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CC.俺を半分拉致した変人大臣様へ

大泊大臣に促され黒塗りの高級車にの後部座席に乗り込む。

というかこの状況だ、乗り込むという選択肢以外はない。

座席は柔らかく、だがしっかりとした反発がある。

バタンっと扉が閉まる、その音も重厚感があり、つまりは

「高級車だ…」

普段乗るとしても普通のコンパクトカーな俺にとっては初の高級車だ。

扉を閉めただけで外の喧騒が一気に静かになる。

そして自分が乗った側とは反対側、右隣の扉が開き、大泊大臣が乗り込んでくる。

「じゃあよろしく」

それだけ運転手に伝えると車は走り出した。

流石は高級車だ、エンジンの音やロードノイズもほとんど聞こえない。

耳をすませばようやく聞こえる程度だ。

そう、耳を澄ませる余裕がある。

「……」

「……」

会話が一切ないのだ。

―君が英雄ではない、それを証明させるためにここまで来たんだ―

この人は俺に向かってはっきりとそう言ったはずだ。

何が目的で?

というかこれはどこに向かっているんだ?

「……」

ちらっと大臣の方を目で追う、が外を見ているだけで何を考えているのかはわからない。

「昼飯は?」

「え?」

思いもしなかった発言に思わず素っ頓狂な声が出る。

「昼飯ですか?」

「ああ、食ったのか?」

顔をこちらに向け、再度問いかけてくる。

腕をまくり時計を見るとすでに14時、昼飯時は既に過ぎていた。

「帰ってから食おうと思っていたのでまだですが」

「そうか、ならいいな、豊原、次の信号を左折だ」

「わかりました」

そういわれドライバーは左折する。

曲がる時もサスペンションのおかげかあまり遠心力を感じない、さすがは高級車だ。

で、しばらく走り着いたのがハンバーガーチェーンのドライブスルーだった。

「ハンバーガーですか」

「なんだ、嫌いだったか?」

ほいっとタブレットでメニューを見せてくる。

好きなのを選べということだろうか。

「いえ、嫌いではないですが、大臣でもこういうところで食べるんだなって」

「ふ、俺たちを何だと思っている」

少しだけ大臣の険しかった表情が和らいだ気がする。

じゃあこれでと言いタブレットを返す。

「てっきり大臣は料亭など行くのでこういうところには来ないものかと」

「それは間違いだな、料亭は5回も行けば飽きるがこちらは何度来ても飽きない」

そういいながら後部座席からマイクに向かって注文をしている。

大臣ともあろう役職の人が前かがみになり注文している様子は少し面白い。

「ほら」

しばしの沈黙の後、商品を受け取った大臣から袋を渡される。

「ありがとうございます…ん?」

袋を開けると中身は

「激辛ホットソースバーガー?」

俺の頼んだフィッシュフィレオとは別の物だった。

大臣の方を見ると俺が受け取ったものと同じものを頬張っていた。

「ああ、俺のおすすめだ、金はいいぞ、おごりだ」

そういいながら再度頬張る。

辛いものは苦手ではないが、そこまで得意でもない。

だがチェーン店の激辛だ、おそらくそこまで―

「っごほ、ごほ―」

先ほどまで静かに、快適に走っていた車が少し揺れる。

咳の主を見ると運転手が顔を真っ赤にし、咳込みながら水を飲んでいた。

再度大臣を見るとどうした?食べないのか?という表情でこちらを見ている。

「い、いただきます…」

覚悟を決め、包み紙をはがしソレと対面する。

匂いは普通のハンバーガーだが、見た目がどう考えても普通ではない。

まずバンズがうっすらと…いや、かなり赤い気がする、比較対象がないからはっきりとは言えないが。

そして溢れんばかりにかかっている、というか漬け込まれている?と勘違いするほどのソースだ。

確実にやばいと思われるレベルで赤い。

見ているだけで口の中が辛くなってくる。

「ええい、ままよ」

もらってしまった以上、食べないわけにはいかない。

それに案外辛くない可能性もある、そう思いソレを口にする。

「はぐ」

口内は既に辛さへ耐えるために唾液を大量に分泌している。

ソレが口に入り、辛みが…あれ?ん?

味がしない?

いや、違う、これは…

「っごほ、げほ、ごほ!」

辛すぎるとそれは麻酔にもなると聞いたことがある、つまり辛すぎるあまり一瞬味覚が奪われたのだろう。

なんか辛すぎて逆に冷静になって来た。

「げほ、ごっ…ば、馬鹿ですかあなた」

大臣に向かってして例とは思いつつ、本音ぶつける。

というか正直パンチをぶつけたい。

気が付けば大臣は既に食べ終わっている。

「言うほどか?」

それだけ言うと再び窓の外を眺める姿勢に戻った。

ふざけるなよと思いながら前を見ると、ルームミラー越しに運転手と目が合う。

お互い目には少し涙が浮かんでいた。

咳き込んでいるせいで言葉はない、だがアイコンタクトで俺たちの間にはしっかりと、一つの目標を共有できたと思う。

いつか大臣を殴ろう。


咳き込みながらもなんとか完食、咳が何とか収まったころ、ようやく質問が出来た。

「あぁ、で、結局これどこに向かってるんですか」

まだひりひりする口を何とか水で冷やし、痛みを抑えながら行き先を確認する。

「ああ、食い終わったか」

大臣は改めてこちらを見て答える。

「どこに向かっているか?それは…まぁ、着けばわかる」

「い、言えない施設何ですか?」

先ほどのひょうひょうとした態度とは異なり、少し気迫のあるような物腰の大臣に少し気圧される。

「ああ、なんたってあの場所は…」

大臣がいい終わるのを待たず、すぅっと車が止まる。

運転手は窓を開け、誰かと話している。

何やら検問?のようなことをやっているが、相手は迷彩服を着ている、つまりは自衛隊だ。

数度の会話と通行証を見せ?運転手は窓を閉める。

すると再度車を進め、門を通る。

「あの、本当にここ何なんですか?」

「そうだな…ついたな」

再度車が止まり大臣は降りる。

俺もそれに従い車を降りる。

「あの、ここって」

「ああ、ここが今日の目的地だ」

エントランスに止められた車を降りると、目の前には天守のような屋根を持つ庁舎が建っている。

「自衛隊、師団司令部だ」

「司令部って…秘匿されてるんですか?」

これまで説明してこなかったのもそれなら理解で―

「いや、一般的に公開されている情報だ」

「え?」

「そしてここも普通の駐屯地だ、司令部があるから少しだけ特殊ではあるがな」

大臣は運転手を先頭に建物に入っていく、あ、運転手まだ咳き込んでる。

「ならどうして教えてくれなかったんですか?」

俺は小走りでついて行き、横を歩きながら尋ねる。

「わからんか?」

「はい」

大臣ははぁっとため息を吐き決め顔で答える。

「一度は言ってみたいだろ、着けばわかるってさ」

俺を選ぶアホ…とは関係なく、こいつとは付き合いたくないかもしれない。



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