17/142
3-5
「あの婆さんも何を言い出すのやら。いいか桃太郎、お前は…」
喜一が何か話そうとすると、桃太郎の向こうでべルナドットとアレキサンダーとコペルニクスが前足や手や羽根で「×」と作って、いかにも
「言ってはダメだ」
とアピールをしました。さらにアレキサンダーは右手人差し指を口に当てて「シー」と、話すなというジェスチャーまでしました。
喜一は腕を組んで首を傾げながら、数秒考えました。そして
「桃太郎。お前の生まれがどうこうには口を出さないが剣の師匠としての指導は言わせてもらう。ピョンピョン飛び跳ねて相手を翻弄するのも良いがの、腰を据え肚を決めた剣にこそ力は宿る。日々鍛錬するがよい」
と言いました。
「隙あり!みんな逃げるぞ!」
桃太郎は手足で床を掻いて本堂から飛び出した。動物たちも彼に続いてお寺から駆け出していきました。
本堂の中、一人きりになった喜一は
「ふっふっふ、面白い子だ。何をしでかすかわからん」
と言いました。
喜一の目の前、何もない空間でほんの少しだけ光が揺らいだように見えました。




