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婚約破棄された公爵令嬢は傭兵団長と二度目の恋に落ちる  作者: その辺の双剣使い
1─1 全てを失った夜

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3



 第二王子の婚約者という立場も失い、私は学園内で更に孤立を深めていた。

 いつも周りに居た御令嬢たちも、今ではすっかり私を避けるようになってしまっている。

 そんな今の私にとって、救いなのはフリックの存在だけ。

 殿下はそれすら気にくわないのか、更に私の悪評を周囲に広めているようだった。


 私は、病の床に臥す国王陛下に、ミザエル領の特産品である薬草を定期的に送っていた。

 陛下が体調を崩されたのは、殿下に婚約を破棄されるより前の話。

 婚約を破棄されたからといって、今さら止めるわけにもいかない。

 ただ、それだけが薬草をお送りし続ける理由だったのに……。


 未だに殿下に対する気持ちを諦めきれずに、今度は陛下に対して働きかけようとしている。

 いつの間にかそんな噂が立つようになっていた。

 その事を知っているとしたら、殿下の周囲に居る人間くらいのはず。

 お送りしている薬の話も出ているため、フリック殿下や、殿下に近しい人間が流している噂なのは間違いない。


 エリーナ嬢の方が良くて、婚約を破棄されたのでしょうし。こんな私の事など、放っておいてくださればよろしいのに。

 私はそんな風に思いつつ、殿下の行動に対して理解できずにいた。



 学園の中庭は、昼休みに彼と過ごしている場所。

 ある日。いつもどおりそこに向かった私は、フリックとエリーナ嬢が二人きりで話をしているところを目撃する。

 私の姿に気づいた彼女は、そそくさとその場を立ち去った。


「フリック……彼女と何を話していたの?」


 お弁当が入ったバスケットを抱えながら、私は恐る恐るフリックに対して問う。

 私は、彼の為に毎日お弁当を作るようになっていた。


「ごめんアリー。あんな所を見たら、不安に思うのも当然だよね……でも、心配は要らない。何を吹き込まれようとも、俺の気持ちが変わることなんてあり得ないから」


 フリックの口ぶりからして、エリーナ嬢が彼に私の悪口を吹き込もうとしていたのは確か。

 彼はそう言ったあと、ハンカチを敷いたベンチに私を座らせ優しく肩を抱き寄せた。


「本当に君は可愛い……俺は君とこうしていられるようになって、今とても幸せなんだ……」


 真っ直ぐに私を見つめながら、彼はそんな甘い言葉を私に投げ掛ける。

 私も彼と同じ気持ちだった。


 その後もエリーナ嬢は、事あるごとにフリックに近づいている様子だった。

 彼女が、私と彼を引き離そうとしているのは確か。

 殿下を奪ったばかりか、今度は彼まで私から奪おうと言うの?

 そんな不安を抱えてはいたけれど。彼の私に対する態度は、その後も変わることはなかった。


 このまま卒業まで、彼と幸せに過ごしていく。あとは商家に嫁ぐに当たって、お父様とお母様をどう説得するかだけ。

 そう具体的に、彼との結婚を真剣に思い始めていた頃だった。隣国のローゼシア王国が、政情不安に陥っているという噂を聞き始めたのは。


 我が国マガレッタ王国は、隣国の反乱軍を鎮圧するため騎士団を送るという話になった。


 十四年前に政変のあったローゼシア王国。

 国王陛下がお元気だった頃までは、断交状態だったけれど。病弱の兄ルイス殿下に代わり、レオナルド殿下が国王代行になった途端、急に親交を深めるようになっていた。

 

 お母様が亡くなってしまわれたのは、そんな話が出始めた頃だった。


 私が婚約を破棄されたせいで、社交場における母の立場も大きく揺らいでいた。

 冬季休暇で帰省した際も、お母様は気丈に振る舞われてはいたけど。やはり思っていた以上に心労が嵩んでいたよう。

 倒れられたと連絡を受け、再び領地に帰った時にはもう遅かった。


 私は、お母様の死を自分のせいだと考えていた。

 そんな私の心の支えは、フリックただ一人だけ。

 ところが、葬儀を終え学園に帰った私に対し、彼は急に冷たい態度を取るようになってしまっていた。

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