16-3
その隙にシェリーはナクラの人相書きを
「えいっ!」
と引き剥がしたのです。
「あっ、人相書きが!」
門番にはシェリーが見えなかったので、人相書きが風に剥がれて飛ばされているように見えました。ナクラの人相書きはヒラヒラと宙を高く舞い上がり、門の向こう側へと運ばれていきました。
「これは困ったぞ。人相書きが飛ばされてしまった」「きっと糊がしっかりついていなかったのだ」
門番達は顔を見合わせました。その彼らの目の前で、アレキサンダーはいよいよ感情が高ぶった風を装いました。しゃがみ込んだナクラの肩を手でぎゅっと掴みながら
「ギャッギャッギャーッ!」
牙を剥いて、体をブルブル震わせながら奇声を発したのです。アレキサンダーの瞳は黄色に光り正気を失っているように見えます。それはまさに野生の猿でした。
「このとおりうちのお猿さんはとても気短で、すぐに噛みついたり引っ搔いたりするのです」
桃太郎は肩をすくめて申し訳なさそうに門番に言いました。
「噛みつくのか!?…ええい、もう通行料は貰った、さっさと行ってくれ」
門番たちは桃太郎たちを追い払うように門の向こうを指差しました。
桃太郎たちは無事に関所を通ることができました。
しばらく進んで関所から離れたところまで来てから
「アレキサンダー、うまいことやったな」
とナクラが言いました。
「誤魔化すためとはいえ乱暴なことをしてすまなかったぜ」
アレキサンダーは謝りました。




