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やってしまった。これで話し合いで解決する、というわけにも完全にいかなくなってしまった。
ロビンの行動に対し、他の兵士たちは一斉に剣を抜く。
「お嬢様! 申し訳ありませんが、自分の身はご自分で守っていただけますかね?」
ロビンはそう言うなり、兵士たちの方に向かって走り出す。
彼が、いきなり強行に出た理由については謎だけど。こうなってしまっては仕方がない。
私も、落ちていた剣を取って立ち上がる。
彼に言われたとおり自分の身を守るため、剣を中段に構え敵の襲撃に備えた。
早い。
ロビンの動きは、まるで疾風のよう。
あっという間に五人ほど斬り伏せ、相手の兵士たちを怯ませた。
彼がこんなに強かったなんて、思ってもみなかった。
確かに剣の腕は一流だと感じていたけど。それはあくまでも、技術的なものだけだと思っていた。
実際の彼は、修羅場を潜り抜けてきた歴戦の勇士のよう。
すっかり警戒した兵士たちは、不用意に斬り込んでこなくなる。数人がかりで一斉に攻撃し、危険と思えばすぐに離れるといった感じだ。
味方の損害を避け、相手の消耗を誘う。そんな作戦なのかもしれない。
まだ、敵は二十人ほどいる。
完全に多勢に無勢。
一人ずつでも確実に減らしていければ良いけど、あんな戦い方をされてはそれも叶わない。
部隊の隊長と思われる男が、何か指示を出している。
それと同時に、三人の兵士がこちらに向かってきた。
たぶんロビンが手こずる相手だとみて、私を人質にしようとしている。
すぐに私はそう悟り、戦う覚悟を決めた。
ロビンは、こちらをチラッと見る。一瞬だけ微笑んだかと思うと、すぐに目の前の相手に視線を戻した。
彼の態度を見て、少しだけ自信が湧いてくる。それだけ、弟子である私の事を信じている証拠。
私は、背後を取られまいと馬車を背に剣を構えた。
三人の兵士が目の前まで迫ってくる。
前に並ぶうちの真正面にいた兵士が、剣を叩き落とそうと中途半端な攻撃を仕掛けてきた。
体が自然に反応する。
散々、練習してきたとおり。
私は、振り下ろされた剣を剣の腹で絡め落とす。流れのままに、切っ先を相手の喉元に突きつけた。
(初めての実戦だけど、意外と何とかなりそうね)
初めての実戦にも拘わらず、上手くやれたことに自信を深める。
「くっ、こいつ公爵令嬢じゃないのか? まさか囮とかじゃないよな?」
後退りしながらそう言ちる兵士。
まるで随分と前から、この件に当たってこちらを監視していたかのような言いよう。
あのまま殺してしまうのが、正解だったことは分かっている。
一人でも多くの敵を、減らしておかなければならない状況。
でも、今の私にそんな恐ろしい事などできるはずもない。
取りあえず身を守る事だけでもできたのだから、及第点は欲しいところ。
相手は本気で殺す気はないようで、防戦一方ながらも私は何とか三人の攻撃を耐え続けていた。
気づけばロビンが相手する兵士は、あと十人ほど。
このまま勝てるかもしれない。
そう希望を持ち始めたその時だった。
周囲がいきなり明るくなる。
目を開けていられないほどの光。
すぐに光は収まる。
しばらく目が眩んでいたけど、それは相手の兵士たちも同じだったよう。
特に目が眩んでいる間、何かをされるという事はなかった。
ようやく視界が戻ってきたところで、私は最悪の光景を目の当たりにする。
敵に囲まれながら片ひざをつくロビン。
兵士たちは、勝ち誇ったように全員が構えを解き始めた。
「ちっ、避けやがったか」
急に静になり、よく通る声。隊長と思われる男が、そんな事を言ちた。
どうやらロビンは、大腿部に傷を負ってしまったようだ。
「だが、その様子じゃもう戦えんだろ」
下卑た笑みを浮かべながら更にそう言ちる男。
「ロビン!」
思わず私は彼の名を叫ぶ。
次の瞬間、彼は勢いよく立ち上がった。
「うぉーーっ!」
気勢を上げながら、隊長の男に向かっていくロビン。
「お前ら、手出すなよ!」
男はそう言うと、彼の攻撃に応戦し始めた。
激しく打ち合う音が森の中に響く。
相手の男もかなり強い。
初めのうちは、ロビンが優勢に見えたけど。疲労と失血のせいか、次第に彼の動きは鈍くなっていく。程なくして完全に形成は逆転した。
(彼を助けなきゃ)
そうは思いつつも、どうしても体が動かない。
強者同士の一騎討ち。目の前の三人も居るし、出ていこうにもタイミングを掴むことができなかった。
踏み込む際よろめくロビン。
男は、その一瞬の隙を逃さなかった。
相手の一撃が彼の手首を斬りつける。
それと同時にロビンは剣を落とした。
肩口で剣の腹を水平に構える男。
無情にも次の瞬間、敵の刃はロビンの胸に突き立てられた。




