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学園に戻って最初に会ったとき。彼の反応は、何処かよそよそしいものだった。
慰めの言葉はあったものの、月並みな事を言われただけ。
どう言葉を掛けてよいか分からない。そう感じて、あまり深入りしてはこなかった。
初めのうちはそう思っていたけれど。その後も何を話しても上の空になる事が多くなり、次第に彼の私に対する態度は冷たくなっていった。
忙しいという理由で、彼は昼休みを一緒に過ごしてくれなくなった。
帰りに、寮まで送ってくれることすら無くなってしまった。
ちゃんと主席しているのだろうか。学園内で会う事も段々と少なくなり、たまに見かけても何故か私を避けるような態度。
何より耐えがたかったのは、エリーナ嬢とは普通に話している様子だったこと。
殿下のときは、いつか戻ってきてくれると何処かで信じていた。
一時の気の迷いなのだと。
その結果が、あの断罪劇。
今回ばかりはまた、あんな思いをしたくない。
堪り兼ねた私はついに彼を捕まえ、その理由を訊ねてみることにした。
「フリック……話たい事があるのだけれど。今から少し時間を頂いてもよろしいかしら?」
昼休み。彼の教室にわざわざ出向いた私は、意を決してそう問いかける。
彼は、何か調べものをしているようだった。
「アリー。ちょうど良かった。俺も君に、どうしても伝えなければならない事があるんだ」
そう聞いて、私の心臓は跳ねる。
とても嫌な予感。
この時点で私は、彼に別れを告げられることを覚悟した。
ここでは何だと言われ、私たちはいつもの場所に移動する。
無駄になるかもしれないと思い、ランチは用意していなかった。
実際にもう済ませたと聞き、最初から当てにされていなかった事に少し落胆する。
「フリック……どうして最近、わたくしに対して冷たい態度を取るようになってしまったの?」
少しだけ前のような反応を期待したけど、彼の答えはとても冷淡なものに感じた。
「どうしても、やらなければならない事ができてしまったんだ」
「わたくしを放ったらかしにしてまで、優先されるべき事なのですか?」
私の問いに俯くフリック。いつものような甘い表情を向けてはくれない。
「ごめん、アリー。今でも君の事は、大切に思っている」
何故か俯いたまま、彼はそう答えになっていない答えを返す。
一瞬にして悟った。
そう言ってくれるのは嬉しいけど。彼の態度から、その言葉が本意ではないと。
しばらくの間、沈黙が流れる。
私もこれ以上、どう話してよいか分からない。
そんななか彼はようやくこちらに向き直り、意を決したように口を開いた。
「今の俺と君とじゃ釣り合わない」
「わたくしは、そんなこと全く気にしておりませんわ」
「気持ちだけじゃ、どうにもならない事もあるんだ!」
急に声を荒らげるフリック。
初めての事に、私はそのまま固まってしまった。
「ごめんアリー。少し感情的になってしまったみたいだね……」
すぐに謝罪の言葉をかけられたけど。強い口調で気持を否定され、私の心は深く傷ついた。
「とにかく今の俺には、君を守るための力が足りない……俺は、近いうちに学園を去るけど。必ず君に相応しい人間になって、君を迎えに来ると誓おう」
「学園を去るですって? わたくしの事を置いていくつもりなのですか?」
「済まないアリー。確かに君を置いていくのは心苦しい……でも、君を守る力を手に入れるために、俺にはどうしても優先すべき事があるんだ……」
完全に冷静ではいられなくなっていた。
負の感情が頭の中を支配する。
私はその言葉を、別れの言葉と受け取った。
「よく分かりましたわ……さようならフリック……今までありがとう」
私は、そう言うなりすくっと立ち上がる。
「待ってくれ! アリー!」
踵を返した瞬間、そう引き止める声がしたけれど。私は振り返らず、黙ってその場を立ち去った。
あんな別れかたをしたけれど、やっぱり彼の事が気になって仕方がない。
けっきょく私は、一方的に別れを告げたことを後悔していた。
彼がもう一度、話しかけてくれる事を心の何処かで期待もしていた。
だけど彼は、相変わらず何かに忙しく追われている様子。その後も彼が、私に声をかけてくる事はなかった。
それから彼を意識する毎日がしばらくの間続く。
気づいた時には、彼が学園に姿を現すことすら完全になくなってしまっていた。




