第10話 『罪と悲しみ、予言』
朝、桃太郎は夢を見ていました。
幼い子供の頃の桃太郎が、村の道に立っています。
桃太郎の手を、隣に立つ美しい着物姿の女性が握っていました。桃太郎の母親です。前の夢と同じように母親の顔は靄がかかってはっきりとは見えません。
「桃太郎、ごらんなさい。あなたのお父様は立派な武家のもののふです」
母親は指さしました。その先に逞しい馬に乗った陣中羽織の武者がいます。こちらも見たことはありませんが桃太郎の父親なのです。ですがやはり顔は靄がかかって見えませんでした。
父親が手綱を引くと馬が前足を上げていななきました。そして父親は向こうに馬を走らせて去って行きました。行く手には父親を待つ武者たちの影が見えます。父親が武者たちの間に分け入ると、武者たちは刀を上げて答え、父親に続いて駆けていきました。遠く去りゆく父親に桃太郎は手を伸ばしましたが、父親は振り向きもしませんでした。
「お父様はどこに行ったの?」
桃太郎が母親に聞きました。
「これから戦が始まります。お父様はいくさ場で武功をたてて名を世に残すのです」
母親が言いました。
「お母様もどこかに行くの?」
桃太郎は不安になって聞きました。
「母はずっと桃太郎のそばにおりますよ」
母親は優しく答えると屈んで桃太郎を包み込みました。桃太郎も両手をいっぱいに広げて母親に抱きつきました。
桃太郎は目を覚ましました。目の前に茶色のふわふわした毛の塊が見えます。ベルナドットの背中でした。
「んあー」
ベルナドットは桃太郎に抱きつかれて目を覚まし、前足後ろ足をピーンと伸ばして目覚めのストレッチをしました。




