5 連行された先
連れて来られたのはどっかのベンチだ。
周りを見渡してもだれもいなくて、助けてもらえなさそう。
誰かいたところでリアム様は王子だから助けてもらえないだろうけど。
リアム様は私をベンチに座らせ、その横にぴったりとくっついて座る。
近い!と言える雰囲気でもなくてとりあえず黙っておく。
「さて、リリー。」
「はい」
リアム様はずいっとそのきれいな顔を近づけてきた。
近い近い!さすがに近い!
「さっきはずいぶんよそよそしかったね?」
どうやらウィリアム王子殿下と呼んだのが気に入らなかったっぽい。
「え、だって、人前だししっかりしないとと思って」
さらに近づいてきた。
「僕はリリーって呼んでるのに?」
「だ、だって、リアム様は王子だし」
「だから何?婚約者同士なんだから愛称呼びくらい許されるよ」
「そう、かもしれないけど……」
するとリアム様は片手で私の頬に触れると悲しそうな顔をした。
「そっか、リリーは僕との婚約を望んでなかったんだよね……」
そんな顔をされたら、私はリアム様の”お願い”を聞いてしまう。
「わ、わかったわよ!これからは人前でもリアム様って呼ぶ!」
するとリアム様は勝ち誇ったような顔になった。
あ、あれ?
「言ったね、リリー?約束破らないでね?」
だまされた…言質をとられた…
「ひどい!騙すなんて!」
「え、何のことかな?」
明らかにとぼけてるけど、これ以上言ってもリアム様は認めないだろう。
「リリー、そろそろ会場に行きたいんじゃない?」
「は、そうだった!またね、リアム様!」
「またあとでね、リリー。あ、そうだ。制服似合ってるよ!」
そんなリアム様の声を背に私は入学式会場へ向かった。
* * *
会場に着くと結構賑わっていた。
ああ、もう、リアム様のせいでいい席取りそびれた!
はじっこの後ろの方の席に腰を下ろすと、カバンを椅子の下に置く。
入学式の会場の講堂はかなり広い。たしか学園祭ではここでエマたんが美しい歌声を披露するはずだ。
「あの、ここ座ってもいいですか?」
となりから鈴のようなかわいらしいソプラノの声が聞こえてきた。
「もちろんです。どうぞ」
声の主の方を見ると最初に視界に入ったのは吸い込まれそうなアクアグリーンの瞳。その次に肩より少し長い緩くウェーブのかかったピンクゴールドの髪。
私がその子の方を向くと、その愛らしい顔が驚いた表情をしていた。
「えっ、リリちゃん!?」
その子は私の推し、エマ・スターライトだった。
「エマたん!?」
あれ?どうして私を知ってるんだろう?
ゲームのヒロイン登場!




