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同じ頃、お寺のお堂で住職の喜一がくしゃみをしていました。
「うむ、噂をされるとくしゃみをすると言うが、誰かがワシの話でもしてるのかもしれんな。たぶんとんでもないなまぐさ坊主とでも悪口を言ってるんじゃろう」
と喜一は言いました。
その喜一の目の前に体の大きな男が座っていました。その大男は僧侶の着物である黒い法衣を着て、頭も白い法衣で包み顔だけ出している格好でした。脇に薙刀を置いています。彼はただの僧侶ではなく僧兵なのです。
その僧兵、典成は
「噂でくしゃみとは、お師匠でも迷信を信じているのですか?」
と笑いながら言いました。
「何を言う、我々の商売こそ迷信の塊ではないか。ただの平凡な人間でありながら仏だ悟りだなどと説教をする。だがそれでも誰かの救いになるのであれば念仏の唱え甲斐もあるというものだ」
喜一は言いながら目の前に置かれた杯の酒を飲み干して瓶からお代わりを注ぎました。
「これは手厳しいですな、他の坊主どもには黙っておきましょう。ところでお師匠のご推挙されたウィリアム博士ですが、上様にお目通りが叶いそうです」
と典成も自分の杯の酒に口をつけながら言いました。
「彼は優れた学究の徒だ。きっと上様のお役に立つだろう」
と喜一が言うと
「お師匠に上様などと呼ばれては…上様、いえ経行も居心地が悪いでしょう」
と典成は苦笑いをしました。
「ふふふ。そういえば今一人だけ剣術を教えている子供がいるのだが、その子が飛んだり跳ねたりで経行の子供の頃とそっくりでな。いつの時代にも型破りはいるものだ」
と喜一は言いました。
「あれには拙者も参りました。しかし今でも弟子を取られているとはお師匠もまだまだ現役ですな」
「お前たちで十分懲りたはずなのだがね」
二人は笑って酒を飲みました。




