19-9
「なあ桃太郎。村人は蛇の妖怪と言ったが、もしかしたら妖怪じゃなくて蛇神様の一族じゃないだろうか」
ナクラが火打ち石で火を起こしながら言いました。
「蛇神様?」
桃太郎が聞き返しました。
「そう。妖怪と神様の区別など難しいのだが、蛇で妖術を使うような者は蛇神様の一族だと思う。長く生きて高い霊力を持つ、本当に神様として祭られるような者たちだ。もし本当に蛇神様の一族の者だとしたら、カエルやタヌキのような簡単なわけにはいかないぞ」
「そうか。ついに僕たちは神様にも反逆を試みるというわけだね。俺の手に悪魔の名の武器があるのも運命と言える」
「桃太郎、あまり不吉なことを言うもんじゃ無いよ」
「蛇ってフルーツを食べるのかしら?」
ナクラはあきれ顔をしました。桃太郎はナクラにおどけてウィンクしてみせました。
日は暮れてすっかり辺りは暗くなっていました。
拝殿の中、晩ご飯を食べ終えた桃太郎たちはアレキサンダーのギターとシェリーの歌を楽しんでいるところでした。
行燈に明かりを頼りに桃太郎たちがわいわい騒いでいると
「楽しそうじゃな」
と拝殿の奥から女の声がしました。声につられて桃太郎たちが振り返えると、そこに一人の少女がいました。年の頃は桃太郎やナクラと同じくらいに見えます。着物姿でつややかに輝く長い黒髪、大きな瞳、白い肌。そして、着物の裾から出ていたのは二本の足では無く、太くて長いヘビの胴体でした。




