18 リアム様の怒り
「そっか、リリーはメイド服を着るんだ?」
うわぁ、なんて黒い笑顔。これはかなり怒ってそうね。なんでかしら?心当たりとか全くないんだけど。
「え、ええ、そのつもりなんだけど」
リアム様はぱっとエマの方を向くと、「先に戻ってていいよ」と声をかけた。
エマはこくこくと頷くと私に「がんば!」と口パクしてから走り去っていった。
エマ~!おいてかないでよ!絶対に今リアム様と二人きりになりたくないわよ!絶対怖いわ!
視線を戻すとリアム様が結構近くにいた。
私は思わず一歩下がった。
じりじりとリアム様が近づいてくる。
笑顔を保っているけれど、そこから怒りがにじみ出ている。
圧に押されて私も一歩ずつ下がっていった。
なにこれ?こんなリアム様初めてだわ。ちょっと怖い…
「そっか、メイド服ねぇ…」
やっぱり、メイド服が気に入らないようだ。
メイド服がどうしたのだろう?普通に衣装だよね?何か変だったりするのかな!?それとも侯爵令嬢だからメイド服は着ない方がいいとか?婚約者として恥ずかしいからやめろってこと?
いろいろ考えていると、トンと背中が何かに当たった。
ひんやりと冷たくて気持ちいい。
ハッと後ろを見ると校舎の壁だった。
恐る恐る視線を戻すとリアム様がどんどん近づいてきていた。
横へ逃げようとした瞬間、リアム様の腕がそれを阻止した。
私は逃げるのを諦めた。絶対無理だろうから。
これが壁ドンってやつ?初めてされたけど。
あ、そんな場合じゃなかったわ!
リアム様を見上げると、顔がかなり近かった。
近いって!リアム様、時々距離が近いのよ!
「リリー、ほかに候補はないの?」
そう聞かれて、考えていたもう一つの候補を伝えた。どう入手すればいいかわからないけど、伝えるだけならいいだろうと思って。
「え、っと、ラバーダッキー…?」
「じゃあ、そっちにして。」
リアム様は間髪入れずにそう答えた。
「なんで?」
リアム様は一度顔を遠ざけて、はあ、とため息をついた。
な、なんだろう…?あきれられた?
そして、次の瞬間、私の肩に顔を埋めた。
「自分のかわいさをもっと自覚してよ」
囁くようにそんなことを言われて、思考が停止した。
顔が熱くなるのを感じる。
え、かわいい?リアム様にもそんな感情があったんだ。
リアム様は体を離すと私を見て満足そうに目を細めた。
「それについてはまた明日話そうか、祝日だし。じゃあね、リリー」
リアム様が去ってから、私は腰が抜けてしまった。
壁を伝ってずるずると地面に座り込み、顔を膝の間に埋める。
私には刺激が強すぎるわ…




