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「それは奇態な」
と北畠は言いました。
「妻と共にこの病を治す方法がないか四方八方手を尽くしました。それこそ、怪しげなまじないやインチキの薬まで調べて、調べて。そしてついに、この国にある鬼の妙薬こそがこの病を治すという話を聞いて、ひとすじの糸を手繰るようにしてここに来たのです」
とウィリアム博士は言いました。
北畠は小さく頷いて
「私にも娘がおります。ウィリアム博士、同じく娘を持つ父親同士として、出来得る限りの協力は致しましょう」
と言いました。
「北畠様、ありがとうございます」
ウィリアム博士は北畠に頭を下げました。
「ウィリアム博士。あなたに今の幕府の成り立ちをお話ししておきましょう。これから上様に仕えるのであれば知っておかなければなりません」
北畠は背筋を伸ばし神妙な面持ちで言いました。
「成り立ち?」
「そうです。本日謁見された上様、そして太子の武丸様。お二人は本当の親子ではありません。武丸様は上様の兄上である先代の武朝様のご令息なのです」
「そうでしたか。先代の武朝様は?」
「事故で崩御されました。新しい橋の落成式の帰りに、馬から落馬され。それこそが混乱の始まりでした。先代の正室でもあった時子様の父である南条殿が、武丸様を将軍に擁立することを宣言したのです。折りしも上様は朝廷へ使者として赴き都を離れている時でした。もともと南条殿の増長を快く思っていなかった諸将は先代の弟君であらせられる上様を押し立てて南条殿と対立し、ついには武力衝突する事態となったのです。私も南条殿に対立した一人でした」
「そのようなことが。ですが南条様も武丸様もいらっしゃいました」




