第24話 死神たちの饗宴
ロッティのジョブは、幼い頃に決まっている神童タイプ。
周りの人間よりも早くスキル学習が出来ていたので、残念な事に天才児であったのだ。
彼女のジョブは世にも珍しいギャンブラー。
この世には色んなジョブがあるけれど、こちらのギャンブラーに就職している者は少ない。
就職条件も不明で、天運によってなれると噂があるけど、真相は分からない。
主人公ブラインが、こちらのジョブになれる可能性もあるのだが、どうやってなるのかがいまだに解明されず、完全ランダムなのではないかと囁かれている。
ギャンブラーには独自のスキルが並ぶ。
ダイスロールで自身を強化したり、スタッフ強化と呼ばれる無条件で味方を強化する力もあったりする。
手札開示という先読み先手技もあったりするなどなど。
実に面白いスキルが並ぶ中で、ロッティには奥義が存在する。
それが、ルーレットオブセブンだ。
出す目に応じて、能力大幅増強が可能となる。それは、個人や集団を問わないので、非常に強力なスキルだ。
そして、ギャンブラーは、ギャンブルをする人だけを指すわけじゃなくて、ディーラー側も含まれている。
カジノディーラーとして、どのスキルを強化するかなどのイカサマも可能なのだ。
つまり、出す目をイジル事が出来る。割とチート職業である。ブラインがなれるのであれば、それはそれでかなりラッキーで、ゲーム上でも楽をして物語を進める事が出来る。
「来た!」
ロッティのルーレットオブセブンが出した数値が、オレのステータスに加算される。
彼女が第一に出した数値は、運90増強。
あまり増えなかったか。だったら。
「追加いけるか。ロッティ!」
「気力が続く限りですが、やってみますわ」
スキルを連続使用。これもギャンブラーならではのものだ。
しかも、ルーレットオブセブンは、七回までは使用が可能だ。
しかしその時の疲労は一回一回で来る。
「ロッティ。運の倍化はいけるかい?」
「だ、出してみますわ・・・」
オレは彼女にしか見えていない盤面を想像するしかない。
祈るのみしか出来ない。
「ブライン。何倍が宜しいのですの?」
「二倍でいいんだ。たぶんそれなら出せるよね」
「おそらくは」
四倍五倍だったら難しいだろうが、二倍ならイカサマできるはずだ。
「これで十分。七回ルーレットを回さなくても敵を倒せると思うんだ」
「それって運だけで良いのですの?」
「そう! 運だけでいい!」
この時点で、運を超越するには、やっぱりロッティがいないと駄目だ。
「・・・ずいぶんと細かい注文が多いですのね。わたくし、大変ですわよ」
「うん。すまないね。君なら出来ると信じてるよ」
「もう・・・あなたに頼られたら・・・やるしかありませんわね」
ロッティは悪役令嬢の面が強いが。
反転してしまえば、とんでもない優秀な領主となるルートがあるんだ。
そこに賭けたオレは、正解だったみたいだ。
彼女が、全面協力してくれるのであれば、ここは敵よりも有利に事を運べる。
「皆! 頼む。時間をくれ。もう少しだけかかりそうだ」
ロッティがルーレットを回す時間が必要だ。
このスキルの唯一の弱点と言えるだろう。敵が待ってはくれない。さっきの技の反動が消えかけてる。グアバが動き出そうとしているな。
「マリアンナ。全体に小回復だ。チャージヒールを!」
「ブラインさん、なぜその魔法を・・・」
聖女魔法を隠している段階だもんな。
その疑問も当たり前か。でもやってくれ。時間がねえ。
「頼む。魔法は節約して皆の体力を最低限でもいいんだ。少しでもいいから戻して欲しい」
「わかりました。仕掛けます」
チャージヒール。
聖女の魔法の一つ。
ヒールは神官でも可能な回復魔法。HPを回復させるけど、マックスから半分までが限度で回復させることが出来る。
神官のヒールは個人にのみ使用が可能となっている。
だが、チャージヒールは別口だ。
使用MPに応じて、回復量が確定し、最高で満タンまで行き、さらに複数に仕掛ける事が出来る。
マリアンナが、ステッキを取り出して、地面を軽く叩く。
「チャージヒール」
魔法で皆を回復させる。
皆一気にある程度まで回復したようだ。楽に立ち上がり始めた。
「ナオ! 指揮を頼む。四人で数分いけるか?」
「ブラタンって結構無理難題を言うタイプだったのか。注文が厳しい奴だな」
「悪いね」
「ちっ。やるか」
ナオが体勢を立て直している間、技を展開しているロッティが後ろから囁いて来た。
「ブライン。あなた言われてますわよ。我儘だって」
「そうだけどね。君にだけは言われたくないね」
あんたが一番我儘だろうが。
「あら、口が減らない。遠慮のない。嫌な男ですわ」
「これでお互い様でしょ。君こそ口が悪い」
「ふふふ。今のは、まるで昔のあなたのようですわ・・・」
「そうかな」
昔のってたしか・・・。
そんな描写が、ロッティの反転ルートにあった気がしたな。
あれはね。うーんと。そうだ。こういう話だ。
ブラインが子供の頃は、ロッティを大領主の娘と思ってなくて、そこら辺の子として一緒に遊んでいた感覚だったらしく。
それが彼女にとって一番楽しかったって話だった。
気を遣わないで遊んでくれたのが何よりも楽しかったそうだ。
それが、ある時を境にして、大領主の娘としての扱いに変わり、不満が溜まっていったって話をロッティがするんだ。
結局ロッティはさ。ブラインが好きだったって話だよな。反転ルートだと確か・・・。
「敵がもうすぐで動き出すぞ。ノア! 盾で守れるか」
ナオの指示が飛んだ。時間稼ぎの一番のキーマンはノアだ。
「無理だ・・・さっきので盾にヒビが・・・あれじゃ、奴の攻撃を受け止めきれない」
「くそっ。じゃあどうやって。レインも、ミータンも厳しいんだぞ。皆を守れってなったら、盾なしのタンクじゃ厳しいぞ・・・」
魔法攻撃型のレインは、足を止めて戦うタイプ。
ミルティアはバランス型だと言っても、一人で戦うのは厳しい。
盾で守ってもらわないと駄目だ。
「あーしがやるか・・・」
ナオも遠距離型だ。それに敵の攻撃を一撃でも喰らったら駄目だ。
戦闘技術があってもステータスが弱すぎる。
「ナオちゃん」
振り向いたナオは、声の主に驚く。
「ん? ガラタン?」
「盾ある。おら持ってるよ」
「なに。その持ってる奴は使えるのか」
「うん。ノア君に合うかどうかは分からないけど。おら持ってるよ」
「じゃあ頼む。そいつをノアに」
ガラシアがノアのそばに移動した。
アイテムボックスから重厚な盾を取り出す。重さと厚みがかなりある盾だ。ガラシア君が持った瞬間に、盾が地面に落ちて動かない。重すぎて振り回されている。
「こ、これ。ノア君。つ、使えるかな。おらには無理なんだけどね。ほいっと! うわぁ」
地面に突き刺さった盾をノアが握った。まだ持ち上げていないのに、その感触だけでノアは驚いている。
「これは、なんていう盾だ。ライオシールドの上だぞ?!」
マジかよ。
え、騎士団の盾よりも上の盾って・・・。
なんでそんなのをガラシア君が持ってるんだ?
「これ、親父の盾だよ。あんまりうまく作れなかったっておらに押し付けてきた奴」
「だ、駄作なのか。こ、これが!?」
「うん。本当はもっと軽くて丈夫に作りたかったらしいんだ」
ガラシア君の親父ってなに?
化け物鍛冶師なのか。
あれ確か、商売に失敗した人って言ってたよね。
そんなすげえ盾を作ってんのに、なんで失敗してんだよ。
どうやって事業に失敗するんだ?
商売下手過ぎじゃねえか。
「この作品に名称はあるのかい?」
「ないよ。ゴミだから、いらねえって言ってきたからさ。名前なんてない」
名無しの盾がライオシールドよりも上だと。
おいおい。この世界ってわけわかんねえわ。
なんだよ。やり込みまくってたからさ。
オレってこの世界の住人だって自信があったけどさ。全然だったじゃん。
まだまだ知らない事ばっかりだわ。
「そ。そうなのか・・・」
盾を持ち上げたノアは、そのまま盾を操作して構える。
「しっくりくるな。これは良い盾だ」
「来るぞ。ノア。ガラタンは危険だから下がれ」
「う。うん。離れておく」
ナオの指示で、ガラシア君は後ろに下がっていく。
このレベルの戦闘だと足手まといになるのは間違いない。
でもガラシア君が来てくれたおかげで・・・。
「これで受け止める。さあ来い! 魔族」
盾を持っていれば、ノアは無敵。
騎士団長の息子に恥じない実力者ノア・ラインガルド。
盾の操作だけで言えば、既に騎士団でも上位の存在の彼が、ここで真価を発揮した。
先の技の反動で、体を動かせなかったグアバが動き出した。
これだけ人がいても、狙いはオレだけのようだ。皆を無視してこっちに向かってくる。
「ここに来て、あくまでもブライン狙いなのか。僕が受け止める!」
「邪魔をするな。盾小僧」
「フィールドヘイト・ヘイトバインド」
二つのスキルを同時展開。
この場の敵の視線を集中させるフィールドヘイト。
敵対する敵の視線を固定するヘイトバインド。
やはりノアは防御型タンクとして有能過ぎる。
でも、この時点ですでにあの二つを取得していたのか。
全然知らなかった。
「ぐっ。重い一撃だが、受け止めきったぞ。今度は完璧だ!」
さっきまでは盾でダメージを完璧に遮断できていなかったらしい。
多少のダメージを背負いながら、オレたちを守ってくれていたんだ。
ノア。君って奴はなんて良い奴なんだ。
泣き言一つ、愚痴も言わずに、守ってくれていたのかよ。
「なに。私の攻撃を完璧に・・・人間如きが受け止めるだと?」
「装備が良ければ、これくらい容易い事だ」
ただし防御はである。今のノアじゃ、攻撃に決め手がない。無理だ。
敵にダメージを与えるほどのスキルや攻撃力を持っていないんだ。
だから・・・。
「視野が狭いようね。グアバ」
「ん!? な、ダークエルフ!」
ミルティアが敵の背後に入った。忍び寄る形で、レイピアを突き刺す。
「くっ。思った以上に鋭い振りだ。だが、その程度では、私は倒せんぞ」
「倒す必要はないわ」
「なに?!」
反応よく回避されても、ミルティアは余裕だった。空振りに終わるレイピアにも不満はない。
「ナオ! レイン! 今よ」
二人はすでに連携をしていた。
「必中!」「パルデ!」
ナオの必中で、レインの魔法を確実に当てる。
彼女が出した水魔法は、沼。
パルデは、ドロドロの水沼を作り出し、敵をそこに落とし込む魔法。
グアバの足元が水沼になり、動きを封じた。
「ぐっ。小癪な。しかし、この程度で私を倒せると思うか。人間は考えが甘いぞ・・・ん!?」
戦闘していた全員が引いた。
ここで畳みかけられると思っていたグアバは、周りに誰もいなくなったことに戸惑う。
「ありがとう皆! 準備は整った。ロッティ、君もありがとう」
「あなたのせいで疲れましたわ」
「ごめんよ。でも助かったよ」
「勝ってくれたらチャラにします。ですから、勝ちなさいよブライン」
そっぽ向いた彼女も一応は応援してくれているらしい。
一昔前のツンデレみたいに見える。
「よし。ここからだ。マリアンナ!」
「はい」
「リンクを頼む。マナリンクだ。出来るかい?」
「え、それも知ってるのですか!?」
「頼む。君の力を少し借りる!」
「わかりました。お任せします」
聖女の力『マナリンク』
人々の思いを繋ぐ聖女は、仲間と力をシェアする事が出来る。
MP。魔力。
これらを並列につなぐことが出来て、対象者同士で同じ力を扱う事が可能となる。
まだ弱小戦士タイプのオレだから、MPや魔力がゴミだ。だから、彼女の力を完全に借りる形を取るんだ。
現時点でのマリアンナのMPの正確な数値は分からないけど、最低でも300はあるはずだ。魔力もそのくらいであると思う。
リンクが始まれば分かるはず。
来い。マナリンク。
「発動させます。行きます。ブラインさん」
「了解」
コン・・・コン・・・コン・・・。
っと、ステッキで地面を三回叩く。
自身の魔力の在処を。その魔力の行く先を。そして魔力を共有する人を思う。
三回の行動の意味だ。
「秘法『マナリンク』」
リンク完了で、彼女のステータスが入ってくる。
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マリアンナ・クバン・アクア 女性15歳。職業聖女見習い。
HP 99
MP 351
攻撃力 66
防御力 55
魔攻 333
魔防 376
速度 94
精神力 241
知力 244
運 52
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予想通りの300越え。
これならいけるぞ。
「解放! 龍麒三倍!」
オレの龍麒のMP消費量は一分で7だ。まだ完全な効率化が出来ていない。これに三倍を使用したので、単純計算で一分で21のMPが必要になってる。
そして、リンクしてくれた彼女は、回復とここに入ってくるのに、結構MPを使ってると思うから、オレがこの状態で稼働できる時間は十分もないな。
「でも発動状態が十分もあれば十分だ。グアバ、オレはあんたを倒すぞ」
ここまでおぜん立てしてもらったからには、必ず倒す。
死神だと思っていた仲間たち全員が、オレを助けてくれたんだ。
ここで倒さなかったら、オレはこの先を生きてちゃいけない。
未来を掴んじゃいけないのさ。
いくぜ。この世界で生き残る最初の試練を突破してみせよう。
ブライン。
オレと共に、この死の世界を駆け抜けるんだ。
生きていこうぜ。一緒に!




