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婚約破棄された公爵令嬢は傭兵団長と二度目の恋に落ちる  作者: その辺の双剣使い
1─1 全てを失った夜

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4



 学園に戻って最初に会ったとき。彼の反応は、何処かよそよそしいものだった。

 慰めの言葉はあったものの、月並みな事を言われただけ。


 どう言葉を掛けてよいか分からない。そう感じて、あまり深入りしてはこなかった。

 初めのうちはそう思っていたけれど。その後も何を話しても上の空になる事が多くなり、次第に彼の私に対する態度は冷たくなっていった。


 忙しいという理由で、彼は昼休みを一緒に過ごしてくれなくなった。

 帰りに、寮まで送ってくれることすら無くなってしまった。


 ちゃんと主席しているのだろうか。学園内で会う事も段々と少なくなり、たまに見かけても何故か私を避けるような態度。

 何より耐えがたかったのは、エリーナ嬢とは普通に話している様子だったこと。


 殿下のときは、いつか戻ってきてくれると何処かで信じていた。

 一時の気の迷いなのだと。

 その結果が、あの断罪劇。


 今回ばかりはまた、あんな思いをしたくない。

 堪り兼ねた私はついに彼を捕まえ、その理由を訊ねてみることにした。


「フリック……話たい事があるのだけれど。今から少し時間を頂いてもよろしいかしら?」


 昼休み。彼の教室にわざわざ出向いた私は、意を決してそう問いかける。

 彼は、何か調べものをしているようだった。


「アリー。ちょうど良かった。俺も君に、どうしても伝えなければならない事があるんだ」


 そう聞いて、私の心臓は跳ねる。

 とても嫌な予感。

 この時点で私は、彼に別れを告げられることを覚悟した。


 ここでは何だと言われ、私たちはいつもの場所に移動する。

 無駄になるかもしれないと思い、ランチは用意していなかった。

 実際にもう済ませたと聞き、最初から当てにされていなかった事に少し落胆する。


「フリック……どうして最近、わたくしに対して冷たい態度を取るようになってしまったの?」


 少しだけ前のような反応を期待したけど、彼の答えはとても冷淡なものに感じた。


「どうしても、やらなければならない事ができてしまったんだ」

「わたくしを放ったらかしにしてまで、優先されるべき事なのですか?」


 私の問いに俯くフリック。いつものような甘い表情を向けてはくれない。


「ごめん、アリー。今でも君の事は、大切に思っている」


 何故か俯いたまま、彼はそう答えになっていない答えを返す。

 一瞬にして悟った。

 そう言ってくれるのは嬉しいけど。彼の態度から、その言葉が本意ではないと。


 しばらくの間、沈黙が流れる。

 私もこれ以上、どう話してよいか分からない。

 そんななか彼はようやくこちらに向き直り、意を決したように口を開いた。


「今の俺と君とじゃ釣り合わない」

「わたくしは、そんなこと全く気にしておりませんわ」

「気持ちだけじゃ、どうにもならない事もあるんだ!」


 急に声を荒らげるフリック。

 初めての事に、私はそのまま固まってしまった。


「ごめんアリー。少し感情的になってしまったみたいだね……」


 すぐに謝罪の言葉をかけられたけど。強い口調で気持を否定され、私の心は深く傷ついた。


「とにかく今の俺には、君を守るための力が足りない……俺は、近いうちに学園を去るけど。必ず君に相応しい人間になって、君を迎えに来ると誓おう」

「学園を去るですって? わたくしの事を置いていくつもりなのですか?」

「済まないアリー。確かに君を置いていくのは心苦しい……でも、君を守る力を手に入れるために、俺にはどうしても優先すべき事があるんだ……」


 完全に冷静ではいられなくなっていた。

 負の感情が頭の中を支配する。

 私はその言葉を、別れの言葉と受け取った。


「よく分かりましたわ……さようならフリック……今までありがとう」


 私は、そう言うなりすくっと立ち上がる。


「待ってくれ! アリー!」


 踵を返した瞬間、そう引き止める声がしたけれど。私は振り返らず、黙ってその場を立ち去った。



 あんな別れかたをしたけれど、やっぱり彼の事が気になって仕方がない。

 けっきょく私は、一方的に別れを告げたことを後悔していた。

 彼がもう一度、話しかけてくれる事を心の何処かで期待もしていた。

 だけど彼は、相変わらず何かに忙しく追われている様子。その後も彼が、私に声をかけてくる事はなかった。


 それから彼を意識する毎日がしばらくの間続く。

 気づいた時には、彼が学園に姿を現すことすら完全になくなってしまっていた。

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