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「奥方様のお供を」
典成はうめくように言いました。
「典成、頼む。わしをこれ以上なさけない男にしないでくれ」
経行が言いました。典成は薙刀から手を離すと膝をついて肩を落とし、魂が抜けたように動かなくなりました。
経行は振り返ることなく、雨にうたれている奥方の輿を見つめながら
「北畠、那須。南条と新田殿に使いを出してくれ。桃の言葉通りにする」
と背後の武将たちに言いました。
北畠も那須もうなだれて黙ったままでした。
経行は同じ姿勢のまま、続けて言いました。
「戦は終いじゃ」
時は今に戻ります。
まだ雨は降っていました。
典成は川に向かって手を合わせ続けているのでした。
都、南条の屋敷の一室。
薄暗い部屋の奥にはダツバ法師が作った祭壇が置かれ、中心に小さな丸い鏡が飾られていました。祭壇正面に座ったダツバ法師がブツブツと呪文を唱えています。その後ろで南条も手を合わせ祈りを捧げていました。
部屋の外では暁童子が縁側に座って雨空を眺めていました。鏡は祭壇に飾られているので今は彼の胸にありません。
「おい、小僧」
南条の家来の佐々木知重が暁童子に声をかけました。
暁童子が振り返ると、佐々木は
「小僧。お前の師匠はどのような男なのだ?」
と聞きました。




