第4話
おれは震えるメガネの女子を担ぎ上げて山小屋を目指した。
さきほどの写真を見てからは、オカルト研究会の男子メンバー2人を除いてはみんなの足取りが明らかに遅くなった。
今まで心霊体験をしたこともないおれも、あのおびただしい数の光の玉を見たときは全身の毛が総毛立つのをおぼえた。
おれは、黙々と歩く学生の中オカルト研究会のあの2人が小声で何かを話し合っているのは分かったが、何を話しているのかまでは分からなかった。
痩せている女性とはいえ山小屋までの30分担いで運ぶのはかなりの重労働だった。
なんとか山小屋に到着し、登山部が持ってきていた非常用の食料と山小屋に常備してある食料で簡単な食事をとるが、ほとんどの学生が食事に手を付けなかった。
登山部の部長が空元気を出して言う。
「みんなまだ明日下山があるんだ!少しでも食っておかないと体力が持たないぞ!」
そう言ってサバの缶詰を掻き込むようにして食べるものの、胃が受け付けないのかすぐに戻してしまう。
あの赤ん坊の手形のアザはいまだに消えることなくくっきりと残っている。
メガネの女子は毛布にくるまりながらもガタガタと震えていた。
その隣で黒髪の女子がなんどもなだめているが、メガネの女子は耳を両手でふさぎ目を見開き空中をただ見ている。耳をふさいでいるのは赤ん坊の泣き声が聞こえないようにしているのだろう。
このパニック状態の女性を担いで下山するのはとてもじゃないが無謀だと思い、山小屋に備え付けられている電話で救助を呼ぼうと思い受話器に耳を当てる...
するとザザザザザザザザザという雑音しか聞こえない。
確かこの電話機は一か月前に点検した時は通じたはずだった。
「だめだ、電話が通じない。だれか、ケータイが通じるかみてくれないか?」
各自リュックやポケットのケータイ、スマホを取りだすが当然のごとく圏外だった。
「こうなったら自力で下山するしかない」
だれも返事をせず、深い疲労だけが山小屋に充満した。
寝袋と毛布とがなんとか全員分あったので各自包まりながら夜を明かす。
しかし、極度の疲労と絶望感からかほとんど眠ることができなかった。
翌朝少しはまどろむことができた程度だが目が覚めた。
学生たちもちらほらと寝袋や毛布から抜け出していた。
そこで異変に気付いた。
オカルト研究会のあの2人が居ない...
「あの2人はどうした?」
と、オカルト研究会の残りのメンバーや登山部員に聞いても誰も見たものは居なかった。
彼らを置いて下山するわるわけにはいかないので、しばらく待つことにした。
午前11時を過ぎた頃これ以上は待てない。一旦みんなを連れて下山しようとした時だった。
青ざめた表情をしてオカルト研究会の2人が山小屋に戻ってきた。
「どうして2人だけで行動したんだ!」
と、おれが問いただす。
すると2人は両耳を両手でふさぎながら
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい.......」
と、呪われたようにそれしか言わない。
まるで、オカルト研究会のメガネの女子と同じだ。
こうしている間にも時間は過ぎていく、仕方ないので2人には下山してからゆっくりと事情を聴くことにして、急いで下山の準備を整えた。




