↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
怒涛の十日間

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/36

第15話 リミットタウンルート

 オレが見つけた事のあるルートは、計17。

 大まかなエンディング分岐はこの数だ。細かくするとオレでも分からない。

 予想だけど、開発者たちが用意した数は、これの最低でも三倍くらいはあるのかもしれない。

 超大作に相応しいゲームのエンディング数だ。

 でも、その全てがブラインの死に直結する。

 鬼畜なゲーム会社が作っている。割とそれがヤバめだったりする。



 姫様ルート。


 1 国家大戦略ルート

 騎士団と貴族連合の戦いに介入。

 王家として戦い。どちらかを味方につけて無益な戦いを終わらせる。

 兄が一度破れるために、レインの王位を盤石にするルートでもある。


 2 王位継承戦争ルート(姫様側)

 姫様と兄君の一騎打ち。

 皇太子を巡る熾烈な戦い。

 勝ち切れば、姫が王となる。


 3 王位確定ルート

 姫様とブラインが結婚。

 ブラインが王となるルートだ。

 特殊な道のりなので、上二つよりも難しい。



 悪役令嬢ルート。

 

 4 下僕ルート

 ブラインがロッティの下僕となる。

 リミットタウンも従属関係となり、あらゆる分野で強制される。

 ここがチュートリアルラインになる。

 最初、何も考えずにゲームをしていると、このルートを辿る事になって、案外安定してクリアまでいける。

 しかし、もちろん死ぬので後味は悪い。


 5 反転ルート

 ロッティがブラインにぞっこんになるルート。

 大貴族のルーフォン家を乗っ取る形になる。

 実は、エンディングの中で一二を争うくらいに平和なルートとなっている。

 彼女の思いが反転すると、実は愛が重たい人である。

 このルートは彼女がルーフォン家であることの証明だ。


 6 ロア王国内乱ルート(貴族連合)

 ロッティが貴族たちの盟主となり、騎士団と決戦。

 ブラインはこちら側に参戦する。

 彼女の右腕として信頼を勝ち得るルートだ。


 

 騎士ルート


 7 ロア王国内乱ルート(騎士団側)

 通称『友情ルート』と呼ばれている。

 ノアと共闘して、最前線から補給拠点まで、重要な戦に参加する。

 もちろんロッティとは敵対関係となるルートだ。

 

 8 王位継承戦争ルート(王子側)

 王子側に参戦。

 なので当然レインとは敵対関係になる。


 9 国家防衛ルート

 ダイナガルト王国・ミルス帝国からロア王国を防衛する。

 ここが、ロア王国の中での一番の激戦となる。

 戦闘が他ルートよりも厳しめだ。

 


 聖女ルート


 10 聖女脱走ルート

 マリアンナとブラインが恋仲になり、聖女のお役目を捨てるルート。

 これも個人だと平和ルートだけど、世界の滅亡の始まりとなるので、世界で見ると残念な事にバッドエンド。

 

 11 聖女支援ルート

 マリアンナが教皇戦に参戦。

 聖女としての力を磨き、選挙を勝ち抜く。

 そのための支援をする。


 12 三国調停ルート

 ロア・ダイナガルト・ミルス。

 三か国の停戦に向けて動きだすルート。

 交渉がメインになる珍しい形の進行だ。


 

 貴公子ルート(ミルス帝国王子)

 

 13 裏切りのルート

 王子が全ての継承権を持つ者たちをなぎはらい、父の王位を奪いに行くルート。

 ミルス帝国で下克上を目指す。


 14 二か国同時攻略ルート

 ダイナガルト・ロア。双方の国を倒しに行くルート。

 その足掛かりのためにリミットタウンが拠点となる。



 侍ルート


 15 忍び侍連合ルート。

 魔物被害が増大した和大陸は、和大陸の東『外大陸』から来る魔物の被害に困惑していた。

 彼らは、西へ逃げ延びる選択を取ろうとはせずに、最後の一兵になろうとも戦うことを決めた。

 しかし単独では抵抗が出来ない。そこで他大陸に救援要請。

 彼らの手を取ったのが、ブラインだけとなり、リミットタウンが応援に出るルートだ。

 他国が手を取らなかったのは、戦争をしていたからだ。

 世界の危機よりも戦争。

 それでは世界は救われない。

 だから正義感の塊のブラインだけが駆け付けた。

 

 

 獣王国ルート


 16 対外戦争ルート

 獣大陸に、ダイナガルト王国が侵略を開始したため。

 挟み込む意味合いで、リミットタウンが参戦。

 ブラインも彼らの為に戦う。

 理由は、獣王国の人々と仲良くなったから参戦している。



 魔王ルート


 17 魔王襲来ルート

 度重なる魔物被害は魔族の力のせいだった。

 外大陸から出てきた魔族たちの侵攻が始まる。

 彼らの襲撃のせいで、四大陸の内の三大陸が壊滅。

 ブラインがいるリアリディ大陸だけが残り、人類が自分たちの存亡をかけて決戦をする。

 ここが最終決戦だと思われる。



 以上が、オレが見てきたルート。

 これらから分かるように、魔王が現れるルートは、最終局面のはずだ・・・。

 なのに。どうして。ここで?



 ◇


 「ん・・・人間の貴様が。なぜ私の名を知っている・・・」


 しまった。魔王の顔を見てしまったから、ついつい名前を言ってしまった。


 「魔王? 青年。これが魔王なのかお?」


 オレの言っている事。あんたは疑わないのね。

 素直過ぎるでしょ。

 良い人なのか。馬鹿なのか。

 まあ、信じてくれるならどっちでもいいや。


 「そ、そんな気がしただけです。夢で見たんで」

 

 言い訳発動。物語上おかしくなっちゃうから、ここは騙すに限る。でも苦しい言い訳だ。


 「夢?」

 「予知夢みたいなものです」

 「ほう・・・予知夢かお。珍しいんだお」


 シャオリン、あんた妙に納得してるけどさ。

 オレにそんな力あるかよ。

 でも、リミットタウンの大体の結末を知っている分さ。

 予知夢みたいなものだよね。

 この時点だったら、未来視みたいなものだよね。

 あながち嘘じゃない。オレ嘘ついてないよな!


 「予知夢か。それで私の名を」


 何で魔王も、今の言い訳で納得してんだ?

 あれ? この人、三大陸を跡形もなく破壊する絶対王だぞ。

 残忍で非道な王なんだ。

 え、もしかして良い奴なのか?

 いやいや、人類の半分以上が消滅した戦いをする奴だって。

 ありえない。


 「魔王か・・・なら加減して戦っては駄目。久々に全力を出すか」


 シャオリンが構えを解いた。両の拳を強く握って作って、体の前で腕をクロスさせる。


 「ん? 今ので全力じゃなかったと言いたいのか。小娘」

 

 魔王が聞いた。


 「さっきまでのは、龍麒の初期。ここから段階を上げるんだお」


 シャオリンが押忍っと拳を下に下げる。


 「魔族と戦うために生まれたのが、黄龍麒麟拳。魔王! わっちが魔族じゃないからって・・・人間を舐めるんじゃない! 人間の底力見せるんだお」


 え? それ初耳だぞ。

 魔族と戦うために生まれた拳法だったの?


 「はああああああ」


 龍麒の力は段階がある。

 魔力ステータスに応じて、倍増する仕組みだ。

 ゲームと同じであれば、彼女の魔力ステータスは500越えだったはず。

 だから・・・。


 「龍麒五倍」


 今ので、魔力以外のステータスに五倍のバフが掛る。

 攻撃力も防御力も、何もかもが五倍だ。

 この倍化されてステータスの上限に達したとしてもこれは上限突破の性能も持っているので、最強。

 ユーザーにあんまり知られていないけど、チート級の技だろうね。


 全身を覆う闘気の輝きが増していく。

 龍麒の五倍の力は、輝きも五倍にさせるようだ。

 思わずこっちが目を瞑りたくなるくらいに、太陽のように輝いている。

 

 「いくぞ」


 今度は完全に目で追えない。彼女の姿が消えて、魔王の姿も消えた。音だけが、ここで鳴り続ける。激しい音は、衝突音。これがずっと止まないので、相当数の手数でぶつかり続けているらしい。

 だけどこの速さに魔王も対応しているようだ。


 「これは・・・人間の領域を超えた戦闘力だな」


 魔王の声が聞こえた。いまだに見えない。


 「くっ。これで倒しきれない?」


 戸惑う声をしている彼女は、どうやらこれで決着を着ける自信があったらしい。

 さすがに奥の手に近い技だからな。気持ちが分からない訳でもない。これで倒せなかったらどうしようという不安もありそうだ。


 「私も同じだ。お互い、このままでは無駄に疲労するだけだな」


 ん? この言い方だと、実力が互角らしいぞ。

 思った以上に魔王が弱いのか。 

 いや違うな。ありえねえ。

 この魔王は、最終強化したブラインが命を賭すことで倒せるレベルの作中最強の男だぞ。

 それが、シャオリンと同じ実力って変だ。

 

 「わっちが勝つ」

 「しょうがない。これ以上は危険だが・・・」

 「なに? 加速した」


 目にも止まらぬ速さの中で、二人のやりとりが聞こえるだけ。

 声だけだと、シャオリンの方が負けているようだ。


 「ぐっ。強い」

 「それはこちらも同じだ。人間やるな。まだ戦えるか」


 この会話の直後に二人が姿を現した。二人とも最初の位置に戻っていて、魔王が正面。オレのそばにシャオリンだ。若干だが、シャオリンの方に手傷が多い。それに息が整っていない。


 「ほ、本物・・わっちがここまで撃ち込んだのに、攻撃が当たらないのは、爺様じじさま以来なんだお・・・」


 爺様。

 彼女の祖父マオリン・ジンセの事だな。すっかり忘れてた。彼女がずぼらな性格だから、爺様なんて可愛らしい呼び方をするとは思い出せなかったわ。


 「魔王様。お時間が・・・」


 側近の一人が魔王に近づく。

 

 「もうこんな時間か。余計な事に時間が割かれてしまったか・・・」


 何か用事があったのか?

 そんな口ぶりだ。


 「ロズヴェル! 引くぞ。皆を起こして、外界に戻る」

 「はっ」

 

 最後に魔王はオレの方を見た。


 「ブライン・レッドピック。貴様・・・悪運だけは強いな。相変わらずだ」

 「ん? なぜ・・・」


 なぜオレの名を?

 オレって、今ここで名乗ってないよな。シャオリンにだって名乗っていないんだよ。

 彼女はオレの事を青年って呼んでいるんだから、オレは名前を言ってないんだ。

 そ、それじゃあ。


 「おい。魔王。まさか、あんた。自分の事を前から知ってるのか?」

 

 オレの言葉の途中で、魔王の肉体が消えかける。転移が始まっていた。


 「世の理を超えしもの・・・明星あかぼしよ。必ずやまた・・・」

 

 ん? 明星?

 何の事を言って・・・。


 「消えた。くそ。オレについて何か知ってんのか」


 魔王が、この時点でブラインについて知っている?

 おかしい。

 原作とは全然違う流れだ。どういう事だ。

 オレが、初手から別の動きをしたから、まるっきり流れを変えてしまったのか。

 いやいやいや、そもそもだ。魔族にも名が通ってるってなると。

 すでに魔王襲撃ルートに入ってるのか? 

 おい。フラグを踏んでつもりがないのに、勝手にそっちからルートって来るものなのか?

 おいおいおい。まさか。

 あの難関ルートに入ってるって言ってんのかよ。

 リミットタウンさんよ!

 魔王ってのは、ブラインを最強に育てても、相打ちがやっとの相手なんだぞ。

 どうやって生き残れって言うんだよ。開発者のド変態野郎さんたちよ!!!


 「ブラインというのか・・・青年。君の名は、ブラインと言うのか」

 「え。あ、はい。そうです」

 「魔王と知り合いなのか」

 「いいえ。全然知りません」

 「じゃあ、どうして。魔王が君の名前を知っている!」

 

 語尾の『お』が消えている。

 こんなに真剣な表情になるのか。

 あのシャオリンが!?


 「そんなの知りませんよ。自分だってビックリしてるんですから」

 

 これは正直に言っている。オレの本音だ。

 本当に驚きまくって、さっきついついオレって言っちゃってたわ。

 ブラインの一人称は自分なんだからな。


 「そうか。じゃあ、君が魔族ではないんだな」

 「どこが魔族に見えるんです。オレに角がありますか? ほら」


 自分の頭頂部を見せる。


 「ないな・・・人間か」

 「でしょ。魔族って角は隠せないですからね。幻術でも使わない限りね」

 

 魔族は角を隠せない。

 だから、人間社会に溶け込む時には幻術を使用するしかないと言われている。

 なので魔族がこちら側に潜入するには大量の魔力が必要となるので、魔族はあまりこちらの世界に強引に来ないって設定がある。

 魔王襲撃ルートの時の魔族たちは決心してこっちに来ている。

 そこで、とある障壁を破壊する事で、彼らはこっちの世界で動きやすくなろうと動くんだ。

 

 「・・・君も、魔族について詳しい? 知っているんだお?」


 お!? 口調が戻ってる。


 「まあ、そこそこは知ってます」


 魔王襲撃ルートで、禁書庫の本を読めるから、そこにある本は全部読んだ事がある。

 だから何でもとは言えないけど、大体は知っているはずだ。


 「そうか。それだから、魔族に狙われたのか?・・・わかった。君、わっちの弟子になるんだお。狙われているのならわっちが守ろう。それにまた君のそばにいれば魔族に会える気がするし」

 「え? え?」

 「黄龍麒麟拳を教える。じゃないと魔王には対抗できない。魔族程度なら、このまま鍛えていっても大丈夫だろうけど、魔王が狙ってくるのなら、君は生きられないはずだお」

 

 オレがここでシャオリンの弟子になる!?

 ま、待て。ルートが違うぞ。

 この人を師匠にするには、会うたびに冷たくして、会うたびに酒をあげる。

 それが、餌付けみたいになって、手懐ける形で師弟になるのに。

 あれ? どういう事?


 「お・・自分がですか?」


 オレって言いそうになった。気付かれないように言い直した。


 「うん。狙われてるなら、守ろう。爺様にも連絡を入れておくお!」

 「は、はぁ」

 「いいかい。魔族の事は出来るだけ公にしない。まだ魔王が本格的に行動を起こしているわけじゃないからね。この程度で一般に報告したら、きっと皆が混乱するんだお」

 「た、たしかに。そうですね」

 「うん。魔族の事は任せて。それに君を預かるから、明日また会おう」

 「わ。わかりました。お願いします」

 「それじゃ、また」

 「はい」


 軽く手を振って、彼女はカッコよく去っていった。

 ちょっと待て。

 あんなにカッコいいキャラじゃないぞ。あの人。

 酒の飲みすぎ。

 ぐーたらで私生活が壊滅状態。

 戦闘以外は役に立たないのが、シャオリンなのに。

 あれじゃ、めちゃくちゃ有能な人じゃないか。

 オレは彼女のああいう一面を見て来なかったって事か。

 あんだけやり込んでも、オレはまだあのゲームの本質を見ていなかったって事かよ。

 化け物だろ。

 リミットタウンの情報量ってさ。


 

 少し打ちひしがれてから、オレは寮に戻った。

 今日の疲れは、過去一番だった。帰ってすぐにぐっすり眠ったのであった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。