第31話:ベルって、誰?
お爺ちゃんが立ち去った後、ソフィーは大佐に慌てて尋ねた。
「遊撃隊って何? どうして、そんな人たちがあなたを調べてるの?あなたを傷つけに来るの?」
大佐は彼女の頭を撫でながら言った。
「怖がらなくていい。私は軍人だ。こういうことは毎日のようにある。普通のことだよ。お爺ちゃんが大げさに言ってるだけさ」しかし、大佐は心の中で事態が簡単ではないことを知っていた。ここ数日、通勤時も退勤時も、誰かに尾行されているような気がしていたからだ。だが、相手が誰なのか、全く見当もつかなかった。
ソフィーはその答えを半信半疑で聞いていた。でも、夜も更けていたので、彼女は疑問をひとまず横に置いて、大佐と一緒に眠りについた。
真夜中、ソフィーは寝ぼけながら誰かが歌っているのを聞いた。目を覚ますと、寝ていたはずの大佐が子守唄を口ずさんでいるのだった。
My blonde angel playing hide and seek
(金髪の天使が、かくれんぼしてる)
Where are you hiding? Won't you come out?
(どこに隠れてるの? 出てきてくれない?)
I'm waiting for you, my Belle.
(ずっと待ってるんだ、私のベル)
「My Belle……私のベル……? ベルって誰?」ソフィーには歌詞の意味はよくわからなかったが、最後の二語だけは聞き取れた。大佐の表情は、最初は微笑んでいたのに、歌っていくうちにだんだん悲しげになっていく。ベルというのは、彼にとってよほど大切な人に違いない。でも、彼からその話を聞いたことは一度もなかった。
大佐はしばらく歌うとやめ、部屋はすぐに静けさを取り戻した。ソフィーは、心の中の疑問にすぐに答えが出せないとわかったので、ひとまず寝ることにした。他のことは明日考えよう。
翌朝、また大佐の方が先に目を覚ました。昨日の教訓を活かし、今日こそは目が覚めてもすぐにはベッドを降りるまいと、固く心に誓っていた。ソフィーの腿が自分のスペースに侵入してくるのを待つことにした。そして、彼女が自分を予備の外套のようにギュッと抱きしめてキスしてくるのを期待した。そう思い浮かべていると、ソフィーは本当に太ももを上げ、大佐のスペースの警戒範囲内にまで侵入してきた。しかし、その瞬間! 彼女は、突如その足を、前方へとむやみに突き出したではないか。その結果、大佐は、あえなくベッドの下へと蹴り落とされてしまった。
物音でソフィーは目を覚まし、体を起こすと、大佐が床に座っているのを見つけた。そして尋ねた。「また私があなたを蹴り落としちゃったの?」
「違うよ。私がうっかり転げ落ちただけだ。大丈夫、床に服を敷いてクッション代わりにしておいたから」
大佐は心の中で思った。
(もし将来結婚したら、毎日フィーちゃんにベッドから蹴り落とされるんだろうか?でも、まあいいか。彼女と一緒にいられるなら、毎日蹴られても幸せだ。その時は、もっとたくさん服を敷いておけばいいだけのことさ。)





