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軍列の後方では追っ手の南条軍との戦闘が始まっていました。典成は薙刀を振りかざし敵軍に突撃しました。彼の振り下ろす薙刀に南条軍の雑兵がバタバタと切り倒されていきました。しかし数で勝る南条軍は典成とその兵たちを取り囲み攻め続けました。
一進一退の攻防が続き、典成の法衣が敵の返り血で赤く染まっていきました。その彼に再び伝令兵が駆け寄ってきました。
「典成様!川下に伏兵あり、村に通じる橋も破壊されています!」
伝令兵の言葉を聞くなり典成は馬を返してわき目もふらずに先程来た道を戻りました。向こうでも自軍と南条軍が戦いを繰り広げています。戦場となっている場所より少し手前、川にかかっていたはずの橋は中腹のあたりが破壊されていました。そこに、逃げ場を無くした奥方の輿が横に倒れていました。
典成は馬を下り輿に駆け寄りました。輿の陰に奥方がうずくまって身を隠していました。
「奥方様、ご無事で!」
典成を見て恐怖に固まっていた奥方の表情が少し緩みました。次の瞬間、ヒュッという空気を切る音が典成の耳に届きました。矢の音です。とっさに典成は両腕を広げて目の前の奥方の盾になりました。典成の背中にドスッ、ドスッと矢が突き刺さりました。
典成は振り返って薙刀を構えました。その彼の顔の横、頬をかすめながら矢が通り過ぎました。
典成は振り返りました。その数秒、世界から音がなくなったかのように、そして全ての動きがゆっくりになったかのように、典成には感じられました。典成の目の前で、肩に矢を受けた奥方が着物をなびかせながら背後に倒れようとしています。音のない世界、ゆっくりとしか動けない世界で、典成は手を伸ばしました。
桜の花びらが舞っていました。




