第62話:彼の死刑執行は二週間後
【旧南国暦】
287年 ― 北方帝国は南方共和国に侵攻。全土を占領。
289年11月 ― ジュリアン大佐、救出作戦中にソフィーと出逢い。
290年6月 ― 複数の国々から成る西側解放連合は北方帝国を撃破。帝国軍は南国より大撤退。
【新南国暦】
1年 ― 南方共和国は復国。新南国暦を採用。
4年 ― 長年にわたる逮捕作戦と審問調査の末、帝国軍戦犯への追及が本格化。
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新南国歴4年(大佐が去ってから、もう三年が過ぎていた。)
ある喫茶店で、ソフィーは二人の乳幼児を抱いていた。見たところ、上の子は二歳くらい、下の子は一歳ほどだろうか。彼女の隣には、一人の中年女性が座っていた。
ウェイターがソフィーに尋ねた。
「奧様、ご注文はお決まりですか?」
「友達が來てからでもいいですか?」
ソフィーが言うと、ウエイターは問題ないと答え、立ち去った。
ほどなく、一人の妊婦が大きなお腹を抱えてソフィーの前に歩み寄ってきた。それは、ジャッキーだった。
「フィーちゃん、いつもいつも、うちの可愛い息子たちの面倒を見てくれてありがとね」
ジャッキーはそう言うと、ソフィーから赤ん坊の一人を受け取り、隣に座っていた中年女性に渡した。
「お母さん、ちょっと抱っこしてて」
そして、もう一人の赤ん坊を自分の腕に抱いた。
「リオンは?」ジャッキーの母親が尋ねた。
「デパートで迷子になったみたい。探したけど見つからなくて」
「あの男を絶対に逃がしちゃだめだよ、前にも言ったでしょ。忘れたの?」
しばらくして、リオンがテーブルにやって來て、遅れたことを詫びた。彼は買い物袋から二着のベビー用サッカーウェアを取り出した。
「これ、限定版なんだ。これを着せたらきっと可愛いよ」
「あなたったら、息子たちのことしか頭にないのね」
ジャッキーが言うと、リオンは慌てて袋から美しいヘアピンを取り出し、すぐにジャッキーの髪をまとめてやった。ジャッキーは思わず夫に數回キスをした。まるでキツツキのように、とても仲睦まじかった。
料理が全て揃うと、ジャッキーはソフィーが左手の薬指に、まだ大佐の指輪を嵌めていることに気づいた。そして尋ねた。
「ねえ、あれからもう三年だよ? まだ、あの人を待ってるの?」
「私は彼の婚約者よ。彼が帰ってくるのを待つのは、当然だわ。だから、私はずっと待ち続けるわ」
ジャッキーはうなずいて賛成した。「大佐はいい人だから、きっと大丈夫よ」
それから、ソフィーはリオンに向かって言った。
「一人、見つけたわ。」
リオンの目つきが一瞬で恐ろしいものに変わり、怒りの炎を宿らせて言った。
「どこだ?」
「政府の新しい庁舎よ。彼は今、新政府で中堅の役人をやっている。」
リオンは怒りをあらわにして言った。「あの外道が、よりによって南国の新政府で役人をやっているだと? 世の中に正義はないのか?」
その時、一人の子供が近くで新聞を売っていた。ソフィーはその子が可愛かったので一部購入し、開いて見ると、一面に驚愕の記事が飛び込んできた。
見出しはこうだった。
「北方帝国軍戦犯、ジュリアン・シンクレア大佐、戦爭犯罪により二週間後に死刑執行」
記事の橫に添えられたモノクロ寫真を見て、ソフィーはその大佐が自分の婚約者であることを確信した。
(彼だ……彼はまだ生きている……でも……死刑……?)





