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吹奏万華鏡   作者: 幻創奏創造団
近付くふたり ホール練習編
343/351

第58楽章 ホール練習スタート

華高祭の翌日。ホール練習が、去年のように始まった。まずはトラックからの楽器下ろしだ。

「……まず、これから持って行ってね」

氷空と心音が、楽器を部員へと流す。

「はーいって、重い!」

那珠葉がそう言ってうめくと、美乃禀がやってきた。

「なず!無理しないで!」

「あ、みのりん!ありがとぉ!」

「大体、ドラムの本体をひとりで持ってくなんて!背伸びが過ぎるよ〜」

美乃禀が苦笑気味に言う。

「う、うう…、悪かったな」

「まぁまぁ、その向上心はすごくいいし、持ってこ」

「うん」

那珠葉と美乃禀は、同じ天龍の関係だ。普段から那珠葉は少し、危なっかしいので、美乃禀が面倒を見ている。


 優月もまた、機材を持ち上げようとしていた。

「……んぎぃいい!」

「優月先輩?」

あまりにも重いので苦戦していると、瑠璃がこちらへやってきた。

「あ、瑠璃ちゃん」

「ギターのアンプ……。重いよね」

瑠璃が心配そうに両手を広げる。しかし優月は、首を横に振った。

「瑠璃ちゃんは他の子の手伝いしてきて……」

「え、大丈夫なの?」

「……んまぁ、何とかするよ」

(瑠璃ちゃんじゃ、絶対持てないし)

事実、瑠璃は重いもの運びには向いていなかった。


 今度は瑠璃と入れ違いに、美乃禀がやってきた。

「はい!最近、大太鼓をはじめました巌城美乃禀、ただいま参上!」

「そ、それは頼もしい……」

すると美乃禀は、ひとりで持ったのだ。握力が半端ない。

「優月くんは他のもの、運んでいいよ!私にお任せを」

「えっと、美乃禀ちゃん、ありがと……」

美乃禀は頼もしい。

 そもそも、孔愛や日心たち天龍組は、かなり楽器運びに貢献していた。


「國井先輩!そのスピーカーふたりで持ちましょう!」

「え?いいの?」

東雲抹茶も、孔愛とスピーカーを運ぶ。小物を運ぶ紅愛や美心乃たちも含めた1年生は優秀で、すぐに楽器の下ろしが完了した。



 広一朗は、荷降ろしを終えた彼らに、即座に指示を飛ばしていた。

「はお!打楽器は打楽器組み立てて!管楽器隊は今からスピーカーとかの準備します」

「せんせー!ギターは打楽器に入りますか?」

「どちらでも構いません!打楽器を手伝ってあげてください」

「そんな、『バナナはおやつに入りますか?』みたいに言われても……」

ゆながツッコミを入れると、部員たちが笑う。



 優月は、後ろで指示を聞く瑠璃を見つめる。

(……瑠璃ちゃん)

瑠璃は真剣に、広一朗の話しを聞いていた。

(瑠璃ちゃんは、僕のこと、どう思ってるんだろう)

少し余裕ができてしまった瞬間、優月は思い出してしまう。あの優愛との会話を。


『……瑠璃ちゃんのことが、好き』


華高祭。朱雀美玖音たちの運営するかき氷店の前、そこは人で混雑していた。

『……がち?』

『うん!』

そこで、優月は『古叢井瑠璃が好き』だと打ち明けた。優愛に隠れて気付けなかった。瑠璃の本当の魅力を今さら知れた。

 それを聞いて、優愛はてっきり激怒するかと思った。妹のように大切な存在を、幼馴染みが踏み越える。それは本来あり得ないと考えていたからだ。


……それでも、優愛は笑ってくれた。

『ふふっ、瑠璃ちゃんは良い子だもんね』

こう言って肯定してくれた。

優月は、瑠璃に恋愛することに消えた。だが、今度はもう逃げない。瑠璃と未来へ向き合う。


「……優月先輩」

 その時、瑠璃がこちらを見てきた。相変わらず、いや好きと分かった瞬間、いつもの可愛らしい顔も、何だか泡沫のように消えそうな美しさを、秘めているようにも感じた。

「……瑠璃ちゃん、どうしたの?」

「えっと、スプラッシュシンバルのスタンドなんだけどね、どっちがどっちって決まってる?」

「えっ、ああー!決まってるよ」

優月はそう言って、毛布に仰向けになるスタンドを手に取る。小さなスタンドと、細くも長い鉄の棒。

「この小さいのが、少し大きなシンバルを付けるので、細長いのが、小さな高い音のするシンバルを付けるんだよ」

「へぇーっ!優月先輩、すごく詳しいね」

「まぁ、3年目だからね。瑠璃ちゃんも……ちょっとずつ覚えたらいいよ」

本来、瑠璃に掛けるべき言葉ではなかっただろう。それでも、好きな人相手だと、どうやっても口調が柔らかくなってしまうのだ。

……絶対に嫌われたくないから。


「……優月先輩、お顔赤いよ?」

その時、瑠璃がちょこんと首を傾ける。可愛らしい双眸が、今、優月にだけ向けられている。

「う……ううん。そう?」

「うん。お熱?」

瑠璃が問うと、優月は目を細めて答える。 

「そ……それは無いと思うよ」

実際、瑠璃が"可愛すぎて赤面してしまっている"だけなのだが、瑠璃は熱を出していると思い込んでいるようだ。その純粋さが、本当に愛おしいと思った。

「……そう?」

瑠璃が何か、言おうとした時だった。


「……優月くーん」

「瑠璃、大丈夫?って井土先生が………」

月に叢雲花に風。巌城(いわき)美乃禀(みのり)月館(つきだて)紅愛(くれあ)がふたりへ駆け寄る。

「え、あ、大丈夫!」

「私も!ちょっと……分かんないことがあって」

すると紅愛は、優月の瞳の奥を刺すように見る。

「…………」

「はい?」

しばらくの沈黙の直後、紅愛はにやりと笑う。

(小倉先輩、ようやくね)


 その一方で、美乃禀は突然、打楽器の組み立てを手伝い出した。

「……ああーっ、打楽器ってこんな感じなんだね。私、和太鼓しかやってなかったから知らなかった」

彼女は、得意の力と対応力で、難なく組み立てていく。優月は頼りになるな、と後輩を見て感心する。


「ちょっと!ゆゆ〜〜〜!!なに後輩にやらせてるのォ?」 

 その時、マイクテストをしていた広一朗が、優月を呼びかけた。

「うあ!?すみません!」

『あはははははっ!!!!』

刹那、笑い声がホールへと響く。その笑いの先は、優月ただ1人だった。


「馬鹿なのか、ゆゆは」

心音が訝しげに言う。

「馬鹿なのか…って、馬鹿ではないのでは?」

抹茶はそう言って、優月を見つめる。抹茶は優月を笑わなかった。



 その優月は、しどろもどろから抜け出し、美乃禀へと礼を言う。

「み、美乃禀ちゃん!ごめん!ありがとう!」

「ううん。あ、優月くん、私からいっこお願いあって」

「んっ?」

すると美乃禀は予想外のことを言い出した。

「私、ドラムやってみたい」 

「………任せて」

優月は、美乃禀の願いを呑むことにした。


 その時だった。

東藤(とうとう)吹部(すいぶ)の皆さん、こんにちは」

「こんにちは」

「……えっ!?」

周防奏音と母、周防結愛と共に現れた人物に、優月たちの目が見開かれた。

「茉莉沙先輩……あと、周防先輩に、朝日奈先輩と河又先輩!!」

それは、去年部長だった明作(めいさか)茉莉沙(まりさ)、低音楽器コンビの朝日奈(あさひな)向太郎(こうたろう)河又(かわまた)悠良之介(ゆらのすけ)、そして結愛の娘の周防(すおう)奏音(かのん)だった。


「……それでは、OB・OGに挨拶します!」

広一朗が言うと、颯佚が「挨拶します!」と言って、全員を対面させる。

「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

『よろしくお願いします!!』

挨拶されたOB・OGは、にこやかに笑う。


こうして……ホール練習は始まる。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

 読んでくださったみなさんの、アドバイスや感想は大きなモチベーションになります!総合ポイント100point 目指しております!

 良ければ、リアクション、ブックマーク、感想、評価をお願いしたいです!

 吹奏万華鏡では、様々な吹奏楽の話しの他にも、音楽に関わるすべての物語を描いています。また音楽や人間関係だけではなく、恋愛や非日常、過去から背中を押す物語を展開しています。

 初心者も、これから吹奏楽を始める方も楽しめる物語を作ることが目標です。

 皆さんの応援や、ページビューがモチベーションです。これからも魅力的なストーリーを更新できるよう頑張ってまいります。

 次回もお楽しみに!


【次回】 明作茉莉沙と古叢井瑠璃……対決

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