とある死闘の開始事情
俺の特技は、寝付きの良さである。
寝ようと思って横になり、目をつぶった後のことは殆ど記憶に残っていないぐらい早い。
そして時間になると、充電が完了したかのように唐突に目が覚める。起きたときには、夢さえ記憶に残らないほどの唐突さである。
そんな俺が目覚めたのは、夜明けの一時間ほど前で、起きていたのはボルクとギリドの二人だけだった。
「おはよう、寝過ぎたかな交代するよ」
「おはようございます。俺もさっき変わったばかりですよ」
寝ているメンバーを起こさないように、小声で挨拶を交わす。さすがに冒険者達はこんな状況でも寝られているようだ。
「ふん、グースカ寝おって、緊張感が無いな」
ギリドが若干呆れた顔をしつつ、小声で皮肉ってくる。
「寝付きの良さは、俺の“沢山”ある特技の内の一つですからね」
俺は堂々と嘯く。実施には大した特技なんて無いが、はぐらかしておけば実際の処なんて解らない。
「ふん、昨日みたいにおたおたされるよりはよいがな」
「まあ、もう平気です。タップリ眺めて慣れましたから。それより、奴らはどうして襲ってこないんでしょうね? 持久戦でも狙っているんでしょうか?」
「さあな・・・・・・。こんな処に出没している事も含めて、謎が多いのは確かだ。迷宮では大抵が何処からか召喚されてくるか、迷宮で死んだ冒険者が、邪悪な影響を受けて蘇る場合が殆どだからな。それに、出会えば粉砕するだけの敵だ、深く考えたことも無かったな」
ギリドは、昔の記憶を探るように話してくれる。
「ちなみにワイトと戦ったことはあるんですか?」
「無いな。そもそも、上級怪物なんぞ滅多に出会える代物ではない。ミノタウロス、トロール、オーガー、ラミアこんな処かの。一体だけならパーティでかかれば問題無く戦えるじゃろうが、今回の場合こちらの方が人数的には不利だからな。いかに早期に数を削れるかが重要になってくる」
「実戦経験が無いのでどのくらい通用するか解りませんが、俺の方でもなるべく数を減らすよう、動いてみます」
「余り無茶はするなよ。特にワイトへの手出しは数を減らしてからだ、敵の数が多い内は大人しくして貰っておいた方が良いからの」
「わかりました」
ギリドとの会話を終え、俺は今の内に偵察を済ませておこうと思い立ち、『からくり箱』から『千里眼の水晶』を取り出して、前日と同じように膝の上に置いて発動させると、視点を上空へと移動させた。
『千里眼』を使った特殊な視野で無ければ、周囲の景色を含めて暗闇に沈んでいるのであろうが、生憎と不死者の一体一体まで隈無く確認出来るだけの視界が得られている。ワイトも、まるで全身を彫像と化したかのように微動だにせず、昨日と同じ場所に立っている。
(どうして積極的に襲ってこないんだろうか? 奴らの行動原理なんて考えても無駄なのか? 奴には目的意識なんて無いのだろうか・・・・・・)
彫像の如く立ったまま、微動だにしないワイトの立ち姿を見ていると、人を襲う事が目的と言うよりも、何か目的があってこの場所を占拠しているのでは無いかと思えてくるのだが、その何かが解らなければ対処の仕様も無かった。
(その何かが解らない限り対処法も無いし、生き残るためには戦って勝つしかない)
俺は先の困難に思い至り、大きく溜息をついた。
重くなる気分を変えようと、周囲の景色を見渡す。東の方角にある空が明るくなり始めていて、夜明けが近づいているのが確認出来る。空の雲も昨日とはうって変わって晴れ渡り、夜明けの光が空から星を駆逐しつつあった。
(いっそのこと、吸血鬼みたいに朝日で灰にならないものかな?)
そんな馬鹿なことを考えてしまうが、不死者にそんな弱点は無いと昨日雑談する中で否定されている。
(だがまあ、死ぬ訳にはいかないし、誰も死なせたくは無い。全力で戦うしかないな)
俺は、この星の稜線から顔を覗かせ始めた朝日が纏う一筋の光を見ながら心に誓うと、目を見開いて『千里眼』を解いた。
「どうだった?」
俺が『千里眼』を解いたのを見て取って、ギリドが外の様子を確認してくる。
「昨日と殆ど状況は変わっていないようです。積極的にこちらを襲ってくるつもりは無いようですが、逃がすつもりも無いのかも知れませんね。長期戦になれば食糧が尽きて、こちらが不利になるのをまるで見越しているかのようです」
「それ程知性を残しておるとは考えたくないが、用心してかかるとしよう」
俺たちが話していたせいなのか、メンバーも次々に目を覚まし、軽い柔軟をこなしたりして体をほぐし始めている。いよいよ戦闘が近づいて来て、言いようのない緊張感に包まれる。
ギリドが全員を呼び集め、作戦が告げられる。冒険者パーティのボルグも、自然と戦闘経験豊かなギリドにこの役目を譲っている。ギリドがこの場で最も戦闘経験があり、少しでも生存確率を上げるためには、その判断に従うことが最良だと認めているのだろう。
「これだけの大群だ、厄介な上級怪物もおることだし、一度の攻撃で全てを倒しきるのは難しいだろう。そこでまず、第一の目標は馬車の上の食料を確保することだ。ウート食料はどのくらい乗っている?」
「約二日分ですね、節約してですが」
ギリドの質問に、俺は即座に答える。
「無いよりはましだな。まず、外に出たら儂とボルグで玄関の正面を確保する。その間にベッシュ、レオーレ、ゲラドで馬車の上の食料を確保し村長宅に運び込め。それが完了したところで、余力があるようなら出来るだけ戦闘を行って敵の数を減らす。イレギュラーな事態や、負傷者が出た場合は速やかに撤退する。戦闘時間が長期にわたる場合も、事前に撤退の合図を出すからお互いにフォローし合って敵から距離を取れ。これを複数回繰り返して敵の数を減らすのが最初の目標だ」
全員が了解の合図に、首を縦に振る。
「敵の数が減って、ワイトが出てきたら序盤は儂が相手をする。他に敵が居る場合は、そいつらの排除を優先して行う。ワイトとの戦闘に加わるのは、奴が最後の一体になってからでいい。奴と戦うときは、無理をせずに戦うよう心がけろ。無理をすればあっさりと死ぬぞ」
ギリドは全員に言い聞かせるように各自の目を見て、理解を促す。俺たちは年長者の意見に素直に耳を傾け、理解を示すために頷きを返した。
「では行くぞ」
ギリドのかけ声で、俺たちは作戦を開始した。
最初に取りかかったのは、正面玄関に施したバリケードの撤去である。
但し、バリケードを撤去した直後に敵に踏み込まれては意味が無い。その為、先ずは俺が魔法で扉を『施錠』し、音を立てないように慎重にバリケードを撤去する。
その後、偵察関係のスキルを持つレオーレが、扉の外の状況を確認する。
「玄関のすぐそこに一体、十時の方向二メートルに一体、一時の方向三メートルに一体です」
ギリドが頷いたのを見て、俺は扉の鍵を解錠する。
「『解錠』!」
解錠と同時に、ギリドが扉を引き同時に巨大な盾を構えたボルクが飛び出した!
ドガッ!!!
一番近くに居たゾンビを、ボルグは盾ごと体をぶつけるようにぶち当たって吹き飛ばした。飛ばされたゾンビは二メートル以上吹き飛んで、近くに居た別の一体を巻き込んで倒れ込む。その後にギリドが続き、別の一体を武器代わりの鋼鉄製の棒を振るって叩きつぶした。軽く振るったように見えた一撃は、ゾンビの上半身を吹き飛ばすほどの威力である。
ボルクも倒れ込んだゾンビにショートソードで追撃を加え、ダメージを与えている。その間に、ベッシュ達三人が荷台に向かうが、荷台の影から二体のゾンビが現れて行く先を塞ぎ、三人は足を止めた。
「ハァァァ、セィ!」
真っ先に動いたのはレオーレである。
両手に持ったダガーで、二体のゾンビの間をすり抜けながら切りつける。ダメージはそれ程無いが、ゾンビがレオーレに気を取られた瞬間、ベッシュの槍が一体の胸に突き刺さり、もう一体は頭の天辺からゲラドの戦斧に切り裂かれた。
二人はそのままゾンビを攻撃して倒しきり、レオーレの後を追って壊れた荷台に向かうと、傾いたままの荷台から食料の詰め込まれた木箱を降ろして、それぞれ肩に担いだ。
レオーレは、その間、辺りを警戒していたが、二人に続いて荷台から水の入った革袋を二つ持ち出すと、三人は急ぎながらこちらに戻ってくる。
三人とも荷物のせいで動きが鈍くなっているし、得物は持っているものの十分に振るうことは難しい状態だ。
その頃には、広場を埋め尽くす不死者の一部が、一斉にこちらに向けて動き出しており、そのうちの三体が、荷物を運ぶ三人と玄関との間を塞ぐような位置に割り込む進路で進んでいた。
(倒さなくて良い、先頭の数体に当てて動きが鈍れば良い)
俺は『複写』して増やそうとしていた『魔法の矢』の内から三発を発動させ、進路に割り込もうとしていたゾンビ三体の頭部にミサイルをイメージして炸裂させた。
俺が狙ったのは、衝撃を与えることで転倒させ、足止めを計ることである。だから衝撃力を重視して、強い爆発が起こる様にイメージして使用したのだが、それは思わぬ威力を発揮し、命中した『魔法の矢』は一発でゾンビの頭部を消し飛ばしてしまった。
頭部が消し飛んだゾンビは後ろに倒れ込み、そのおかげでゾンビの移動経路が大きく乱れ、三人が無事にすり抜ける時間を稼ぐことが出来た。
そして俺は、初めての実戦での魔法使用に、言いしれぬ高揚感を憶えていた。
奴らの姿には、今でもおぞましさと恐怖を感じているが、対抗手段を持っているという安心感を得たことは大きかった。
しかも、思ったより敵が弱いのか、一発で一体を破壊できるようだ。もしかしたら頭部を完全に破壊出来ているからかも知れない。ゲームで言う“ヘッドショット”みたなものだろうか、俺はゲラド達が戻ってくるまでの時間を稼ぐために、さらに二体のゾンビを攻撃し、“ヘッドショット”を決めて打ち倒した。
(なんか楽しくなって来たぜ。これはあれだ、オブザデッドなシューティングみたいなものだと考えればいいんだ)
俺は、ゲームのFPS等でゾンビと戦うタイトルがあったのを思い出していた。
目に見える現実は、あれよりはるかにリアルで、視覚、嗅覚、聴覚に第六感とも言うべき気配の感覚など、ゲームとは比べものにならないほど情報量が多い上に、懸かっているのは自分の命という失敗の許されないものだったりするため、受けるプレッシャーは比べものにならいのだが、押し寄せるゾンビ達を攻撃するという状況は酷似しており、武器は銃器の代わりに魔法であり、必中、高威力だから難易度は低いとすら思えるのであった。
さらに一体のゾンビを、景気よく“ヘッドショット”を決めて吹き飛ばして撃破したところで、食料を村長宅に運び込んだ三人が戻ってくる。そして、当初の打ち合わせ通り、ボルクの左にベッシュ、ギリドの右にゲラドが入り、対不死者防衛のための前線を構築する。
残りのメンバーであるレオーレは、構築した壁の内側に入り遊撃的なサポートに回り、アウグスティアはその横でメンバーの負傷に備える。俺は最後尾に陣取って、敵を撃破する固定砲台に努めることにしていた。
全員が揃ったところで、『魔力付与』『邪悪守護』『魔法の盾』を全員に使用する。
そうしている間にも、敵の包囲は狭まってきており、最前線に立つボルクとギリドの所では、交戦が始まっている。それぞれが、得意の攻撃手段で不死者を攻撃しており、特にギリドの前に近づいてきた敵は、恐ろしい程の威力を秘めた鋼鉄製の棒による打撃を受け、次の瞬間吹き飛ばされて爆ぜ飛んでいく。
(なんだあれ、どうやったらあんな力が身につくんだ?)
俺はそれを見ながらそんな感想を抱きつつも、せっせと『魔法の矢』を『複写』していた。
(一を二、二を四、四を八――)
『複写』したものを一つのグループとして纏めるように複写することで、発動待機状態となった『魔法の矢』の魔力フレームは、二倍ずつ増えていく。高速に数を増やすために生み出したテクニックである。二百五十六本分迄複写を続けて一旦止めた時には、発動待機状態の魔術フレームが視界の大半を埋め尽くすように展開されている。
(しまった、もっと上空に展開させるんだった・・・・・・)
俺がそう後悔したくなるほど、その数は圧倒的だ。とりあえず数を補充する手間も考えて、半分を使う事に決める。
「『魔法の矢』を打ちます。味方には当たりませんが、敵の動きが変わるかもしれません。用心して下さい」
俺はそう告げると、敵に狙いを定めていく。なるべく前線に影響を与えないように、後ろにいる敵から狙う事に決めた。
俺は右手を正面に掲げ、人差し指を伸ばし親指を立てると、右手を銃に見立て、左から右へ流れるようにして『魔法の矢』を発動し、撃ち込んでいった。
白色を濃くしたような魔法の光が、左から順に煌めく高速の飛翔体となって不死者達に降り注いで行く。
その光は、あやまたず敵の頭部付近に命中し、閃光と共に内に秘めた魔力エネルギーを開放し、まるでミサイルが命中し爆発するような様相を呈する。命中する度に不死者が面白いように弾け飛んでいく。
一撃で倒せない敵もいるようだが、深いダメージを負わない敵もいない。俺は半分の『魔法の矢』を打ち尽くすまで、何度も往復させて不死者を攻撃した。
「すごい・・・・・・」
斜め前に立つアウグスティアが、戦闘中にもかかわらず振り返って俺の方を見た。
俺は、自分が行った戦果を確認するように広場を見渡す。
慎重に狙いを避けたワイトと、ボルク達が構築した壁の周囲や、広場の所々にまばらに数体が残るのみで、今の攻撃と、ギリド達が倒した分も含めると、おおよそ九割以上の敵が倒されていた。全体で見ても残っているのは十体にも満たない数だ。
しかも、ワイトを除けば無傷な敵はほとんどいない。十分すぎる戦果だった。
(やっべ~、俺ってやっぱ最強なんじゃないか? こりゃもう“世界征服”でもするしかないな)
自分が実行した戦果を見渡して、思わず頬が緩みそうになる。初めて本格的に行使する魔法の力の絶大な威力を実感して、留めようのない高揚感に包まれている。この調子なら、ワイトを倒すのも楽勝だと思えた。
だから残るワイトを挑発的に睨み付けようとした、残る敵はお前だけだというようにだ。
その時である。
今まで微動だにしていなかったワイトが、両手剣に手をかけると、右手一本で持ち上げ、その切先を真直ぐ俺へと向け、そしてその姿勢のまま、突如凄まじい雄叫びを上げた。
「ギィアァァァァァァァァァァァァァィィィィィィィィィィィ」
雄叫びは大音量で鼓膜を打ち、途中から高音で聞き取れないような響きに転化する。
そのまま聞き続ければ、精神に異常を来たし兼ねないほどの、神経をやすりで逆なでされているような不快な音だ。この世のすべてを憎悪し、魂を凍てつかせる邪悪な音だった。
その雄叫びにより、俺たちの集中力が掻き乱されたのは間違いない。唐突に雄叫びが止んだ時、何処から現れたのか新たに三体の不死者が出現し、前線を形成するメンバーに襲い掛かるまで、それに気づけなかった。
「グールだ!」
ボルグが警告を発するように叫び、そのボルグに向かって新たに出現したグールが手に持つ鉾槍を振るう。かろうじてボルグは盾で受け止め、もう一体の小柄なグールが、その脇を通ってベッシュに襲い掛かる。
対応の遅れたベッシュが、槍の柄で辛うじてグールが手に持つ手斧の一撃を受け止めるが、向かってくる勢いを殺しきれずそのまま押し倒されて、上に圧し掛かられる。レオーレが咄嗟に短剣を振るって飛び掛かり、ベッシュに手斧を振るおうとしていたグールを飛びのかせる。
さらにもう一体がギリドを襲い、巨大な戦斧を打ち下ろした。
ガギャアァァァン!!!
金属を打ち合わせる音が響き渡り、当たった瞬間には派手な火花が飛び散る。簡単に打ち返すかに思われたギリドは、どこか精彩を欠くような素振りで、数歩後ろに下がってしまう。
それは、ギリドの力を信用していた俺達にとってはあり得ない事態で、思わずパーティー内に動揺が生まれる。
ワイトの動きはまるでその瞬間を知り、狙っていたかの如くであった。
めまぐるしく動く状況に気を取られ、殆どのメンバーがこの場で最も警戒すべき相手への注意を逸らしてしまったのだ。
今までその場から動こうとしていなかったはずのワイトは、いつの間にか中央の井戸よりこちら側に移動しており、両手剣を振りかぶる様にして、突っ込んでくる。真直ぐ、猛然と、俺の元へめがけてだ!!!
最後尾にいた俺だが、ギリドが下げられたことにより、ワイトが突っ込んでくるルートがぽっかりと出来上がっていた。
全員が意表を突かれたこと、グールに気を取られたこと、最も信頼していたギリドが下がってしまったこと、様々な悪条件が重なった結果であるが、ワイトの動きを見ればある程度狙ったのではないかと疑いたくなるほどの、迷いの無い突進であった。
この事態に唯一対処できるとするならば、それは俺であっただろう。俺はワイトに両手剣の切先を向けられた瞬間から、一瞬たりともワイトの動きから目を逸らしていない。
だからワイトが井戸の淵を蹴って飛び越え、猛然と突っ込んで来るのも見ていたし、周りの迎撃が間に合わない事にも気が付いていた。
だが、あまりにも衝撃的な出来事に、認識はしていても理解が追い付いてこない。
理解が追いついた時には、既に指呼の距離に迫られている。
すべては一瞬の出来事のようであり、しかし、スローモーションを見ているようでもあり、気が付いたときには、”死”が大きな顎を開けて目の前に現れた瞬間でもあった。
(ヤバイ!!!)
俺の命を刈り取るのに十分な距離から振りかぶられた両手剣を見たとき、恐怖を凌駕した危機感により全力の回避行動を取ろうとする。
俺はその瞬間、認識している全ての『魔法の矢』を、至近距離の相手に叩きつけた。
至近距離で炸裂した『魔法の矢』の衝撃は、俺自身をも吹き飛ばし、俺自身も軽くないダメージを負うことになるだろうが、それ以外の回避を試みる余裕は無かった。
俺の咄嗟の計算によれば、互いの間に発生した衝撃波によって、対象であるワイトも飛ばされるはずだった。それにより時間を稼ぎ、体制を整えるつもりだったのだ。
しかし、ワイトの力は俺の予想を大きく上回り、多少動きを留める程度の効果しか現さなかった。そして、万全の体勢を崩されながらも両手剣は俺へ向けて振り下ろされる。
咄嗟に左に顔を背け、切っ先を避けようとしたつもりだったが、こめかみから頬にかけて灼熱の痛みが走り、さらには胸付近にも同様の痛みが走る。
自分で起こした衝撃で飛ばされるまま、玄関から家の床に叩きつけられ、俺は衝撃と痛みで、意識を失った。




