第4話 返信はどのように
碧はスマホの画面を睨みつけながら、どうするべきかと悩んでいた。
「なーにそんな難しい顔をして見てるんだ?」
スマホの画面から視線を上に向けると、丁度、肩から背負っていたリュックを下ろした海斗が立っていた。
「なんだ、お前か」
「なんだとは失礼だな」
よっこいせ、と椅子を出して碧の方を向きながら座る。
「おはよう」
「おはようさん、で、なんでそんなに睨みつけてんだ?」
海斗は、手に持っていたスマホの方を指差す。
「あ、ああ……。その……何といえばいいのか……」
頭を掻きながら、どう説明しようかと考える。
その原因をどうすれば正解なのか、自分でも理解が追いつかない。
「例えばなんだが、漫画でよく見る場面で女の子からメッセージが届いたら、男はどう返せばいいのか?」
「メッセージ? で、内容は?」
海斗はニヤニヤとしながら右肘をつき、顎を掌の上にのせる。
「そのニヤニヤやめろ。『これからもよろしくね』と来たらどうすればいい?」
「さぁ、どうすればいいんだろうな」
「お前、面白がっているだろ」
「んや、真面目の真面目。大真面目だよ」
「本当かぁ?」
目の前で適当な返事を返し、未だにニヤついている海斗を見て、碧は、本当に相談乗る気あるのかと、不服そうにため息を漏らした。
大体、送ってきた本人がこの場にいないのもあるが、送ってきた人物が、と思うと返答するのにも緊張するものである。
「で、返事をするなら『よろしく』の四文字でいいんじゃないのか? そもそも、碧って女子と話している姿っていろはだけだもんな。まぁ、あいつは良くも悪くも人当たりがいいからお前からして、女子とは思わんかもしれないけど」
「誰が女子じゃないって?」
と、またもや海斗の後ろにいろはがいて、両手で海斗の頭をぐりぐりとする。
「いたっ! いろは、やめろ! 頭が割れる!」
何と言えばよいのか、毎度毎度絶妙なタイミングで海斗が失言すると、いつも通りにその近くにいるいろはがいる。
もう少し自分の彼女に対して、言葉を選べばいいのにと思う碧だが、こうして見ると二人の関係性はこうやって作られたのだろうと思う。
チャラい海斗と能天気ないろは、口では言わないが、彼女のスタイルに関しては男としては羨ましいとかそういうのは置いておいて、異性にあんなに密着するのはいかがなものだろうか。それもクラスメイトがいる教室内でもお構いなしである。
「じゃあ、後で二人仲良くよーく話し合おうか」
笑顔で言ういろはに「はーい」と答える海斗。
どうやらこれだけでお説教は終わらないらしい。
「で、碧は何を相談していたの?」
ケロッとした表情で何事もなかったかのようにナチュラルに聞くいろはは、碧のスマホ画面を覗き込む。
あ、やばいと思った碧は、すぐさまスマホの画面を消し、いろはから視線を逸らす。
「……」
「……」
バレてないよな、と内心ドキドキしながらいろはの方を振り向く。
すると、ニンマリと面白そうな何か企んでいる顔をしながら、先程の海斗と同じく笑みを浮かべている。
それを見て、面倒だと思った碧は、これから彼女にからかわれるのは絶対だと覚悟した。
「ねぇ、碧」
「な、なんだよ……」
微妙な空気が流れ込む。
「それ、ただ、挨拶を返せばいいんじゃない? その人、おそらく待っているよ」
と、意外な反応が返ってきた。
「あ、え、そ、そうか?」
予想もしていなかったことが起きたので酷く動揺してしまう碧は、バレてないよなと改めていろはの顔色を窺う。
「そ・れ・と」
いろはは碧の耳元に近づいて、手で口を隠してささやく。
「女の子の返事は早めにした方がいいよ。ずっと待たせると印象悪くなるから既読をつけているならお早目にね。がんばれ」
碧から離れると、ふふふとほほ笑む。
ああ、こいつ、分かっていて今、楽しんでいるなと碧は、いろはのその表情から読み取って、改めて不覚だったこと悔やむ。
いろはの動体視力をさっき気づいて、人にばらすなよと表情で圧を押して、いろはに向ける。
すると、いろはから分かっているって、という満面な笑みが返って来る。
「え? 今、話についていけていないの俺だけ?」
海斗は、二人の無言な会話から一体何を話しているのだろうと首を傾げた。
さて、とりあえず返事でもするか、と後ほどスマホの画面を開いて、返事を返したのは言うまででもない。




