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婚約破棄された公爵令嬢は傭兵団長と二度目の恋に落ちる  作者: その辺の双剣使い
1─1 全てを失った夜

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6



 やってしまった。これで話し合いで解決する、というわけにも完全にいかなくなってしまった。


 ロビンの行動に対し、他の兵士たちは一斉に剣を抜く。


「お嬢様! 申し訳ありませんが、自分の身はご自分で守っていただけますかね?」


 ロビンはそう言うなり、兵士たちの方に向かって走り出す。

 彼が、いきなり強行に出た理由については謎だけど。こうなってしまっては仕方がない。

 私も、落ちていた剣を取って立ち上がる。

 彼に言われたとおり自分の身を守るため、剣を中段に構え敵の襲撃に備えた。


 早い。

 ロビンの動きは、まるで疾風のよう。

 あっという間に五人ほど斬り伏せ、相手の兵士たちを怯ませた。


 彼がこんなに強かったなんて、思ってもみなかった。

 確かに剣の腕は一流だと感じていたけど。それはあくまでも、技術的なものだけだと思っていた。

 実際の彼は、修羅場を潜り抜けてきた歴戦の勇士のよう。


 すっかり警戒した兵士たちは、不用意に斬り込んでこなくなる。数人がかりで一斉に攻撃し、危険と思えばすぐに離れるといった感じだ。

 味方の損害を避け、相手の消耗を誘う。そんな作戦なのかもしれない。


 まだ、敵は二十人ほどいる。

 完全に多勢に無勢。

 一人ずつでも確実に減らしていければ良いけど、あんな戦い方をされてはそれも叶わない。


 部隊の隊長と思われる男が、何か指示を出している。

 それと同時に、三人の兵士がこちらに向かってきた。


 たぶんロビンが手こずる相手だとみて、私を人質にしようとしている。

 すぐに私はそう悟り、戦う覚悟を決めた。

 ロビンは、こちらをチラッと見る。一瞬だけ微笑んだかと思うと、すぐに目の前の相手に視線を戻した。


 彼の態度を見て、少しだけ自信が湧いてくる。それだけ、弟子である私の事を信じている証拠。

 私は、背後を取られまいと馬車を背に剣を構えた。


 三人の兵士が目の前まで迫ってくる。

 前に並ぶうちの真正面にいた兵士が、剣を叩き落とそうと中途半端な攻撃を仕掛けてきた。


 体が自然に反応する。

 散々、練習してきたとおり。

 私は、振り下ろされた剣を剣の腹で絡め落とす。流れのままに、切っ先を相手の喉元に突きつけた。


(初めての実戦だけど、意外と何とかなりそうね)


 初めての実戦にも拘わらず、上手くやれたことに自信を深める。


「くっ、こいつ公爵令嬢じゃないのか? まさか囮とかじゃないよな?」


 後退りしながらそう言ちる兵士。

 まるで随分と前から、この件に当たってこちらを監視していたかのような言いよう。


 あのまま殺してしまうのが、正解だったことは分かっている。

 一人でも多くの敵を、減らしておかなければならない状況。

 でも、今の私にそんな恐ろしい事などできるはずもない。

 取りあえず身を守る事だけでもできたのだから、及第点は欲しいところ。


 相手は本気で殺す気はないようで、防戦一方ながらも私は何とか三人の攻撃を耐え続けていた。

 気づけばロビンが相手する兵士は、あと十人ほど。

 このまま勝てるかもしれない。

 そう希望を持ち始めたその時だった。


 周囲がいきなり明るくなる。

 目を開けていられないほどの光。


 すぐに光は収まる。

 しばらく目が眩んでいたけど、それは相手の兵士たちも同じだったよう。

 特に目が眩んでいる間、何かをされるという事はなかった。


 ようやく視界が戻ってきたところで、私は最悪の光景を目の当たりにする。


 敵に囲まれながら片ひざをつくロビン。

 兵士たちは、勝ち誇ったように全員が構えを解き始めた。


「ちっ、避けやがったか」


 急に静になり、よく通る声。隊長と思われる男が、そんな事を言ちた。

 どうやらロビンは、大腿部に傷を負ってしまったようだ。


「だが、その様子じゃもう戦えんだろ」


 下卑た笑みを浮かべながら更にそう言ちる男。


「ロビン!」


 思わず私は彼の名を叫ぶ。

 次の瞬間、彼は勢いよく立ち上がった。


「うぉーーっ!」


 気勢を上げながら、隊長の男に向かっていくロビン。


「お前ら、手出すなよ!」


 男はそう言うと、彼の攻撃に応戦し始めた。


 激しく打ち合う音が森の中に響く。

 相手の男もかなり強い。

 初めのうちは、ロビンが優勢に見えたけど。疲労と失血のせいか、次第に彼の動きは鈍くなっていく。程なくして完全に形成は逆転した。


(彼を助けなきゃ)


 そうは思いつつも、どうしても体が動かない。

 強者同士の一騎討ち。目の前の三人も居るし、出ていこうにもタイミングを掴むことができなかった。


 踏み込む際よろめくロビン。

 男は、その一瞬の隙を逃さなかった。


 相手の一撃が彼の手首を斬りつける。

 それと同時にロビンは剣を落とした。


 肩口で剣の腹を水平に構える男。

 無情にも次の瞬間、敵の刃はロビンの胸に突き立てられた。

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