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「ありがとうございます。ママも毎日、神様にお祈りしてくれているんです」
シェリーの悲しい気持ちは消えませんでしたが、それでもなんとか笑顔を作って喜一に答えました。
喜一は頷いて本堂の奥、ご本尊の前に行くと合掌をしながら静かな声でお経を唱え始めました。
シェリーはみんながお昼寝しているそばに行って、同じようにゴロンと横になり目を瞑りました。みんなで一緒にお昼寝をしていると、シェリーの悲しい気持ちが少し和らぎました。お寺の外はいい天気でした。
同じ頃、都の中心にあるお城の一室。
経行は正面に座っている武丸に
「母上はどうしておられる?」
と尋ねました。
「奥の院にこもり、奥方様に祈りを捧げております」
武丸は答えました。
「もう良いというのに。時子殿には何の罪も無い」
「それでも、子を持つ母として気持ちが許さないのだそうです」
武丸は視線を落としながら
「お爺様は鬼の国を悪く言われます。ですが、幕府が乱れたときならまだしも上様のもとで治世がされている今に、侵略を企てるものでしょうか?」
と言いました。
「やはり親子だな。だんだんと兄上に似てきた」
「鬼の国をよくよく探るよう、お爺様に話してみようかと思うのですが」
「武丸。そなたはまだ若い。南条殿がそなたの悪いようにすることはないだろうが、この件については今しばらく触れぬ方が良い」
「何か思惑があるのでございますね?」
経行は何も答えず、少しだけ目元をほころばせました。
武丸は将軍の部屋を出てお付きの侍を従えながら庭に面した廊下を歩きました。
見上げると初夏の鮮やかな青空に生き生きとした白い雲が浮かんでいます。そんな天気とは対照的に武丸は表情を曇らせながら
「母上と私が赦される日はくるのだろうか」
と一人呟くのでした。




