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「ははは。盗人猛々しいな」
は喜一は笑いながらお堂の奥に行き、酒の入った瓶を持って来てアレキサンダーに渡しました。さらに喜一は
「これを桃太郎に」
と巻物と矢立をアレキサンダーに持たせました。矢立とは携帯用筆記用具で筆と墨がセットになった物です。
「なんだいこれは?」
アレキサンダーが首を傾げると
「桃太郎に、これでお経を書き写して心を穏やかに保つように、と」
と喜一は言いました。
「そいつぁ無理だと思うぜ。あんたのお弟子さんはろくでなしだ」
アレキサンダーは歯を剥いてニヤリとしました。
「そう言ってくれるな。ワシの本業はお釈迦様のありがたい教えを広めることなんだよ。どうも弟子たちはそこをわきまえておらん」
喜一は苦笑いをしました。
そうこうしていると、意識を取り戻した桃太郎が顔を上げて
「お師匠。僕は人間ではなく桃から生まれたフルーツ少年だったのです」
と喜一に言いました。
「何を言っておるのだ?」
喜一はいよいよ困惑しました。自分のことを果物だという人間にこれまで出会ったことはありません。おそらくこの先も無いはずです。ですが今この瞬間は、目の前にいるのです。
「そのようにババアにカミングアウトされました。僕は桃から生まれたフルーツ少年なのだと。それゆえ僕は目覚めたのです。フルーツ界隈の救世主としての自覚に」




