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佐々木の前に和田が進み出て
「嫡男の知家様も元服され、いよいよお家も安泰ですな」
と言いました。和田の隣に佐々木の長男である知家が立っています。知家はまだ幼さが抜けない顔つきであったはずなのに、今は凜として大人びた様子で佐々木を見つめています。
「知家、しばらく見ないうちに立派になったな」
佐々木は久しぶりに会う息子の成長を喜びました。
知家は笑顔で
「はい、父上。ところで・・・」
と途中で言葉を止めました。
「そんなところにいては風邪をひいてしまいますよ?」
佐々木はハッとしました。幻が解けたのです。彼は庭に裸足で下りて雨に打たれていました。
縁側から下侍が
「佐々木様、びしょ濡れではないですか。いったいどうされたのです?」
と佐々木に声をかけています。佐々木は周りを見回しましたが、暁童子の姿は見えません。
「はて・・・これはいったいどうしたことだ?」
佐々木は戸惑い、首を傾げました。
暁童子は屋根の上にいました。
「僕が鏡を持ってなくて助かったね。いや、鏡があったとて相手するほどの者でもないか。村の五つで満足するようではたかがしれている」
暁童子は雨に打たれながら一人たたずんでいるのでした。




