第16話:問い詰められて、つい、彼が好きだと認めちゃった
その一方で、ソフィーの服を仕立てるために、モランお婆ちゃんは、メジャーで体のサイズを測っていた。
「フィーちゃんは、お顔が綺麗なだけじゃなくて、スタイルまで抜群だねえ」
そう言いながらも、お婆ちゃんの手は休めない。
「体つきはしっかりしてるのに、腰の細さときたら、若い頃の私より細いくらいだよ」
本当なら、母親に似たのかと尋ねたかったが、この戦時下、よほど先方から話を振ってこない限り、家族のことに首を突っ込むのは無作法だ。それは、モーちゃんの両親のことを、自分たちが誰彼構わず尋ねられたくないのと同じだった。だから、お婆ちゃんはその質問を、ぐっと飲み込んだ。
「多分、母に似たのね」ソフィーが、自ら母親を口にした。彼女が母親を語る時、その表情にほんの一瞬、哀しみの翳りがよぎったのをお婆ちゃんは見逃さなかったが、やはりそれ以上は聞かなかった。
「全く、大佐は本当に、よくできた若者だよ」
お婆ちゃんが、ソフィーの目の前でわざと大佐のことを話題に出し、表情の変化を観察する。はたして、ソフィーは大佐という二文字を聞いた途端、もとから大きな目をさらにわずかに見開き、歯をきゅっと下唇で噛んだ。その一連の仕草はまったくの一瞬だったが、お婆ちゃんは、ちゃんと見逃さなかった。
「あの人は、私たち年寄りが重い物を持つのをさっと手伝ってくれるし、いつだって、こんな風に食べ物や布をたくさん持って帰ってきてくれるんだよ。ほら、あんたに新しい服を仕立ててやるってんで、こんなにたくさんの布を買ってきたんだからね」
それを聞いたソフィーの胸の内は、甘くくすぐったい喜びでいっぱいになった。しかしすぐに、どうしても確かめなければならないことに思い当たる。
「あの、彼は……他の人に、布を買って……」
「ジャッキーには買ってないよ。あんたにだけさ」お婆ちゃんが、彼女の言葉が終わるより先に、答えを言い当てた。
まるで心を読まれたかのようなその返答に、ソフィーはひどく恥ずかしくなったが、あいにく今は腰をメジャーで測られている真っ最中であり、逃げ出すこともかなわない。
お婆ちゃんは、測り終えたメジャーをきゅっと締め上げると、ストレートに問い詰めた。
「あんた、大佐のことが好きなんだね?」
「ちがっ、誤解です」ソフィーは慌てて、囁くように否定した。「私とあの人は、ただの……友達です」
「ただの友達の服を、毎日着て寝るもんかねえ?」お婆ちゃんが、さらにメジャーを締め上げてくる。
ソフィーは、そのお婆ちゃんの目を必死で避けていたが、ついに降参して、観念した。
「すこしだけ、その……好き。でも、彼が私のことも好きかは、わからないんです」
「なんだい、好きならそれでいいじゃないか。なに、こういうことなら私には経験がある。何か困ったことがあったら、いつでもお聞き。今はまず、自然にしてな。必要になったら、とっておきの秘策を教えてあげるからね」
「秘策!?」ソフィーはお婆ちゃんの両手をぐっと掴み、その大きな目をさらに見開いて尋ねた。
「当たり前だろう。なんせ爺ちゃんなんかも、若い頃は私の秘策の前にイチコロだったんだからね。でも、まだ焦るんじゃないよ。頃合いを見て、ちゃんと教えてあげるからね」
ソフィーはこくりと頷いた。自然と口元が、ほころんでしまう。
お婆ちゃんが採寸を終え、ソフィーに「もう行っていいよ」と示してから補足した。
「そうそう、冬の間は寒いからね、台所だけがストーブの火で家の中で一番暖かいんだ。あんたとジャッキーが、なるべく台所仕事を手伝うように、こっちでうまく段取ってあげるからね」
ソフィーはお婆ちゃんに礼を言って、その場を離れた。
(……秘策? 一体、どんな秘策を使えば、大佐が私の「あなた」になってくれるんだろう?)




