一人ぽっちのクリスマス
この母の長い家出の時の私の異変には担任も気づいていた。放課後教室に残るように言われ、2人っきりになった時、先生から「何かあった?」と聞かれ「いいえ」と私は簡単に答え「ならいんだけど、気をつけて帰りなさい」「はい」と誰もいない廊下を歩きながら(母が家を出まして)なんて言えない。と思った。まぁこうして心配してくれた、いい先生でもあったし「なんだそれ」と納得いかない事もあった。クリスマスについての作文の宿題がでた。それぞれ家によってのクリスマスの過ごし方を作文にするものだった。私は習字は入選くらいはしていたが、作文は苦手だった。しかし先生から出来がいいから県のコンクール用の用紙に書き直すように言われ、放課後教室に残り書いた。教室には学年で一番頭のいい男の子と女の子がいて、プラスこんな私がいるのだ。(これってすごい事じゃん)と照れながら頑張ってきれいな字で書いた。すると何日かして担任から「あなたの作文はクリスマスらしくないからコンクールに提出できない」と、言われた。だって今回は前に書いた作文をコンクール用の用紙に書き換えただけなのに、作文は前に先生も読んだはずなのに今さら何で?と思った。ショックだった。クリスマスらしくないって、だってこれが私のクリスマスだもん。題名も「一人ぽっちのクリスマス」だし、らしいって何よお父さんやお母さんが「メリークリスマス」と言って兄弟達がクラッカー鳴らして?それができる家ばかりじゃないでしょう?悪い?自分で飾ったツリーに茶の間のテーブルの上にはホールケーキと鶏の手羽先、持ち手の所はアルミホイルを巻いた物しかなく父も客の送迎で家にいない。一人ろうそくに火をつけて、一人消して。これが本当だもん。ひと学年に2人しか出展できないのなら、最初から私を入れなければいいのに。と、かなり悔しい思いをしたぶんこの先生には嫌な感情もあった。一人ぽっちのクリスマスの時も毎年恒例のプレゼントはお菓子の入ったサンタの赤いブーツだ。お菓子を全部出してみた。足を突っ込むと履けた。「わぁー履ける!」と片足だけ履いて家の中をヒョコヒョコと歩いた。よし来年は二個買ってもらって両足履いて外に出よう、と思った。次の年母に二個買うように頼んだのだが、忘れられ、一個だった。次の年は自分で買う事にした。お店に行って吟味して買った。帰ってすぐお菓子をだしてみたらまさかの足の甲までなく、筒状になっているだけだった。足首から甲の部分が空洞でなく詰まっていた。「クソー来年こそはよく見て買うぞ!」そして次の年よくよく見て買った。足の甲の部分も空洞だ、足を突っ込めるやっと確認して買って、帰ってお菓子を全部抜いて足を入れてみた。私は三年前より大きくなっていた。ブーツに足が入らないのだ。「クソー自分が大きくなっていたとは想定外だ!」でも悔しいので無理やり足をつっこんで家の中を歩いた。三年前はブーツはふくらはぎの所だったのに、今は足首どまり。おまけに、足だけ小さいから体とのバランスが悪い。こうして私のくだらないイベントは終了した。私は本当にくだらない事をよくしていた。ある日ミカンを箱買いしていたが、なんせ3人家族すぐ腐れる、少し主婦をしていた私はもったいないと思いミカンの筋をきれいにとり顆粒出しと醤油でミカンを煮てとき玉子を落としスープを作った。自分が食べるのは勇気がいるので隣のおばあさんに食べさせたら「うまい、うまい」と食べてくれた。ある夏はスイカが残っていたので、きれいに種をとり、ミキサーにかけて飲んでみたが、何かもの足りない。三ツ矢サイダーを入れてふたをしてミキサーにかけた、スイッチを入れたとたんミキサーのふたとスイカが台所の天井に巻き散らかされた。炭酸を入れたミキサーは危険だ。私ひとつ大人になった。とりあえず親がいなかったので、私は好きな事をしていた。時にはまった一人遊びがあった。ある夜知らない夫婦が家に来た。女の子と。女の子はお腹が空いたと言って、母がラーメンを作った。女の子は私より少し年下だった。その子が「面白い事してあげようか」とラーメンを一本ツルツルとすすった、ラーメンはすべて飲み込むのではなく、途中で止める、そして口の外にある麺を箸で引っ張ると喉の奥まで入っていた麺がするする出て来た。面白そう!次の日からやってみた。麺を取り出すとき喉がくすぐったいのが余計面白かった。この食べ方は当分はまっていた。




