19-5
「・・・なんで僕だけひとりぼっちなんだ」
桃太郎はずっとそこに立ち尽くしました。そんな彼の後ろで、奥方は両手で顔を覆って肩をふるわせて泣いていました。
時は今。
奥方は前を行く桃太郎の背中を見ました。桃太郎は友達に囲まれ、おしゃべりして笑い合いながら歩いています。
奥方は目を閉じて両手を合わせ御仏に祈りを捧げました。
桃太郎たちの目の前、山間に村がありました。
左右の山肌には段々に田畑が広がり稲が青々としています。藁ぶき屋根の家が並び、村の中には川が流れていました。
時々畑仕事をする農民が立ち上がっては桃太郎たちを珍しそうに眺めました。
街道の向こう、村人が何人か立って桃太郎たちが来るのを待っていました。大人達に交じって少女も一人います。桃太郎たちが彼らの前まで行くと、一人の男が進み出ました。
「桃太郎さんですか?私はこの村で神社の神主を務める葦名です」
代表者らしき男が桃太郎に言いました。
「そうだけど」
桃太郎が答えると葦名は
「あの飛脚の言ったことは本当だった!妖怪退治をしてくだる桃太郎さん。私たちの村を救って欲しいのです」
と他の村人と一緒に頭を下げました。
「あの飛脚め。こんどあったら俺の必殺技でバアルの露と化してくれる」
と桃太郎は怖いことを言いました。
葦名はいかにも困ったという顔で説明を始めました。
「私たちの村では若者が大きな町へ出て行ってしまう、いわゆる過疎化問題を抱えています。そんな私たちのところへ蛇の妖怪がやってきて、自分は怪我を治す妖術が使えるからこの村は繁栄するだろう、と言ってきたのです。私たちは山にある神社に蛇の妖怪を招き入れました。するとどうでしょう、奴は生け贄を要求してきたのです。こちらにいる娘が指名されました。きっと丸呑みにされるに違いありません。村の繁栄のためとはいえ生け贄はあんまりです」
この場にいた桃太郎やナクラよりも年下、シェリーと同じくらいの女の子が生け贄の娘でした。




