先日は送迎の対応いただきありがとうございました。
ザー……
車内でかすかに聞こえる雨音の中、俺は帰路についていた。
「はぁ…」
思わずため息をついてしまう。
と言うか、この状況下でため息をつかないことなど出来るはずもない。
『君の身柄を引き渡すようにと要請が入っている』
先ほど大泊大臣から聞かされた言葉を思い返す。
結局のところ、俺は何の力も持っていないただの一般人であり、戦略兵器などではない。
それを証明するために防衛省は俺が英雄ではないという立場をとっているようだった、だが…
『もっとも、それはそれとして俺個人としては君、間宮鵜城を英雄だとは思っているがね』
『ダブスタですね』
『ああ、だが仕事中はもちろん、プライベートとしても英雄ではなく、間宮鵜城として接するつもりだ』
『なんですかそれ…』
『トリプルスタンダードだな』
「ふ…」
思わず思い出し笑いをしてしまった。
現実世界に戻ってきて早1年ほどだろうか、これまで知らなかった奴、過去に交流のあったやつ含め戻ってきた俺に対して間宮鵜城として接してくれる奴はほぼいなかった。
「変わった人でしょう」
そんな俺の心中を察してか、運転を行ってくれている豊原さんが話しかけてきた。
「変わった…そうですね、変わった人と言うのもありますが、こんな大臣もいるんだなって」
「気を使わなくもいい、俺もあの人のことは変わってるしおかしな人、大臣には向いていないと思っている」
ははっと笑いながら豊原さんは続ける。
「詳細は省くが俺も昔レッテルを貼られていてな、そこから俺を救ってくれたのがまだ議員にもなっていないころと大泊さんだ」
懐かしそうに話しながらも、豊原さんは俺の反応を確認していた。
「ま、大泊さんもお前のことは英雄だと思っていいるが、レッテルを貼って話すような人じゃないってことだ」
「それはまぁ、なんとなくわかりますね」
現実世界へ戻ってきてからこれまで、英雄というレッテルに縛られずに話してくれた人はほとんどいなかった。
思い返してみてもは涼ぐらいだっただろう。
とはいえ涼に並ぶわけではない、大泊に関してはわからない人、という印象であり、今もそれは変わらないが…
「悪い人ではない、そうは思います」
「今はそれぐらいでいい、初対面だったんだからな」
豊原さんは笑いながらそう言ってくれた。
「そして俺も、初対面でこんなことをいうのは何だが、君のことを英雄として見ていた」
少しバツの悪そうな顔をしながらミラー越しにこちらを見ている。
「だけど俺も大泊さんみたいに、君自身を、間宮鵜城として接するようにするよ、着いたな」
気が付けば家の、マンションの前についていた。
「今日はいろいろとありがとうございました」
そういい車を出ようとした時。
「ちょっと待って、これ」
そう言われて出されたのは1枚のQRコードだった。
「俺のプライベート用のアカウントだ、業務用は伝えたがあっちはいろんな人に見られるからな」
「ありがとうございます」
「もしいやなら登録しなくていいから、もし今回の件やそれ以外でも相談したいことがあったら気軽に連絡して」
じゃぁ!
っといい、俺を置いて車は走り去っていった。
「悪い人…ではなかったな」
ぽつりとつぶやきながらアカウントを登録するためにスマホを取り出す。
そういえばごたごたに巻き込まれてからスマホの確認をしていなかったと思いながら画面を見ると…
「っげ…」
そこには何件ものメッセージと着信履歴…その相手は涼だ。
メッセージを確認すると
[無事帰れた?][そろそろ帰った?][おーい][大丈夫?][見たら返信して] [寝てるの?] [今家の前だけど家いる?]
っとかなり心配をかけてしまったようだ。
「とりあえず電話かけて謝るか…」
俺を心配してくれるような奴には、少しは付き合うべきかもしれない。




