第42話:ジャッキーは小悪魔の達人
二階では、ジャッキーが窓越しに、遠く去っていくリオンの後ろ姿をじっと見送っていた。大佐は窓に向かってジャッキーに親指を立てて見せた。隣にいたソフィーが尋ねた。
「リオンのこと、好きなの?」
ソフィーはジャッキーが気まずそうに否定すると思っていた。しかしジャッキーはこう答えた。
「もちろん好きよ。だって私、こういうタイプが大好きなんだから。」
ジャッキーは振り返り、両手をソフィーの肩に置いて、力強く言った。
「一ヶ月以内にあの子犬を落として、特権を行使してやるんだから。」
ソフィーは自分の小悪魔作戦が全てジャッキーに教わったものだと思い出した。目の前にいるこの達人級の小悪魔を見て、心の中でリオンのことが心配になり始めた。
それから数日後の夜、リオンは身軽な様子で二階の窓からお爺ちゃんの家に忍び込んだ。ところが、こともあろうに、お爺ちゃんにばったり出くわしてしまった。
お爺ちゃんは顔色一つ変えず、こう言った。
「リオンくん、今朝もう進捗を報告しに来たばかりじゃないか。どうしてまた来たんだ? 新しい情報でもあるのか?」
リオンは言葉を濁した。
お爺ちゃんは首を横に振った。
「彼女は階下で家事をしているはずだ」
リオンが階下に降りようとしたその時、階段の入り口で偶然にジャッキーに出会った。ジャッキーはリオンを見て、心の中ではとても嬉しかったが、彼に気づかないふりをして、わざと横合いをすり抜けた。彼の方から追ってくるのを待っていたのだ。しかし、ジャッキーがどれだけ待ってもリオンは近づいてこない。振り返って見ると、リオンはなんと間抜けにその場に突っ立っていた。ジャッキーは仕方なく負けを認め、自らリオンのところへ行って、なぜここに来たのか尋ねた。
「……これを、君に返したくて」
リオンは、こともあろうに、あの髪留めの布を差し出してきたではないか。ジャッキーは、腹立たしいやら可笑しいやらで、直接こう問い詰めた。
「まさか私があげたって気づかなかったの? 気に入らないなら返してくれ!」
リオンはそれを聞くとすぐにその布きれをしまい込み、とても気に入っていると言った。
「この前持ってきたナイフ、私の部屋にあるんだけど、取りに入る?」
ジャッキーがそう言ってリオンの手を引っ張り、振り返らずに部屋へ向かった。リオンはおとなしくジャッキーについて行ったが、足をぶつけたり、頭を打ったりと、非常に酷いありさまだった。
お爺ちゃんはその一部始終を見ていた。隣にいたお婆ちゃんが優雅にコーヒーを一口啜ると、こう言った。
「家にまた子犬が一匹増えた。これで合わせて三匹だね」
お爺ちゃんはお婆ちゃんを見て、仕方なさそうに首を振った。
部屋に入ると、リオンはなんと真面目に聞いた。
「ナイフは?」
ジャッキーは、やれやれと頭を振りながら、こう言った。
「覚え間違えたみたい。ナイフは私の部屋にはなかったわ。じゃあ、もう帰る?」
リオンは馬鹿でも今帰るべきでないとわかっていたので、ナイフは次に取りに来ると言った。
「プレゼントがあるんだ。」
ジャッキーは机の上から手縫いのサッカーボールのキーホルダーを手に取った。
「ソフィーから、あなたがサッカーが大好きだって聞いたの。だから古い布を使って、お婆ちゃんに教えてもらいながら、このキーホルダーを縫ったの。私とソフィーを安全な場所まで送ってくれるお礼にね。」
リオンはこの小さなプレゼントがとても気に入り、受け取ろうと前に出た。その時、足が何かに引っかかり、彼はジャッキーの上に覆いかぶさるように倒れ、彼女をベッドに押し倒してしまった。そして、高い位置から見下ろすように、彼女と顔を突き合わせた。
その時、ソフィーとモーちゃんがたまたま通りかかった。ソフィーはすぐに手でモーちゃんの目を覆いながら言った。
「ジャッキー!あんたって娘は、本当に小悪魔っ!!!」
リオンは後ろに誰かがいるのに気づいて、すぐに立ち上がり、誤解だと言った。
しかしジャッキーは手を伸ばしてリオンの首を抱きしめ、自分の体の上に引き戻して言った。
「一回キスしたら、帰してあげる。」
リオンがまた逃げ出そうとすると、ジャッキーはなんと足で彼の腰を絡めて、ロックを決めてしまった。リオンは慌ててじたばたしたが、解けなかった。
ジャッキーが両手でリオンの顔を包み込み、左頬の傷跡にキスをした。リオンはその瞬間、もがくのをやめた。そして、ジャッキーはリオンの唇にキスをし、足のロックを解いて言った。
「ちゃんと一回以上キスしたから、もう行っていいよ」
リオンは本当に立ち上がって去っていこうとした。ジャッキーはもう一度首を振ったが、キーホルダーを持って行くのを忘れないように注意した。
「これから時々、ちゃんと持ってるか検査するからね。わかった?」
リオンはうなずいた。
「それで、私には何をくれるの?」
リオンは一瞬何を贈ればいいか思いつかず、ただ頭をかき続けた。
「ゆっくり考えてね。私、特別なプレゼントが欲しいの。」
ドアの外で、ソフィーはジャッキーの達人級の小悪魔テクニックに驚き、心から感心した。リオンが部屋を出て自分の横を通り過ぎるとき、ソフィーは彼を呼び止め、耳元で何かささやいた。





