第3話
休憩から2時間歩き続け、恩嶽山の難所に差し掛かった。
岩場が多いこの付近はけが人も多くでている場所だ。
ゴツゴツした岩場を慎重に登っていかなくてならない。
登山部はこういった岩場を経験したことがあるだろうが、オカルト研究会は初めてだろう。しかも、運動靴だ...。
「えーこんなとこ登っていくの?」
オカルト研究会の女子が言う。
「そう、ここを抜けないと上には行けないよ」
「ちょっと、こんなの無理だよ〜」
弱音を吐く女性陣に見かねた登山部が女子メンバーの荷物を全部持ってあげることしてなんとか登り始めた。
「岩場には尖った岩もたくさんあるからよく見て登ってください」
「...はい。」
オカルト研究会の黒髪がなんとか返事をするが、足の疲労を岩場での神経をすり減らしての山登りで心身ともに疲れ切った様子だった。
山頂まではこの岩場を抜ければもう少しだが、このままでは下山の決断を下さなければならないかもしれな
い。
そんなことを考えていると、おれの後ろにいる黒髪の女子がなにか後ろのメガネの女子に向かって何か言っている。
「ちょっと、なにか聞こえない?」
「えっ何も聞こえないけど」
「じゃあ、私だけに聞こえてるの?」
「一体どうしたっていうの?」
「今オギャアオギャって赤ちゃんの声が聞こえた気がするの」
「えっ本当に!」
「うん、今は聞こえなくなっちゃけどまた聞こえるかも」
「ええ〜いいなあ!私も聞きたい」
そんな会話が聞こえてきた。
それを機にテンションが上がった女子メンバーもなんとか岩場を超えることが出来た。
しかし、かなりの時間が経過してしまった。
時刻は午後4時を過ぎた頃だった。この時間では、下山するわけにもいかないので、山頂近くの山小屋で夜が明けるのを待つ計画に変更した。
登山部の部長松井もおれの意見に賛成した。さすがにこの薄暗くなってからのあの岩場下りは危険すぎると感じたのだろう。
山小屋まではここからこのペースで歩いて20分から30分くらいなので、どっぷりと日が暮れるまでには山小屋にたどり着けるだろう。
13人は岩場を抜けてから体力が限界に近かった。登山部のメンバーも初心者をフォローしながらの山登りに思わぬ体力を消費したのだろう。
みんなが重い足を引きずるようにして山小屋までの道のりを歩いているとメガネの女子が異変を感じたらしい。黒髪の女子を話をしている。
「ねえ、さっきから右足が誰かに掴まれているみたいに痛いんだけど...」
「えっ?何も付いてないけど?」
「さっきからすごく右足が痛くて歩くと何かを引きずっているくらい重たいの...それに...」
「それに?」
「私にも聞こえたの赤ちゃんの泣き声が...」
その会話を聞きつけたオカルト研究会の男子が駆けつける。
「その話本当か?ちょっと右足見せてくれ」
メガネの女子が座り込み靴と靴下を脱いでいるあいだ、武田は一眼レフでメガネの女子を撮ったり、その周囲を撮影していた。
メガネの女子が靴下を脱ぎ足首が露わになる...!
その足首にははっきりと赤ん坊のものと思われる小さな手形が赤黒いアザのように残っていた。
「いやあああああ!!!」
自分の足を見たメガネ女子は泣き叫ぶ。
「大丈夫だ安心しろ!落ち着くんだ!」
おれがなだめても彼女はガタガタを震え今にもパニックに陥りそうになっていた。
「彼女はおれが運ぶから、早く山小屋に急ごう」
おれは彼女を担ごうとした時オカルト研究会の武田がぼそっと言った。
「こんな数のオーブはじめてだ...」
武田のカメラの液晶に映っていたメガネの女子の周りには無数のオーブで埋め尽くされていた。
この写真を見てここにいる誰もが恐怖した...。
いや、古い本を持っていたオカルト研究会の男2人だけは、その状況を楽しんでいるように見えた。




