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夜、ウィリアム博士の家。
部屋の中、目を瞑ったままのシェリーはクッションで上半身を起こされ、メアリー博士にスープを飲ませてもらっていました。メアリー博士がスプーンをあてがうと、シェリーの唇はスープを少しずつ飲み込んでいきました。ですがシェリーの瞳は開くことは無かったのです。
「いっぱい食べれたわね、偉いわシェリー」
メアリー博士はシェリーの髪を撫でました。シェリーの反応はありません。
メアリー博士の目から大粒の涙がいくつも流れ落ちました。
部屋にウィリアム博士が入って来ました。
メアリー博士は慌てて涙を拭いて平気な顔を作りました。
「ただいま。昨日、将軍様に会うことができた。残念ながら将軍様も鬼の妙薬を持っていなかった」
ウィリアム博士はそう言うと、シェリーの枕元に人形を置きました。それは黒くて長い髪の毛を伸ばした幼い女の子の姿をした日本人形です。
「あら、かわいいお人形」
メアリー博士は初めて見る日本人形を珍しがりました。
「武将の北畠様がシェリーにプレゼントしてくれたのだ」
ウィリアム博士は寝台の横に膝立ちになってシェリーの手を取りました。
「シェリー。パパは必ず鬼の妙薬を手に入れるからね。そしてシェリーの病気は絶対に治るんだ」
ウィリアム博士は言いました。
「そうですとも。シェリーは元気になって、成長して、素敵なレディになるの。そしていつか、わたし好きな人ができた、なんて言ってあなたを困らせるんですわ」
とメアリー博士は言いました。
「そうだ。きっとそうに違いない。私はきっと困ってしまうだろう」
とウィリアム博士は目を潤ませながら眠り続ける大切な大切なシェリーを見つめました。
寝台の上、シェリーの肉体は静かに呼吸をしながら、ただ眠り続けています。
部屋の壁際に、半透明の幽霊のシェリーはいました。シェリーの姿はウィリアム博士とメアリー博士には見えないし、声も聞こえません。
シェリーは悲しい顔で、心の中で独り言を言いました。
(きっとママは気づいている。パパはどうだろうか?わたしの命はもう長くない)
第10話 おわり




