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第二王子の婚約者という立場も失い、私は学園内で更に孤立を深めていた。
いつも周りに居た御令嬢たちも、今ではすっかり私を避けるようになってしまっている。
そんな今の私にとって、救いなのはフリックの存在だけ。
殿下はそれすら気にくわないのか、更に私の悪評を周囲に広めているようだった。
私は、病の床に臥す国王陛下に、ミザエル領の特産品である薬草を定期的に送っていた。
陛下が体調を崩されたのは、殿下に婚約を破棄されるより前の話。
婚約を破棄されたからといって、今さら止めるわけにもいかない。
ただ、それだけが薬草をお送りし続ける理由だったのに……。
未だに殿下に対する気持ちを諦めきれずに、今度は陛下に対して働きかけようとしている。
いつの間にかそんな噂が立つようになっていた。
その事を知っているとしたら、殿下の周囲に居る人間くらいのはず。
お送りしている薬の話も出ているため、フリック殿下や、殿下に近しい人間が流している噂なのは間違いない。
エリーナ嬢の方が良くて、婚約を破棄されたのでしょうし。こんな私の事など、放っておいてくださればよろしいのに。
私はそんな風に思いつつ、殿下の行動に対して理解できずにいた。
学園の中庭は、昼休みに彼と過ごしている場所。
ある日。いつもどおりそこに向かった私は、フリックとエリーナ嬢が二人きりで話をしているところを目撃する。
私の姿に気づいた彼女は、そそくさとその場を立ち去った。
「フリック……彼女と何を話していたの?」
お弁当が入ったバスケットを抱えながら、私は恐る恐るフリックに対して問う。
私は、彼の為に毎日お弁当を作るようになっていた。
「ごめんアリー。あんな所を見たら、不安に思うのも当然だよね……でも、心配は要らない。何を吹き込まれようとも、俺の気持ちが変わることなんてあり得ないから」
フリックの口ぶりからして、エリーナ嬢が彼に私の悪口を吹き込もうとしていたのは確か。
彼はそう言ったあと、ハンカチを敷いたベンチに私を座らせ優しく肩を抱き寄せた。
「本当に君は可愛い……俺は君とこうしていられるようになって、今とても幸せなんだ……」
真っ直ぐに私を見つめながら、彼はそんな甘い言葉を私に投げ掛ける。
私も彼と同じ気持ちだった。
その後もエリーナ嬢は、事あるごとにフリックに近づいている様子だった。
彼女が、私と彼を引き離そうとしているのは確か。
殿下を奪ったばかりか、今度は彼まで私から奪おうと言うの?
そんな不安を抱えてはいたけれど。彼の私に対する態度は、その後も変わることはなかった。
このまま卒業まで、彼と幸せに過ごしていく。あとは商家に嫁ぐに当たって、お父様とお母様をどう説得するかだけ。
そう具体的に、彼との結婚を真剣に思い始めていた頃だった。隣国のローゼシア王国が、政情不安に陥っているという噂を聞き始めたのは。
我が国マガレッタ王国は、隣国の反乱軍を鎮圧するため騎士団を送るという話になった。
十四年前に政変のあったローゼシア王国。
国王陛下がお元気だった頃までは、断交状態だったけれど。病弱の兄ルイス殿下に代わり、レオナルド殿下が国王代行になった途端、急に親交を深めるようになっていた。
お母様が亡くなってしまわれたのは、そんな話が出始めた頃だった。
私が婚約を破棄されたせいで、社交場における母の立場も大きく揺らいでいた。
冬季休暇で帰省した際も、お母様は気丈に振る舞われてはいたけど。やはり思っていた以上に心労が嵩んでいたよう。
倒れられたと連絡を受け、再び領地に帰った時にはもう遅かった。
私は、お母様の死を自分のせいだと考えていた。
そんな私の心の支えは、フリックただ一人だけ。
ところが、葬儀を終え学園に帰った私に対し、彼は急に冷たい態度を取るようになってしまっていた。




