第56話:これが秘策? なんだ、大したことないじゃない
夜、ソフィーはお婆ちゃんに尋ねた。
「ねえ、もし連合軍がこの街に攻め込んできたら……大佐は、ここを離れなければなりませんか?」
お婆ちゃんは率直に答えた。
「ええ、彼は必ずここを離れなきゃならないんだ。さもなきゃ、連合軍の捕虜になれば、状況はもっと悪くなるからね」
「じゃあ、一つだけ、お願いがあるんですが。あの人のために、古い布きれを使って、一着の服を作ってあげたいの。着るとまるで、南国の農民みたいに見えるような服を」
お婆ちゃんは彼女の目的を理解し、うなずいて承諾した。
それからソフィーは尋ねた。
「……それから、この前ちらっと話してくれた、恋愛の『秘策』っていうやつ。もうあまり時間がないみたいだから……今ここで、教えてもらってもいい?」
お婆ちゃんは言った。
「ああ、それなら構わないよ。いいかい、よくお聞き。その秘策ってのはね——『女の子は適切な時に、自分から動くもんだ』ってことさ」
ソフィーは心の中で思った。(そんな簡単なこと? これも秘策?)しかしその言葉は口に出さず、お婆ちゃんに礼を言って立ち去った。
一方、大佐の部屋では、お爺ちゃんが大佐に、いつでも撤退できるように準備するよう言っていた。
「連合軍がこの街に攻め込んできたら、お前にはせいぜい三十分しか残されていない。準備は早ければ早いほどいい。帝国軍はもう勢いを失っている。撤退は時間の問題だ。」
大佐は無言のままこっくりと頷いた。それから尋ねた。
「去る前に、一つだけ。あの日お爺ちゃんが言っていた恋愛の『秘策』について教えてほしいのですが」
お爺ちゃんが言った。
「よく覚えておけ。秘策とは、適切な時に、女に大胆なお願いをするものだ。」
大佐は明らかにこの答えに不満そうだった。
「……すみません。ですが、こんな単純なことが、本当に秘策なのか?」
お爺ちゃんは言った。
「実際にこの秘策を使う時が来たら、その凄さがわかるだろう。」
お爺ちゃんが去った後、大佐は本棚から辞書を取り出した。辞書の中でne、nous、pouvoirという三つの南国語の単語を丸で囲み、さらにpouvoirの横にpeutという動詞の変化形までも書き込んだ。それから辞書を閉じ、何かの文を暗唱しているように呟いたが、その内容は誰にも聞き取れなかった。





