第21話 『神様の鉈』
昼前、桃太郎たちは関所にいました。
「ギャアアアアアァーーーーーッ!ギャギャギャギャギャアアアァーーーッ!」
猛り狂ったアレキサンダーはうずくまるナクラの背中に片足をかけて、自らの頭上でギターを振り回して絶叫していました。その目は正気を無くし、怒りに我を忘れているかのように黄色く鋭い光を放っています。
「なんて狂暴な猿なのだ!」
門番たちは恐れ慄きました。その隙にシェリーが壁に貼られてあるナクラの似顔絵に思いのままに落書きを描き足しました。似顔絵ナクラは猫の耳と髭をつけられた奇妙な有様となったのです。
「見ての通り、僕たちのお猿さんは非常に荒々しい生命体です。あの怒りは環境破壊を行う人類に向けられたものかと愚考いたします。空の、海の、大地の悲鳴がお猿さんには聞こえているのです。あなたには聞こえますか?」
桃太郎は門番に問いかけました。
「そんなこと知るものか。いいから早くあの猿を連れて行ってくれ!」
門番は似顔絵と桃太郎たちを見比べて指名手配者がいないと判断したのです。そして追い払うように桃太郎たちを通してしまいました。
桃太郎たちは無事に関所を通り抜け、街道を進みました。
「ナクラ、大丈夫か?」
ラミアがナクラの背中を撫でながら言いました。
「大丈夫だ。アレキサンダーは演技に熱がこもると本気で叩いてくる。だがおかげでこうして関所を抜けることができた」
ナクラは言いました。
「すまないナクラ。俺はパフォーマンスに熱中するあまり我を忘れてしまう時がある。ゾーンに入っている状態、とでも言えばいいかな」
アレキサンダーが言いました。
「アレキサンダーはガチのアーティストなんだろうな」
桃太郎は感心しました。




