第77話:私こそロミオとジュリエットの主人公だった
大佐はもう死んでしまったと思い込んでいるソフィーは、ゆっくりと家路を歩いていた。
しかし、彼女が本当に目指している目的地は、「あの世」だった。
(「あの世」に行けば、またパパやママに会える。マリーやアンナともお喋りができる。そして、餡ちゃんのイケメン顔をもう一度見られる。あなたたちを失った今「この世」にはもう、何も未練はない。)
「あの世」のすべてが「この世」よりもずっと素晴らしいと思うと、ソフィーは足早になった。少しでも早く机の引き出しから、「あの世」へと通じる「鍵」を取り出したかった。
(パパ、ママ、マリー、アンナ、餡ちゃん。もう少しだけ待っていて。私はすぐに、あなたたちのところへ行くから。)
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死の淵から生還し、新しい身分を手に入れた大佐は、車を運転してモラン邸へと向かっていた。
(フィーちゃん、もう少しだけ待っていてくれ。すぐに君のところへ行く。そして、三年間待たせた分のキスを返すよ。)
しかし、天は意地悪だった。モラン邸まであと五キロというところで、大渋滞に巻き込まれてしまった。どうやら前方で事故があったらしい。普段なら、この状況が解消されるまでに少なくとも三、四時間はかかるだろう。
しかし、もう三年も待ち続けてきた大佐にとって、あと数時間待つことなど何でもなかった。彼はエンジンを切り、残り少ないガソリンを無駄にしないようにしながら、鼻歌を歌い始めた。
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帰り道に、ソフィーはあのレストランの前を通りかかった。
(あの日、まさにこの場所で、大佐と私は互いの想いを告白し、恋人同士になったのだ。ここから、私は正式に彼の恋人になった)
しかし、そのレストランは空襲によって大きな被害を受け、今は営業を停止し、廃墟と化していた。けれど、それがかえって、ソフィーにとって「あの世」へ旅立つ最高の出発点に思えた。
一刻も早く家に帰って「鍵」を取ろうと思いながら歩いていると、ようやく遠くにモラン邸の屋根が見えてきた。
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ギィッ……という音とともに、モラン邸の大門が開かれた。





