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喜一はあきれたように肩をすくめて
「関所を通るとき、大工仕事で旅をしていると言い訳にもなるか」
と桃太郎にバールを返しました。
「関所といえば、鬼の子はどのような格好をしているのだ?」
喜一が尋ねました。
「なにも特別な格好は。村人と同じように小袖と括り袴です」
「頭の角は?」
「手拭いを巻いて隠してます」
「それではうまくない。その子は背格好はどれくいらいだ?」
「僕と同じくらいでしょうか」
桃太郎の返答を聞くと喜一は再び僧坊に行って、山伏が身につける梵天袈裟を一式持ってきて桃太郎に渡しました。
「これで鬼の子を山伏に変装させなさい。頭巾を被っていても不審に思われないだろう」
桃太郎は喜一から譲り受けた品々を両手に抱え、ぺこりとお辞儀をしました。
「桃太郎。関所だけでなく、思わぬような困難に出くわすかもしれない。だがそれは御仏がお前に与えられた試練だ。日々精進。剣の道は人の道でもある。鍛錬に努めなさい」
喜一は弟子に言い聞かせました。桃太郎は喜一に深々と頭を下げながら
「人の道もなにも、僕はフルーツ少年だと言っておるだろうが」
と小声で文句を言いました。
頭を上げた桃太郎の顔に喜一の両手が伸びました。喜一はニコニコしながら桃太郎の両方の頬をつまんで左右に引っ張ったのです。




