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19 サイコパスショタ眼鏡らしい

しばらくしてやっと落ち着いてきた。遠くでカラスが鳴いていて、空がほんのりオレンジに染まってきた。

私は慌てて立ち上がって小走りで寮へ向かう。


廊下を走るのはよくないけど…太陽が沈んでから寮に戻ると怒られるのよ!


床のタイルを見ながら足を進めてると、前から来た人にぶつかってしまった。


「わぁ!ごめんなさい!大丈夫ですか!?」


顔を上げると、白に近いグレーの瞳と目が合った。


「ああ、うん。こちらこそ、ごめんなさい」


彼は暗い紫の髪の毛で眼鏡をかけている男の子だった。顔立ちは幼いが、上着の胸ポケットに黄色のマークが入っていたから、私と同じ学年だろう。

かなり整った顔立ちをしているから、攻略対象かもしれない。

記憶を必死に探っていると、彼が声をかけてきた。


「俺はリオネル・ベゼスネリーベ。一学年のクラス3です」


「あ、私はリリアベル・ミシュフェニスです。一学年のクラス1です」


思い出した。彼はたしかに攻略対象だ。彼は確か…「ショタ眼鏡枠」だったかしら?あ、そういえばサイコパスなんだっけ?ゲームのあるルートではヒロインの悪口を言う人を平気で傷つけてたような…

まあ、今はいいや。


「ごめんなさい、ベゼスネリーベ様。前を向いてなくて」


「いいえ、気にしないでください。俺の方こそ周りを眺めてしまっていたので。あ、リオネルでいいですよ」


優しそうな人だ。サイコパスらしいけど。人って見た目だけじゃわからないものね。


「ありがとうございます、リオネル様。では失礼しますね。お互い怒られないように」


彼はふふっと笑った。


「はい」


攻略対象はみんな顔がいいわねぇ…攻略対象の中でいちばん顔が好みなのは……なんか悔しいけどリアム様なのよねぇ……

やっぱりなんか悔しい


そんなことを考えてたらさっきのことを思い出してしまった。


ああ、もう!せっかく違うこと考えてたのに!


なんやかんやで寮の部屋にたどり着いた。

八つ当たりでドアを強めに開けると、エマがビクッとしてノートをぱたんと閉じた。


「あ、リリ!おかえりー…って顔が赤いよ」


ああ、もう。ニヤニヤしてるわ、この子……


「気のせいよ」


「ええ~そうかなぁ?」


エマまで面白がってる…


「そ、そういえば!攻略対象に会ったわ」


エマは驚いたような、悔しいような、面白いような顔をした。


「そういう感情、それ?」


「いや~今のリリめちゃめちゃかわいいからさ、心奪われちゃわないか心配で」


そんなことないと思うけれど。それにたった数十秒会話しただけで心って奪られるものなの?


「大丈夫よ。一言二言くらいしか話してないし」


「そっか。で、誰?」


「リオネル・ベゼスネリーベ」


エマはぽん、と手を打った。


「ああ、『サイコパスショタ眼鏡枠』の!」


「そう」


「あの人ね…特殊バッドエンドが怖かったね…」


エマは眉をひそめて二の腕をさすった。

私もそのルートを思い出して身震いした。

そのルートに入るとどの選択肢を選んでも同じような答えしか返ってこなくて怖かったわ…


「まあ、あんま接触しなければいいでしょ」


「ええ、そうね。エマもね」


そして、夕ご飯を食べて準備してベッドに入った。

一人で暗闇で寝っ転がっていると、どうしてもリアム様を思い出してしまって、寝付きにくかった。

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