第34話:ありがとう、一度だけでも愛されていいんだって思えた
懐中時計の蓋の裏側には、一枚の写真が入っていた。そこには金髪の美しい女性と、同じく金髪の小さな女の子が写っている。おそらく、あの歌詞に出てくるベルだろう。女性の美貌はどこか古典的で、ソフィーの美しさとはまったく異なっている。ベルちゃんは五、六歳くらいで、モーちゃんと同じくらいの年齢のようだ。
ソフィーの気持ちは予想以上に冷静だった。この答えに対する心の準備は、もう一日以上前からしていたからだ。しかし、愛する人を失ったことで感情が崩壊することはなかったが、思う存分泣くことだけは避けられなかった。
ソフィーは自分の部屋に戻り、大佐の軍用外套を抱きしめて、ベッドの上で泣いた。どうしてこんなふうに恋が終わってしまったのか、悔しくてならなかった。しかし、大佐を恨むことはなかった。むしろ、大佐が自分の命を救ってくれたこと、そしてこの数ヶ月間、一人の女として幸せを感じさせてくれたことに感謝していた。
(餡ちゃん、一度だけでも、私をこんなに愛してくれてありがとう。あなたの奥さんがとても羨ましい。でも、どうか、いつまでもお幸せに)
コンコンコン! お婆ちゃんは、ソフィーがいつも通り家事を手伝っていないことに気づき、体調でも悪いのかと心配になって、ドアをノックして様子を見に来た。ソフィーがドアを開けると、お婆ちゃんは彼女の涙の跡に気づいた。何が起こったか察しはついたが、多くは語らず、ただ体に気をつけてゆっくり休むように言った。お婆ちゃんは、こういうことは大佐自身がソフィーに直接説明すべきことで、部外者が干渉すべきではないと考えていた。
昼過ぎ、大佐はまた部下にエビや魚介類をソフィーのもとへ届けさせた。ソフィーはいつものようにエビを調理したが、大佐のために殻を剥くことはしなかった。やりたくないからではなく、もう自分にはその資格がないと感じていたからだ。
夕方、ソフィーは大佐と顔を合わせるのが気まずく、また自分が感情的に暴走してしまうのも怖かったので、適当に何か食べてから「体調が悪い」と言って、自分の部屋に戻って休んだ。
コンコンコン。誰かがソフィーの部屋のドアをノックした。またお婆ちゃんかと思って、ソフィーはすぐにドアを開けた。しかし、そこに立っていたのは大佐だった。彼の手には、殻を剥いたエビと野菜が盛られた皿があり、皿の横にはパンが一つ置いてあった。
「体調が悪くてあんまり食べられないみたいだから、エビの殻を剥いておいたんだ。部屋でゆっくり食べなよ」大佐が言った。
大佐が優しければ優しいほど、ソフィーはつらくなった。彼女は恋愛や結婚を尊重していた。大佐の優しさと思いやりは、本来なら彼の妻とベルちゃんだけに向けられるべきだと感じていた。だから彼女は大佐の言葉を無視して、ドアを閉めた。
大佐はすぐにそれを止めた。彼はソフィーを責める気持ちはまったくなく、ただ生理のせいで体調が優れないだけなのだろうと思っていた。そこで、彼は皿の上のパンを取り上げて、ソフィーに言った。「一口かじってくれないか? 君がかじったパンじゃないと食べたくないんだ」
(彼は最初から、間接キスのことを知っていたんだ……!)
本来ならとてもロマンチックなこのやりとりも、今のソフィーにとってはただの苦痛でしかなかった。彼女は涙をこらえて、ドアを閉めた。扉の向こうで大佐がどんな反応をしているのか、もうどうでもいいと思っていた。





