても、苦戦を強いられる場面が生まれるんだ。

 近年稀に見る異様で異質なゲーム。

 そこが嫌な人は、おそらく最後まで嫌だと思う。


 だけどオレは、このゲームが大好きだった。

 朝昼晩晩晩。

 オレには眠りが必要ない。

 現実世界じゃなくて、もはやリミットタウンに住んでいるんだって言っても過言じゃないくらいに、オレはどっぷりあの世界にいた。

 飯も食わずにぶっ続けてやってたから、いつの間にか栄養失調で倒れて入院までした事がある。

 まあさすがに、その時は親に怒られたけど、人生を変えたゲームと言っていいだろう。

 

 発売当時の意見から、次第に面白くないと移行していった最大の理由。

 オレは、それがゲームシステムやデザインではないと思っている。

 それらよりも、何よりもだ。オレはゲームのエンディングに問題があったんだと思っているんだ。

 主人公ブライン・レッドピックが、どのエンディングに進もうと、必ず死へと誘われる。

 それが、否の最大要因だったと思うんだ。


 マルチエンディングを採用している癖に、全てがバッドエンドで、彼の命が終焉する。

 これじゃあ、みんなが否に傾く気持ちも分かる。

 オレだって、そこに嫌気がさしてたからさ。そこだけ不満だったのさ。

 

 でもそれが覆る大事件が起きた。

 発売から半年が経ったある日。

 公式が声明文を発表した事で、状況は一変。

 これをスマッシュヒットとは呼んではいけない。その後の展開が異常になる。

 超ロングヒットの大ホームランの作品へと変わる事件が起きたんだ。

 第二次リミットタウンブーム。

 これが公式の声明によって起きたのだ。




―――――――――――――


 我が社のリミットタウンをご購入いただいたユーザーの皆様。

 日頃から、リミットタウンを遊んでいただき、誠にありがとうございます。

 現在もゲームを続けてくれている方。

 すでにやめてしまわれた方。

 これからやろうかなと思っている方。

 こんなの手に取る必要がねえ。どうせ駄作なんだろと、現評価を鵜呑みにしてしまっている。

 そこのあなた!

 朗報です。

 皆様に、突然のご報告です。


 エンディングが酷すぎるとのレビューをたくさんいただきましたが。

 皆様は、どのエンディングを拝見しましたか?

 彼のエンディングを全て見ましたか?

 死を迎えるエンドばかりを、見ているのではないでしょうか?

 我が社が調べた統計だと、それだけしか見られていないようなのです。

 どうしたことでしょう。

 残念な事に、皆様のブラインは、死んでいますよ。 

 最後まで生きていませんよね?

 生きられた方はいませんよね? 


 皆様。

 最後に彼が生き延びるエンドを見ていないのに、我が社のゲームのそこだけを執着して批判されても困ります。

 最初から説明書にも、公式のホームページにも書いてある通りにですね。

 リミットタウンは理不尽クソゲー上等の激ムズゲームであると公言しております。

 我々は万人受けを望んでいません。

 我が社のゲームは優しさを画面の外に置いています。

 難しさを古のレトロゲーム並みにしています。

 理不尽さを画面の中に詰め込んでいるのです。


 かつてないスケールのクソゲーをモットーにして、このゲームを開発してまいりましたので、皆様の指摘するクソゲーだという評価は我々への正当な評価であり、最高の褒め言葉。


 ご褒美でございます。


 我々は、たくさんのご褒美を皆様から頂けていますので、今の段階でも十分に満足しておりますが、ここで一つ皆様にサプライズをお知らせします。


 皆様は勘違いしていらっしゃいます。

 あらゆるルートの最後が死だと思っているでしょう。

 それは、事実でもありますが、あれらとは別の真実があります。

 我々が用意したエンドには、一つだけですが。

 とあるエンディングがあるのです。


 それらを踏まえて、ここに宣言します。



 真のゲーマーである諸君。

 発売から数カ月が経った今。

 ゲーマーの君たちが、今まで真のエンディングに辿り着かない事なんてあったでしょうか。

 我々は思いもしませんでしたよ。

 誰か一人くらいは到達してくれるものだろうと信じていましたが、まだらしいのです。

 

 あれ、もしかして、あまりの難度に諦めてしまったのですか。

 我が社の作ったゲームで、心が折れてしまいましたか?

 まあ、それも仕方ない。

 我々が理不尽と難しさを極限にまで突き詰めてしまったようだ。

 我々は・・・そうか。

 出す時代を間違えてしまったらしいです。

 かつてのゲーマーたち。

 ネットのない時代のゲーマーたちがいれば。

 自分たちの攻略法で、このゲームをクリアしてくれたかもしれませんね。

 ええ。ゲームに情熱を出し続ける事が出来た彼らならば、きっと・・・



 そこで、古のゲーマー。今のゲーマー。まだゲーマーではないあなた。

 諸君らに、このゲームにどうしても挑戦したくなるミッションを与えようと思う。


 我先に真エンドに辿り着いた者には。

 我が社から十億円を贈呈しようと思うのだ。


 子供時代から高難易度に立ち向かっていた古のゲーマーたち。

 今から初めてゲームをする新規のゲーマーたちよ。

 我が社のリミットタウンの真エンドに挑戦してみてくれないか。

 我々が隠したエンドを一番先に見た者は、何にも代えがたい充実感と幸福感を得られるだろう。

 名誉、金。

 双方が手に入れられる。

 世界で唯一の人間となるはずだ。

 

 リミットタウン完全制覇。



 皆様の挑戦をお待ちしております。

 以上。

 隠しエンディングを見つけたユーザー様がいない。

 そのおしらせでした。

 

―――――――――――――


 世に言う。

 リミットタウンからの挑戦状。

 このおかげで、ブームが再燃した。


 十億の賞金に目が眩んだ者。

 一番最初に真エンドを見たい者。

 金を。名声を。

 どちらでもいいから、とにかくこのゲームを手に取って、普段ゲームをしない層まで挑戦をしていったらしい。


 しかし、それから更に半年。

 発売から約一年が経っても。

 いまだに攻略できた者がいない。

 果たして、真エンドは本当にあるのか。

 謎に包まれたままだ。

 でも、オレはこのゲームが大好きだったから、飽きずに続けていた。

 一年経ってもゲームが出来る。

 一年で一本をやり続ける。

 一回の映画を何回見ても満足していたようにね。

 色んな趣味に金を掛けなくて安上がりだったのさ。


 しかし、そんなささやかで満足な日々が音を立てて崩れたらしい。

 二次元の世界だったリミットタウンが今。

 モニターで見ていた世界が今。


 おかしなことになっている。

 この一人称視点は、まさか主人公の視点か!?

 全てのルートが死と直結するブライン。

 彼が見ていた世界が今、オレの目に映っている気がするんだ。



 ◇


 新入生挨拶の冒頭。

 彼女から呼び出しを受けているオレは、残念な事に容姿だけは麗しい彼女の前に立っている。


 日本人ではほとんどいないチョモランマのような高い鼻筋に、オレを見つめてくる瞳は摩周湖のように透き通っていて、雲一つない晴天の髪色が艶やかな女性。

 扇子を仰いでこちらを突き放す彼女の言葉は、悪役令嬢の定番台詞だろう。

 でも女性から、この発言を出てくるのは変わってる。

 大体アニメ・ゲームの婚約破棄は王子様からって決まってるもんね。

 女性からの婚約破棄はとても珍しい。


 「わたくし、あなたとの婚約は無かった事にしますわ。ブライン!」

 

 画面越しじゃなくて、目で、耳で、鼻で。

 五感がある状態のオレが、ブライン・レッドピックの物語の冒頭部分を体験していた。 


 ・・・・なんでだ!??


 オレが歩むだろう物語は、最悪だと断言できる。

 なぜなら、オレは彼が送る人生を深く知っているからだ。

 どこにいようと、何をしたって、何を選んだって、彼は究極の限界人生なんだよ。

 オレとブラインが、何度も何度も挑戦しても、全ての人生で敗北してきたんだ。

 必ず死へと進むルートを、オレは歩くつもりもないのに歩いている。

 

 オレは死ぬ運命を・・ここから辿る・・・しか・・・。


 ってさせるか。

 絶対に生き残ってやる。

 彼とは違う運命を導いて、絶対に生き残ってみせる。

 限界を超えて生き残る物語リミットタウン。

 その完全攻略を目指すために、誰も到達した事のない真エンドをオレは目指すんだ!

 

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