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酒場の親父は転生者  作者: 乱世の奸雄
酒場の親父は転生者 第一巻
15/51

<間話> とある見合いの仲人事情

 『町会』と呼ばれる酒場『ジルとハンナ』の常連客達は、いつもの通り酒場に集まりながら、飲んだくれて――頭を抱えていた。

 原因は、彼らが最近目を掛けているとある男の奇行にあった。

 勿論、とある男とは、酒場の雇われ店員であるウートの事に他ならない。

 料理に対する斬新な発想、巧みな交渉力と調整力、生活や商売に関する様々な知識を持つこの男を、『町会』としては是非ともこの街に留め起きたい。そう考えていた。

 そのため、安定した職場を与え――偶然ではあったが――、生活環境の改善要求を満たし、所得の安定をハンナに促したりもしていた。

 しかし、結果的に受ける恩恵は『町会』の側が遙かに大きいというジレンマもある。

 引き留める役に立つどころか、借りばかりが増える結果になっており、ウートがその気になればいつでも街を出て行く事に躊躇ためらいを覚えないだろうと思われた。

 つまり、恩に着せる事でウートを留める事は出来そうに無いと、『町会』の一同は気づき始めていたのだ。

 そうなると他の手を考えるしか無いわけだが、そこで思いついたのが『お見合い』つまりは嫁探しである。

 ウートは見たところ安定志向が強く、根無し草というわけでは無い。事情があって、この街に移住してきただけのようなので、この街の女性と結婚してしまえば、否応なくこの街の住民として生きていくのでは無いだろうか?

 『町会』のメンバーはそのように考えて、各自で候補者探しを行った。

 その結果、新参者であるにもかかわらず、候補者捜しに苦労はしなかった。

 なんせ、この街でウートを知らない者はほぼいない。常に話題を提供する時の人で有り、巻き起こした様々な事件の結果、本人の知らないところでの評価は”知者”である。

 この意味を端的に説明すると、知識ある者、知恵ある者、その両方を兼ね備える者、となる。

 性格的にも比較的温和で明るく、欲深くはない。

 安定した職があり、『町会』の覚えもめでたく、将来性もあるとなれば本来独身である事がおかしいのだ。

 だから『町会』は候補者の中から、選りすぐってウートに接近させた。

 ウートの好みが解らないので、なるべく自然な出会いを演出しようとしたのだが、ことごくが失敗に終わった。

 何というか、本人が気づかないのだ。結構露骨な秋波を送ってみても、大胆な人だな。ぐらいの感想しか抱いていない。相手が自分に気があると、露ほども考えている様子が無い。

「あいつ、女に興味がね~のか?」

「いや、そんな事無いと思うんだが、この前試しに猥談わいだん仕掛けてみたら、嬉しそうに乗ってきたぞ? 全然行けるはずだが」

「そうなると、理想が高いってことか?」

「それも有るけど、その理想も結構幅広い感じだったな。年齢層も容姿も種族も職業すら全部いけるっぽい」

「節操ね~な! でもそれでなんでおちね~んだ?」

「遠回しなのはダメなんじゃないか? 結構真面目でしっかりしてるから、自分の今の立場じゃまだ早いと思ってるとか?」

「そうか、なら仕方ねえな。一番良さそうなの見繕って、場を設けようや」

「だな、どの娘にしようか?」

 そこからは、親父達による街娘の品定め会の様相を呈す。しかし、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が巻き起こり――単に好みの違いで分かれる――中々決まらず千日手の様相を呈していた時にその事件は起こった。

 ウートが全財産をはたいて、怪しげな箱を買い取ったあの事件である・・・・・・。

「だめだ、こっちは全部断られた」

「こっちもだ・・・・・・」

「ウート、あいつ独身者の自覚ねえのか!」

「あったらしないだろう、普通、あんなこと」

「まさか、あいつにあんな趣味があるとはな。未だに独身なのも頷けるよ・・・・・・」

「この手も駄目だな、別の手を考えよう」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」

 浪費は、古今東西最も嫌われる悪癖である。

 評価は一日にしてならず、悪評は一瞬で足りる。

 本人の知らぬところで”知者”は”愚者”となった。

 あの事件は本人の知らぬところで、全てのフラグをへし折っていたのである・・・・・・。 


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