15 本を読むと止まりません
中庭で借りた本の中から一番上のを選ぶ。厚い表紙をそっと開けると、楽しいが広がっていた。
読み進めるうちに手が止まらなくなった。
この本は魔法がない世界で事件が起こる話だった。魔法がないのにどうやってやったのかが重要になってくるみたいだ。最初は普通のミステリーのお話だったのだけど、途中で登場人物の一人が精霊だったと明かされて展開が進んだ。
『ティアラを受け取るのはだぁれ?』の世界には魔法はあっても精霊はいないらしい。
読み終わるころには日が沈み始めてて、慌てて本とカバンを抱えて立ち上がると、目の前にリアム様がいた。
「あ、こんにちは、リアム様。」
う~ん…この笑顔はちょっとイラついてるね…
「リリー、楽しそうだね?」
うん、イラついてるのは間違いない。でも、私が知ったこっちゃない。
「ええ、本をお勧めしてもらったの。ファンタジーミステリーの本でね、さっき読んでたものはすごくおもしろかったわ!本の途中で犯人の予想がころころ変わっちゃって、最終的に全く予想してなかった人が犯人だったの!」
「へえ、たしかにおもしろそうだね。僕がいても気づかないくらい集中してたもんね?」
「あ、それは申し訳ありませんでした」
「いいよ。そのかわり、明日は僕と昼ご飯食べてね?」
え…それめちゃくちゃ目立つじゃん。あと、リアム様に何されるかわからないし。
「リリー?」
圧が…圧がすごい…
結局、私は圧に負けてしぶしぶ頷いた。
「…わかったわ。明日だけね?」
リアム様はうれしそうに笑った。
「うん。ありがとう」
そして、私は女子寮へ、リアム様は男子寮へ向かった。
受付のお姉さんに挨拶をして階段を上がる。
三階にある寮の部屋に戻るとエマが寝っ転がって何かかいていた。
「ただいま、エマ」
エマはパっと顔を上げて、かいていたものを机の引き出しに入れた。
ちらっとイラストっぽいものが見えた。
エマってイラストを描くのが得意なのかしら?うらやましいわ。私は…絵は描くなと言われてしまうくらいホラーな絵になってしまうから。
「おかえり!リリ!本は…借りれたみたいだね。何の本?」
エマは私の腕の中の本の山を見て言った。
私はその本たちをローテーブルの上に置いて、ソファーに腰かけた。
エマも反対側に座った。
「ファンタジーミステリー」
「へえ…」
エマは本を一冊手に取って開いてみた。するとすぐに顔をしかめて閉じた。
「だめだ。私には無理だ」
「本は苦手?」
「う~ん…これは文字が多すぎるかなぁ」
「なるほどね」
それから、制服から普段着に着替えた。
そして食堂へ行く準備を終えたエマへ駆け寄る。
「リリ!ご飯食べに行こ!」
「ええ。ごめんね、待たせちゃって」
「だいじょーぶ!」
エマはほんとに優しいわね…
今日の夕ご飯のメニューは焼き魚だった。知らない魚だったけど、おいしくてどこか日本っぽさも感じれてうれしかった。
部屋に戻ってから寝る準備をして、ベッドに入る。本を読むか迷ったが、夜更かししそうだったからやめた。
我慢できた私を褒めたい。
そして、目を閉じるとすぐに意識を手放した。




