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酒場の親父は転生者  作者: 乱世の奸雄
酒場の親父は転生者 第二巻
39/51

<エピローグ>とある秘密の復活事情

 それはふと、目覚めを迎えた。

 しかしそれは、本来有り得ない事であるはずだった。

 なぜならそれにとって、睡眠という行為自体が必要あらざる、言わば無用の長物であったからだ。

 しかしそれは、確かに目覚めというべき状態にあった。停止していた活動を再開し、周囲を知覚し、自己認識をはじめとする意識的活動を自分の意志の制御下において実行する。睡眠という行為が、それらを無意識に委ねる行為とするならば、今起きている現象こそ、睡眠からの目覚めというべき事象である。

 それが目覚めたのは、どうやら他者の視線を感じたためらしかった。

 だからそれは、目覚めを自覚してすぐに視線の主を確認しようとした。なぜか確認しなければならないと、強く感じているらしかった。

 暗い眼窩に青白い光がともり、周囲を圧する膨大な魔力が抑えきれないように辺りに溢れ出す。

 それは立派な作りの天蓋付の寝台に臥し、寝台の周囲は薄絹に覆われていたのだが、流れ出た魔力の奔流に大きく煽られて外側に大きくはためき、覆い隠されていた寝台の内側を露わにする。

 そこに臥したそれの姿を、一言で表現するならば“骸骨”という事になる。

 それは音も無く、重力そのものを無視したかのような動きで、上半身をベッドの上に起こした。

 それから不思議そうに頭蓋骨を左右に振り、それからコテンと擬音が付きそうな動きで首をかしげると、右手を頬骨に添え、しばらくの間何かを考え込んでいるかのように静止した。

 その眼窩にともる青白い光は当初より幾分か和らいでいて、細かな明滅や微細な動きに意思の揺らめきを感じることができる。

 それの動作は女性的かつコミカルで、見る者にほのぼのとした印象を抱かせるところがあり、その外見から得られる印象を裏切っている。

 “骸骨”としての外見ではあるが、全身の骨は表面をエナメルで覆ったように輝いており、全身が非常に均整のとれた形をしているため、醜悪さは感じられない。

 それどころか、あふれ出る魔力の光も、眼窩にともした青白い光も、その“骸骨”である姿さえ清浄な光を宿しているように感じられ、見る者が見ればその特異さに目を見張っただろう。

 やがてそれはゆっくりと寝台を下り、音も重力も感じさせない動きで立ち上がった。

 そのままスッと左手を上に掲げると、何処からともなく多くの銀環が付いた美しい錫杖が出現し、そのままその手に掴み取られる。それを手にしたまま数歩前進し、部屋の中にある開けた場所へ移動する。

 カッシャラーン

 錫杖を床に打ち付ける音に続いて、銀環同士が擦れ合う美しい音が響き渡る。

 それと同時に、周囲に満ちた魔力のすべてが力を受けて反応し、一斉に喚起した気配がする。

“骸骨”の姿をしたそれは、ゆっくりと錫杖を眼前に両手で捧げ持ち、クルクルと廻し始めると同時に、自身も舞い踊るかの様に廻り始める。

その動きに巻き込まれるかのように周囲から魔力が集まり、まるで体に巻きつくかのように密度を増して行く。

それは瞬く間に“骸骨”の姿を覆い、白い光を放ち始めた。

大きな球状になるほど膨れ上がった光の塊は、やがて収束して“骸骨”の表面を覆い人の形を成していく。

指し延ばされた指は細く美しく洗練され、腕から肩にかけてたおやかな曲線がつづく。光に包まれ、いつの間にか地面から浮き上がった足の指先にも、整った爪と柔らかな皮膚が形成されていく。

細い足首から緩やかな脹脛ふくらはぎにかけて伸びやかな肉体が形成され、太さと細さの中間点を限界まで極め、肉感的に感じるのに太くは感じない太股へと達し、それから絶妙なプロポーションを描いて、下半身から上半身にかけての肉体を形成していく。

背後から、歩く姿を眺めていたくなるような魅力的なヒップ、キュッと引き締まってくびれたウエスト、そして存在感を主張したっぷりのボリュームを誇るが、決して形の崩れていないバスト、全てが完璧に整い優美な女性の体を光の中に浮かび上がらせる。

光の収束は頭部に及び、小さくバランスのとれた頭蓋骨の上に、最高の名工たちが粋を集めても到達し得ない秀麗な美貌を形成する。それから光がザッと流れ落ちるようにして広がり、その光がそのまま髪となったような美しく光沢を放つゴールデンブロンドの髪が生え揃った。

それを機に、残った光は弾けるようにして霧散し、浮かんでいた中空から優美に地面へ降り立つ。そこにいたのは、“骸骨”であった元の姿からは想像もつかない、美しい人の姿をした存在だった。

 それは地面に降り立つと同時に、ゆっくりと瞼を開く。ポッカリと空いた眼窩があったそこには、透き通る青空のような色をした瞳が出現し、そこだけは変わらないかのように意思の光を宿して煌めいている。

 いつの間にか錫杖は消え去っており、ゆっくりと右腕を前に掲げると左手で感触を確認するように上の方へと滑らせていく。

 時折肉付きを確認するようにつまんだり、肌のなめらかさを確認するように撫でたりしながら、反対の腕も同じようにして確認する。特に二の腕の裏側は何度もつまみながら確認し、納得したかのように頷いている。

 それから両手で自分の胸を持ち上げるようにして下からもみ上げ、弾力を確認するかのように手を離して降ろし、形を確認するかのように彼方此方と動かしている。

 その後もボディチェックは全身に及び、かなり長い時間を掛けてから満足したように、笑顔を浮かべて頷いた。

 それから壁際に目立たぬように配置されたタンスの前に移動し、純白を基調としながら、要所にパープルの生糸でワンポイントやラインの入ったお洒落な下着を、上下揃って選び出しゆっくりと身につける。

 下着とお揃いのガーターストッキングにロングのストッキングを履き、美しい姿態を晒している。特に美しい胸は、ハーフカップのブラに支えられて美しい谷間を作り出し、健康な男なら誰もが鼻の下を大きく伸ばしてしまうに違いなかった。

 それから純白のワンピースを着て、ベールのついた装飾の美しい銀色の冠を被った。その見かけは、完全に神官のそれである。

 それから彼女は、再び錫杖をどこからか呼び出し、それを手にすると複雑な詠唱と印を結び、幾つかの呪文を次々と唱えた。その結果に満足したのかニッコリと微笑むと、再び呪文の詠唱を開始し、完成と共に忽然と姿を消したのだった。


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