第21話:愛され特権、私もついに手に入れた
ソフィーがモランお婆ちゃんの部屋のドアをそっとノックすると、開けるなりソフィーの顔を見たお婆ちゃんは、すぐに笑いながら言った。
「どうやら、あの人が、ついに言ったみたいだね?」
「いいえ、あの人、自分の長官に言っちゃったんです」
自分で言ってから、なんだか変な話だと思ったソフィーは、事の次第を、洗い浚いお婆ちゃんに話して聞かせた。
それを黙って聞いていたお婆ちゃんは、言った。
「運が良かったねえ。よりにもよって、あの中将さんだったから良かったけど。これに懲りたら、もう少し用心しとくれ。これからは、むやみに扉を開けて外に出たりするんじゃないよ」
ソフィーはとりあえず「わかりました」と生返事をした。何しろ彼女がわざわざお婆ちゃんの部屋を訪ねた目当ては、事の危険性を説明してもらうことではないのだ。
するとお婆ちゃんは、わざと彼女をからかうように言った。
「ほら、もう行っていい。これからは気をつけるんだよ」
ソフィーはたちまち焦りだした。
「ま、待って! まだ、大佐のあの言葉を、分析してもらってないんです」
お婆ちゃんは更に彼女を追い込むように言う。
「ほう、あの人の、どの言葉をだい?」
ソフィーは唇をきゅっと噛むと、観念して目を瞑り、それから早口で言い放った。
「彼が、『彼女を愛しています』って言ったんです!」
するとお婆ちゃんは、またもや声を上げて笑い出した。
「なんだい、そんなら言葉の通りだろう。分析も何も、ありゃしないじゃないか」
「じゃ、じゃあ私、これからどうしたらいいの? 彼のこと、もう彼氏って呼んでもいいの? 私はもう、彼の彼女になったってことなの?」
「まあまあ、フィーちゃん、まずは落ち着いて。よしよし、私がちゃんと分析してみせよう。今のアンタたちの格好ってのはね、アンタは彼がアンタを愛してるのを知ってる。でも、彼の方は、アンタも彼が好きだってことを知りやしない。それどころか、アンタが、もう彼の気持ちに気づいてるってことさえ、これっぽっちも知っちゃいないんだ。ちょっとばかしややこしいけどね、つまり、アンタたちは『両片思い、偽片思い』って段階なのさ」
「両片思い……偽、片思い?」
「そうさ。この段階で、アンタはこの世で一番、愛されてるってわかった女なんだ。そんな女には、何をしても許される特別な権利、いわば愛され特権ってもんがあるんだよ。まあ、それをたっぷりと、楽しまなくっちゃね!」
部屋を後にする時、ソフィーはまだ半信半疑だった。でも彼女は、「愛され特権」っていう、その新しい響きが、すっかり気に入っていた。





