河童
「お怪我はありませんか――ッ?!」
音を聞きつけた別のスタッフが現れた。
崩れ落ちた女性スタッフに駆け寄る。
(怪異の情報が増えた。でも、一部しか読めない。なぜだ? 何故、一部だけが視える?)
「お客様、早くこちらへ」
白鳥が大人しく従った。
(全てを知る資格が、私には無い……?)
「当館は……、午後の営業を終了しております」
廊下。
真っ直ぐ進む。
(全てを見破ったら……、いや。「視抜く」ことに意味があるとしたら?)
二大社長を葬ったあの日。
氷室は、座敷童と貧乏神の超常現象を完璧に視抜いた。
(もし、怪異その物の性質を視抜いたら?)
不思議な感覚。
その眼で視抜いたら、怪異さえ、この瞳の中に閉じ込めてしまえる気がした。
駐車場。
社用車に乗り込む。
「水族館に行きたい」
「分かりました」
すぐさま発進する。
「……仮説だ。怪異の説明が、一部だけ視えるようになった。全て視えたら、何か完成するような、そんな気がした。……試してみる価値はある」
「では、出没する場所と、逃がさない手段があれば?」
「ああ、試してみるべきだ」
車を飛ばす。
終わりにする。
水族館。
深海魚エリア。
氷室は、青白い男――河童の元へ向かう。
「河童」
『何の用だ』
氷室は淡々と告げる。
「オウム返しを封じたい。出没する場所と、拘束する方法を教えて欲しい」
白鳥は腕を組む。
『出没する場所は、分からない。様子を見ていたが、あの外道の行動は読めない』
「……そうか」
『拘束は出来る。逃げ場も無くせる。だが、最後はお前の仕事だ』
「教えてくれ」
『ここから先は、支払いだ』
「ああ」
『一番信頼している者との記憶を貰う』
沈黙。
河童はゆっくりと白鳥を指さした。




