第6話:一番綺麗な女は、やはり私
目の前にあるのは、ごく普通の、二階建ての石造りの民家だった。ソフィーの家と、よく似ている。その突然の既視感に、彼女は少しだけ、緊張をゆるめた。
ここはきっと、あの男が軍人としての権限で接収した「我が家」なのだろう。ソフィーは深く考えず、黙って彼の後ろをついて、玄関へと向かった。
男は、リズムを刻むように、何度かドアをノックした。それは、何かの合図のように聞こえた。
ドアが開く。ソフィーは、目の前の光景に、思わず息をのんだ。にわかには、信じられなかったのだ。
「大佐おじさんが、帰ってきた!」
出迎えたのは、他の軍人ではない。六、七歳くらいの、小さな女の子だった。
男は少女を抱き上げ、その頬にキスをしようとする。しかし少女は、彼の腕の中で嫌がった。
「おじさん、体が冷たい! 離して!」
男は素早く少女の頬にキスをし、少女もまた、彼の頬にキスを返す。それから、彼はゆっくりと少女を床に下ろした。
少女が、男の背後に立つソフィーを見て、言った。
「おじさん、また新しいお姉ちゃんを連れてきた! わあ、いっぱい連れてくるけど、このお姉ちゃんが一番綺麗!」
男は少女に何かを話しかけている。けれど、ソフィーの耳には、まったく入ってこなかった。というより、聞く余裕がなかった。頭の中は、「いっぱい連れてくる」という言葉で、いっぱいだったから。




