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ゆっくり話して●大佐の香り with 前日譚  作者: 香詠 Koei
『レクイエムの救済』(ゆっくり話して●前日譚)
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第2話:国境パトロール

カルボニア州が事実上、北方帝国の支配から離脱したため、帝国陸軍は同州と帝国内陸との境界線に複数の臨時兵営を設け、重兵を配備して防衛にあたった。分離独立勢力の帝国内部への浸透を防ぐとともに、北方帝国からカルボニア州へ向かう一切の移動を阻止するためである。


ジュリアンが入隊後に任された主な任務は、その国境パトロールだった。


比較的危険性の低い任務ではあったが、ジュリアンの母親は自身の持つ人脈を駆使し、ジュリアンが任務中に他の新兵のように最前列を歩く必要がないよう手配していた。彼は後方に残り、味方の援護を担当することになった。


こうして初日が過ぎた。ジュリアンが所属する小隊は一度も敵と遭遇せず、もちろん一発も銃を撃つことはなかった。誰もが国境パトロールとは所詮こんなものだと思っていた。しかし、全員がパトロールの危険性を甘く見積もっていたその翌日、その誤算がついに命を奪うことになる。


事件が起こる5秒ほど前、ジュリアンは前方の隊員の左手側にある茂みの中で、尋常ならざる動きと物音に気づいた。彼は即座に銃を構え、その茂みの動く場所を狙った。


2秒後、茂みから案の定、一人の男が飛び出してきた。


(敵の奇襲だ!)


後方で仲間を掩護するジュリアンは、すぐに銃口を襲撃者に向けた。しかし、脳は射殺を指令しているにもかかわらず、指は訓練の時のように引き金を引くことができず、あたかも指自身に意思があるかのように動かなかった。


(本当に……本当に殺さなければならないのか?もしかしたら、ただの通りすがりの平民かもしれない……)


さらに1秒後、襲撃者が振り返ってジュリアンを見た。彼の銃を目にし、二人は1秒足らず見つめ合った。その次の瞬間、襲撃者は一本のナイフを前方の兵士の首元に深くへと突き刺した。刺された兵士はすぐさま激痛に襲われ、相手がナイフを引き抜くのを防ごうと、必死に相手の手にしがみついた。同時に、兵士は大きく口を開けて叫ぼうとしたが、声帯が破壊されて大きな声を出すことはできなかった。


ジュリアンは銃を構えたまま、その一部始終を目撃していたが、引き金を引けなかった。最終的に襲撃者は、ジュリアンの隣にいた別の兵士が数発の銃弾を撃ち込んで射殺した。襲撃を受けた兵士はよろよろと体を回し、仲間たちの方を向いた。数歩、ふらふらと歩いた末、ついに地面に倒れ込んだ。兵士は地上でなお微かに身をよじり、まだ完全に息絶えてはいなかった。しかし、気管も損傷していたためか、呼吸は著しく困難で、その表情は苦痛に歪んでいた。


隊長と衛生兵がしゃがみ込んで兵士の傷勢を確認し、十数秒ほど話し合った後、二人とも首を振った。そして隊長が拳銃を抜き、地面に横たわる兵士を見つめた。兵士はその意味を理解し、目を閉じて応えた。隊長は銃口を兵士の眉間に当て、一発の弾丸で兵士の苦痛を終わらせた。


隊長が立ち上がり、ジュリアンを見て、自分の前へ来るよう命じた。


隊長はまず平手打ちを一発食らわせ、そして大声で問い詰めた。「なぜ撃たなかったんだ? 後方から襲撃者を射殺できるチャンスが1、2秒はあったはずだ。貴様の無能さのせいで、我々の仲間が一人死んだんだぞ」


ジュリアンは隊長を見つめたまま、一言も返すことができなかった。


隊長はため息をつき、続けて言った。

「新兵なのは分かっている。だが、これが最後のチャンスだ。もし同じことが再び起きたら、今後は貴様が最前線を歩け」


「……はい、隊長」

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